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RFID(無線タグ)の可能性

2004/01/05 06:43
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あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。

新年の初稿は、今年注目の技術トピックとして「RFID(無線タグ)」を取り上げてみます。この技術の根底にある構想自体は古くからあるものですが、リアルとバーチャルの世界を接続する最も現実的な物理デバイスになっていくだろうと期待しています。

RFIDとは

RFID (Radio Frequency Identification) とは、文字通り物理的なICチップにID(識別子)を埋め込んで無線で読み取り(書き込み)ができるようにする技術のことである。バーコードの代替として「トレーサビリティ」というキーワードで語られたり、磁気カードの代替として電子マネーの入れ物として使われていたり、果ては携帯電話や人体(!)にまで埋め込んで汎用の個人認証インフラとして計画されていたりと、現在この技術の周辺は非常に喧しい。特に、IDの採番とアプリケーションプラットフォームの覇権を巡っての囲い込みと標準化が並行して進行している。

逆に言えば、非接触チップの埋め込みにより個体認証を行うという考え方はRFIDという略称が一般的になるよりはるか以前から軍需産業・カード業界・自動車業界などの高付加価値商材で応用研究されてきていた技術であり、これらのアプリケーションから共通のエッセンスを抽出し、低コスト化を前提としたものが現在RFIDと呼ばれているものであるという点は押さえておきたい。

RFIDのアプリケーション(BtoC編)

RFID技術は、まずSuicaFeliCaのような耐タンパー性と簡易記憶領域を持つやや高機能なICカードを用いて「個人認証」「独自仕様+ローミング」の使い方から始まり、定期券や回数券、チケット、ポイントカード、会員証、社員証などのプラットフォームとしてじわじわと普及しながら囲い込みが進んでいくだろう。最終的には標準化されたインターフェースで相互運用可能になるだろうが、当面はビジネス性の観点からそのようなことは期待できない。特に携帯電話の統合に関してはかなり不確定要素が多く、面白い一年になりそうだ。

なお余談かも知れないが、JavaCardのような「スマートカード」というリッチクライアント構想(カード自体が高度な処理系を持ちプログラマブルで、サードパーティアプリケーションが組み込めるもの)は、基本的には標準化が進まなければ市場として成立しにくいため、当面この構想は水面下に留まることになる。

RFIDのアプリケーション(BtoB編)

一方、流通業界で期待されているようなバーコード代替として読み取り専用・低コスト・使い捨てのICチップをサプライチェーン管理に使おうという試みの場合には、企業間での互換性が必要となるため標準化は必須となる。例えば欧州のEANや米国のUCC、日本では流通システム開発センターが従来から行ってきたように、IDの採番体系および権限の委譲モデル(例えばJANコードでは上位7〜9桁が国+企業(メーカ)コードで、下3〜5桁はその企業が独自に採番する)が普及の鍵となる。ユビキタスIDセンターucodeがコード体系に込められた思想をうまく説明しているので参照してみて欲しい。一方、AutoID center(2003年10月にEAN/UCCのジョイントベンチャーであるEPCglobalに吸収)のコード体系の例は英語のみだがこちら

いずれも普及している既存のコード体系とのマッピングによる整合性にプラスして、より広いコード空間でシリアルナンバーなども扱えるようにすることで、サプライヤにとってもバイヤーにとってもメリットのある新しいトラッキングソリューションとなることが期待されている。業界標準のコード採番を掌握できると膨大な利益が得られることはEAN/UCC/JANなどで実証済みなので、利権を巡る思惑が加速していることは簡単に説明がつくであろう。従って、真の意味での標準化および一本化は容易ではないし、体力勝負が続くことになる。2004年中にも様々な仕掛けが行われるだろうが、雌雄を決するような出来事はまだ起きないだろう。

余談だが、オートIDセンターの村井純教授の看板IPv6、ユビキタスIDセンターの坂村健教授の看板TRON、いずれも「エンジニアが未経験のものを2つ同時に覚えなくてはならない技術は普及しない(二兎追うもの一兎も得ず)」という鉄則を守っていないという点で、そのチャレンジは注目に値する。恐らく、IPv6についてはリーチャビリティと再利用性の観点からBtoBの使い捨てモデルとは折り合いが悪く、スマートカードのようなIPを喋れるBtoCのファット端末がキラーアプリになるだろう。この点ではユビキタス・コミュニケータというモデルを最初から定義したユビキタスIDセンターの構想に一日の長があるが、逆にこのモデルが縛りになると用途が限定されすぎて普及の足枷となる恐れもある。

他にもRFIDを貼り付ける商品によっては物理的に読み取れない場合があるなどの技術的な課題も残されているが、上記のコード体系の標準化に比べれば上層の課題であり、緊急性は相対的に小さくワークアラウンド可能であろう。

まとめ

2004年は個人ベースのカード・携帯型RFIDが牽引役となり、諸々のコストが低下することによって2005年以降の企業ベースのバーコード型RFID普及に弾みがつくだろう。前者がプラットフォーム屋の独り勝ちで周辺市場は当面小さいこと、後者が様々な周辺ソリューションを含む大きな市場であることなど、インターネット黎明期のeコマースのBtoC、BtoBのモデルの立ち上がり曲線にかなり近いものになることが予想される。

この手の新しい基盤技術は必ずハイプ・サイクルを通過するため、単純に「爆発的に普及」ということは決して起きないだろう。しかし、RFIDが今後数年にわたって注目を集める技術であり続けることは間違いない。何度か押し寄せてくるであろう上げ潮にチャンスを見出せるならば、参入を考えてみるのもいい。ただ、BtoC編の分野で起業することを考えているなら急いだ方がいいだろう。

CNET Japan内でRFIDをキーワードに記事検索してみると、現在73件のヒットがある。これらの記事のタイトルをざっと見れば、上記のうちBtoB編の話題が中心になっていることがわかる。狭義のRFIDはこのように主にBtoB編の技術として語られるが、技術的にも市場的にもBtoC編に述べたような分野との相関性が深いため、興味のある人は両方をウォッチしておこう。

♪ Dream Theater / Take The Time

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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