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サーバにイノベーションのジレンマは起きているか(1)

2003/10/21 23:02
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本日より数回にわたって、ちょっと趣向を凝らしてミニ連載のようなストーリー仕立てでエントリをしてみようと思う。表題は、経営学の名著であり筆者のバイブルでもある「イノベーションのジレンマ(原題:The Innovator's Dilemma)」(クレイトン・クリステンセン著)をもじったものである。サーバ技術のイノベーション。これは筆者が最も深く関心のあるテーマであり、このBlogで是非とも語られねばならないテーマだと考えている。

CNET Japanにクリステンセン教授の貴重なインタビューがあるので、リンクを掲載しておこう。

CNET Japan - イノベーションのジレンマに陥る優良企業たち

オープンシステムの劇的な性能向上

PCハードウェアの性能向上の軌跡は、今もムーアの法則を忠実に守っているようだ。CPUの処理能力、主記憶バスのバンド幅、記憶領域のサイズ、外部I/Oインターフェースのアーキテクチャなど、システムのパフォーマンスにクリティカルな影響を及ぼすキーパーツはひたすら性能の向上と低価格化が進み、すでに一般家庭で購入されるパソコンと業務システムで用いる大型コンピュータとの有意な性能差はほとんどなくなってしまった。

それでもなお、WindowsやUNIXに代表されるオープンシステムの上位に位置するサーバ市場、即ちオフコンやメインフレームといった市場は、減少傾向にはあるもののそれは決して劇的とは言い難い。(10月16日のエントリを参照)

折りしも日本IBMから、2003年10月20日付でメインフレームの将来を不安視する自社顧客に向けたコミットメントである「IBMメインフレーム憲章」なるものが発表された。

CNET Japan:日本IBM、メインフレームz990用Linuxプロセッサを30%値下げ

これほどまでにハードウェア単体のコストパフォーマンスが逆転しているのは明らか(感覚的には数百倍はあるだろう)であるのに、ホストやメインフレームがなくならないのはなぜだろうか?真の革命はいつ、何をきっかけにして訪れるのだろうか?

破壊的イノベーションとバリューネットワーク

前出の「イノベーションのジレンマ」によると、「破壊的イノベーションが登場したとき、既得権を得ているプレイヤーはその権益の源泉であるバリューネットワークが逆に足枷になって、新しく育ってくるバリューネットワークに参入するのが致命的なまでに遅れてしまう。これこそがイノベーションのジレンマだ」とある。では、これらのバリューネットワークはどのように違うだろうか?

長い歴史に渡って築き上げられてきた、ホストやメインフレームといったテクノロジーのバリューネットワーク。それは、COBOLやRPGといった(今となっては)化石のような言語に熟練したシニア・エンジニアの雇用、30%を超える高いマージンを期待するベンダーやサプライヤー、そして何よりも、「とりあえず何とか動いているから」という少なくとも短期的に見れば合理的な理由によって燃費の悪さに目をつむり、干からびた中古車のようなアプリケーション資産を捨てることのできない顧客(彼らは過去の投資判断の非を認めることは自らの首を危うくするのだ)。彼らの共通した利害関係により、これらのハイエンド市場は囲い込まれ、守られているのである。(こうしたビジネスの斜陽期に起きていることは多くの示唆に富んでいて面白い。マーケッターの皆さんよく研究しましょう)

ここでは「バリューネットワーク慣性の法則」とでも呼ぶべき、変化を拒む強い心理作用が働いており、構造的な既得権益の保護につながっている。マーケットを支えているのは、マーケットそれ自身なのだ。

一方、オープンシステムではハードベンダー、チャネル、コンサルティングファーム、ゼネコン的システムインテグレータ、下請的システムインテグレータ、ソフトベンダーなどが複雑に絡み合ったバリューネットワークを構成している。激しい競争により参加者それぞれのマージンは低い。

このように比較すると、バリューネットワークを特徴づけるコスト体質は決定的に異なっており、オープンシステムは破壊的なバリューネットワークとなるポテンシャルを十分過ぎるほど持っている。ある瞬間から雪崩を打ってメインフレームの顧客がオープンシステムに落ちてきても不思議はない。しかし、IT業界でここ10年あまり約束されてきたダウンサイジングの成果は、そのような状況にない。だとすれば、実はオープンシステムそれ自体、本質的には破壊的イノベーションではなかったということだろうか?何か見落としているだろうか?

本日より、このテーマを少し追いかけてみたい。お楽しみに。

(続く)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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