前回の最後に述べた「落とし穴」について。
元々の作戦は、ビザ申請の手続きと並行して実質的な業務は開始するというものだった。というのもビザ取得には2ヶ月位かかるだろうから、それまで待っているのではなく手続きを進めながらVisa Waiver(90日を上限とするビザ免除プログラム。米国に観光や短期出張で行くときにビザなしで入国できるのはこれ)で渡米して実務は進めておき、ビザが下りたら一旦帰国して再度正式に渡米するということ。
3月のエントリで「この春から行く」と言っていたのは、この作戦を織り込んだものだった。これまでにも何度か実績がある方法だったので、今回も使えるだろうと踏んでいた。
ところが。。。
L-1ビザを取得するまでの一般的なプロセスとしては、まず米国法人を設立し、日本法人がスポンサーとなって移民局に請願を行い(地獄の沙汰も金次第、特急料金の$1000を払えば請願の期間は3ヶ月から2週間に短縮される)、その認可を得てから在日米国大使館に個人で申請することになる。
肝心の移民法はといえば、9.11のテロ以来これまで以上に目まぐるしく変わっている。請願を行った当日に法改正が施行されて必要な書類が増え、差し戻しなんてこともよくあるらしい。国家安全保障省なんていう巨大省庁まで1年そこそこで設立してしまう勢いだから、現在のアメリカがとんでもなく神経質になっているのは外から見ていてもよくわかる。今ではビザ申請にあたっては殆ど全員が米国大使館での面接を義務付けられており、事務処理は全体的に遅延しがちとか。
さらに新規に設立されたばかりの実績のない米国法人の場合は通常よりも時間がかかり、4週間から8週間は必要とのこと。加えて、5月〜6月頃からは留学生の面接が増えてきて大使館は忙しくなるのでレスポンスはさらに悪くなってしまうだろう。悪い条件は重なる一方である。
だが、そんな所要期間の不確実さもVisa Waiver作戦で何とかなるだろうという腹だった。多少遅くなろうが、ビザが下りるタイミングに合わせて一時帰国するタイミングを調整すればよいだろうと。(余談だが、Visa Waiverで3ヶ月滞在できるからといって入国審査官には3ヶ月丸々の予定だとは言わない方がいいらしい。そのまま居付くつもりではないかと疑われるからだ。1ヶ月とか2ヶ月とか言っておけば、審査官は判子の日付をわざわざ変えるのが面倒だから3ヶ月後が期日の判子をポーンと押してくれる確率の方が高いらしい。とはいえ運次第なので実際に1ヶ月の日程しか貰えなければ期日までに出国しなくてはならないが、入国審査のタイミングで変に疑われて別室に連れ出されて根掘り葉掘り尋問され、挙句に入国拒否されるよりはいいだろう)
ところが弁護士と相談しているうちに、米国大使館への申請を開始してからはビザが下りるまでパスポートを預託しなければならない、ということがわかってきた。
なんと!これは大きな誤算だ。パスポートがなければVisa Waiverでの渡米はおろか海外に一切出ることができない。しかも、今回のビザ取得プロセスで最も時間がかかるであろう大使館への申請期間にだ。
身分証明書の原本を長期間かつ期日不定な状態でロックするのは人権侵害ではないか?移民審査の事務的な手続きごときに事業計画が大きく左右されるのは理不尽ではないか?と憤りを禁じ得なかったが、弁護士からは「ここだけは移民局と国務省に合わせて我慢してくれ」と言われてしまった。更に「移民審査官と大使館領事の判断は、あくまで法律に基づくものであって常識とは無関係」とまで。相手は自分の生殺与奪を決めてしまう特権を持っているのだ。確かに申請を却下されてしまっては元も子もない。
というわけで、最短でも6月中の渡米ということになってしまいました。忙しい日常の合間を縫って最善を尽くしていますが、まだまだ不確定要素が多いので予断を許しません。
臥薪嘗胆の日々が続きそうです。
在日米国大使館:ビザサービス。どうか滞りなくパスできますように。。。
♪ The Cardigans / Carnival