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コーポレートガバナンスの議論に思うこと

2004/05/07 21:31
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梅田さんのBlogでGoogleのIPOに関する熱い議論が起きています。

ここでの一連のやりとりを見ていて、コーポレートガバナンスについて思うところがあるので書いてみます。(念のためですが、梅田さんご自身はコーポレートガバナンスについてというよりもむしろ創業者の傲岸さを指摘されているのであって、以下の文章で扱う議論とは直接の関係はありません)

■コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスの考え方は国家の政治概念としての三権分立(権力を立法・行政・司法に分け、相互に監視・牽制し合うこと)と同じようなもので、権力を独占することによる暴走や惰性がもたらす汚職をシステム的に防ごうと考え出されたものです。従ってガバナンスとは本来的に民主的なシステムの実現を目指すものと言うことができます。

しかし面白いことに、成功している企業のほとんどは独裁的とは言わないまでも、カリスマ経営者によるリーダーシップが牽引していることも確かです。そのリーダーシップを民主的と感じるか独裁的と感じるかは、実は思っているよりも主観的なものです。

仮にトップが崇高な理想のもと善政を布いているとしても、その志が末端まで行き渡っていることは希です。システムの規模が大きくなればなるほど、そのトップと直接的な関わり合いの薄い人たちが増え、心ない風情流布によって独裁者の烙印を押されてしまうこともあります。従って、どこからどこまでが独裁者かという線引きは思ったほど簡単ではありません。

そこで、こうした恣意性を排除するため「法による統治」という考え方に至ります。法律や数字などの客観的な指標に基づく評価が必要だというわけです。

君主制による小さな信義社会から契約社会に移行していく流れと同様に、システムの規模が大きくなってくるとスケーラビリティを確保するためには「仕組み化」が欠かせません。そういう意味では、ひとまず形式的なルールとして株主を頂点とした権力構造を法(日本では商法)として定義した企業統治の「仕組み」には、それ自体がベストかどうかはともかく価値があります。そして、現在のような資本主義社会の大規模な発展がその正しさを(少なくともスケーラビリティの高さという面においては)証明していると見ることができます。

しかし、資本主義システムの反作用として、富める者はより富み、株主を頂点とした権力構造が既得権益化し、次第にパワーゲームの様相を呈してきているのもまた事実です。見方によっては「株主による独裁制」に近づきつつあるということもできます。コーポレートガバナンスが目指すべきものは、ステークホルダー(利害関係者)間での「抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)」とその弾力性のある運用であり、形式主義的に法解釈することで株主に絶対権力を持たせることを意図したものではなかったはずです。

どのステークホルダーに相対的に力を持たせるべきかは、歴史的にどのような痛い目に遭ってきたかによって敏感な部位が異なるため、国や地域ごとにコンセンサスが微妙に異なるのでしょう。

isologue: 企業統治のボケとツッコミ

■企業に込められる魂

個人的な考えでは、企業理念、すなわち株主・経営者・従業員・顧客・社会といった様々なステークホルダーの誰に対してどのような貢献をすべきかという目的がはっきり存在していることが企業にとって何よりも本質的なことで、ガバナンスはそれを長期的かつ継続的に実現するための手段のひとつにすぎないと認識しています。

実のところ「魂」の抜けてしまった組織は小手先で何をどうやっても所詮ダメです。監視・牽制が有効なのはお互いのエネルギーレベルが高い場合に限られますから、やる気をなくして沈みゆく船まで救えるわけではありません。企業における最も重要な資産は、数値化できずバランスシートに現れない、この「魂」だと信じます。

やはり、強いビジョンを持った経営者(創業者であることが多い)が組織にパワーを与え、引っ張っていくというのは成長企業たるには大前提でしょう。そして逆も真なりで、組織にパワーを与えることができるのは経営者しかありません。

ステークホルダーが法に基づき不正や暴走を監査する倫理的な意味でのガバナンス(コンプライアンス)は重要ですが、株主が自分たちの利益を守るために経営に口を出すという意味でのガバナンス(構造的権力の発動)は価値のあることには思えません。これらは区別して論じられるべきだと思っています。

ところで、名著「ビジョナリー・カンパニー」には、Amazonに以下のようなレビューがあります。

企業の使命として株主への利益還元がさけばれて久しい。しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソンのように企業が奉仕する優先順位として1に顧客、2に社員、3に地域社会、最後にようやく株主という基本理念を掲げる企業がアメリカの経営者から尊敬を集めているのも事実だ。(以下略)

なお、この本の原題は「Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies」です。やはり時代を超えて生存する企業は、形式やスキームにとらわれず本質を絶えず追求する姿勢を本能的に身につけているということでしょうか。真のガバナンスというものは、こうしたビジョンが経営者という特定個人に属人化せず、世代を超えて組織の隅々まで行き渡り遺伝子として受け継がれるかどうか、という結果論でしか語れないのかも知れません。

というわけで、私は今の米国のようにエクイティ・ゲームに陥っている経済に対するアンチテーゼを市場に問いかけた、Googleチームの勇気ある決定にはひとまず「よくやった」と拍手賛成する立場です。

しかし一方で、Googleという企業の永続性については創業者たちの賢明な身の引き方に委ねられました。

Is Google built to last?

ビジョナリー・カンパニー / Built to Last
ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies

Articles of Incorporation
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法人登記証明書が届きました。表紙含めて3枚、ホッチキス左肩綴じ、割り印なし。とても質素な印象を受けます。

というわけで、インフォテリアの100%子会社として誕生したInfoteria Corporation USAは、Board of Directorsにインフォテリアの現経営陣が就任します。やっぱり株主には逆らえませんね。^^

♪ SAKURA / Let's Go Dancing

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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