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カタギの時代は終わり?

2003/09/18 00:01
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少し前の話だが、Bill JoyがSunを退社すると発表した。

ビル・ジョイもついに米サンを離れる

筆者がヘタレ学生だった90年代中盤当時、Sunは崇拝に値する素晴らしい会社だった。IntelのCISCアーキテクチャを凌駕するであろうと大学の講義でも興奮気味に語られていたRISCアーキテクチャの最先鋒SPARCチップ、パソコンOSとは比較にならない堅牢なUNIXベースOSであるSolaris、そしてプラットフォーム非依存という触れ込みの衝撃的なインターネット世代のプログラミング言語Java、それらSunアーキテクチャを構成するテクノロジーの全てが輝いており、ちょうどWindows95対MacOSのような議論がなされていた真っ只中で、ワークステーション/サーバ市場という孤高のポジションで独特の存在感を放っていた。

テクノロジーに夢を託し、むさぼるようにIT系ニュースを読み漁り、Appleの"The Rest Of Us"理想郷を妄信し、この業界に身を投じようと決意を固めつつあった頃の記憶だ。アンチ・マイクロソフト精神が植えつけられたのも、もちろんこの時代だ。10台以上所有していたコンピュータの全てがMacintoshまたはUNIX系OS(FreeBSD,MkLinux,NetBSDなど)で構成され、大学を卒業するまでついぞMicrosoftに一切のライセンス料を払う機会はなかった。

そのおバカな学生は、ネットワーク・コンピュータというコンセプトを提唱してアンチ・マイクロソフト端末な世界を夢見させてくれた日本オラクルという外資系の会社に卒業と同時に就職してアンチ・マイクロソフト・カルチャー気分を心底堪能していたわけだが、変化は意外に早く訪れた。

数多くの失敗にも関わらずWindowsは圧倒的なスピード感で普及を遂げ、揺るぎないスタンダードの地位を獲得してしまった。そして何よりも、周囲にいた優秀なエンジニアの多くがごく自然体でWindowsを使っていたのだ。これは大きな衝撃だった。反体制ごっこ、阪神ファン的(今ならこんな言い方をしても阪神ファンは笑って許してくれるだろう)な自虐的判官びいき、そういったものにこだわり続けることにふと疑問を感じるようになったのだ。例えば何の疑問も持たずに東大に進学してしまえるようなナチュラリズムが、それまでの自分のスタイルを否定するものでありながら美しいと感じられるようになってきたのだ。

そう、あっという間に「そういう時代じゃないんだよ」ということになったのだ。このような視点を得てからというもの、エンジニア道を極めるという選択よりもマーケティングを志向するようになってきた。まさに硬派から軟派への転向である。

たまたま昨日、山岸編集長のお誘いでnamazuの高林さんとお会いする機会を得たのだが、高林さんのページにはこんな雑文がある。かつての自分と今の自分を象徴するようで、非常に甘酸っぱい笑いを誘うのだ。

UNIXにみる世代間の断絶

余談が過ぎたので話を元に戻すと。

そんなわけで、Sunが果たしていた硬派なテクノロジーイノベーターとしての役割は、もはやCPUやOSやプログラミング言語という低いレイヤーのドメインにおいては(少なくとも劇的な成長フェーズを牽引するという意味では)終えつつあるのだ。これまでにBill JoyはじめITの歴史に残る人物の偉大さが忘れ去られることはない。伝説の人物が伝説の企業を去るという事実はIT業界が踊り場に達したことを暗示しており少し寂しい感傷にとらわれる。しかし、これはまた世代交代のチャンスでもあるのだ。今の若い人たちはこのことに気付いているだろうか。

今のIT業界に山積されている課題の多くはニュートン力学的な方程式で解けるようなテクノロジーの課題ではなく、もっと泥臭いヒューマンな課題になってきている。もっともっと柔らかい頭が必要になってきているのだ。

これからのテクノロジストは、アーティスト的・人間国宝的な一握りの硬派スーパープログラマーと、もっともっと上のアプリケーション・サービスレイヤーで方向性を示せる軟派スーパービジョナリストの2極双璧で構成されることになることは疑いようがない。

そう、軟派ビジネスは日本人の本領だ。技術シーズは欧米で生まれ、欧米で育つ。いつも黎明期の日本市場は寒く鈍い。しかしそれがクリティカルマスを超えるあたりから日本の成長カーブが米国のそれを超え、あっという間に追い抜いていく。こういった構図はカラーテレビ普及率変遷などの歴史を引用するまでもなく多くの市場で起きた現象だ。大手商社というビジネスモデルが唯一成立した日本という国にこそ、ヒューマンでハイタッチな軟派ビジネスのチャンスがたくさん転がっているのだ。アマゾンやヤフーのような収益逓増指向ではない、真のハイタッチ、真の泥臭さを満足するビジネスへのシフトが、IT産業でもカラーテレビと同じように欧米との逆転現象を起こすきっかけになるのではないか、と思えてならない。

憂国志士のみなさん一緒に頑張りましょう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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