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ソーシャルメディア時代の公職選挙法 - TwitterやFacebookに書きこんだら「文書図画の頒布」になるのか。

2012/12/04 00:30
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プロフィール

殿岡良美

幻の博覧会「世界都市博覧会」で、インターネットを応用した公共イベント企画をプロデュースしたことが、ネットでの活動の出発点でした。しかし結果はご存知の通り。あるいはその未完の記憶が満ち足りない思いを私に残してしまったのか、ネットという愛すべきも、摩訶不思議で捉えようのないものに惹かれ続けてきました。リアルとネットが激しい火花を上げている今日。CNETでは、あらゆる前提や先入観にとらわれない視点から、BigBang的なIT論を展開したいと考えています。
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今日12月4日はいよいよ衆院総選挙の公示日。16日の投開票に向け12日間の選挙戦が始まる

総選挙になるたびに問題になるのがネットにおける選挙活動の問題である。既にこの問題は何度も論じられてきたが、おさらいを兼ねて、ちょっと基本的な整理をしてみようと思う。

誤解をしておられる方もあるようだが日本においては「ネットにおける選挙活動を禁止する」という明文化された法律はどこにも存在しない。ではなぜ候補者によるホームページやブログ等の、公示期間中の更新や電子メールが「違反である」とされているのか。
公職選挙法が候補者のみならずその応援をする者に対して、ネットにおける選挙運動を禁じていると総務省が「主張」している論拠の核をなすのはは以下の法令である。

(文書図画の頒布)

第百四十二条  衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書並びに第一号から第三号まで及び第五号から第七号までに規定するビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。

(文書図画の掲示)

第百四十三条  選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては、第一号、第二号、第四号及び第五号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党等が使用するもの)のほかは、掲示することができない。

(文書図画の頒布又は掲示につき禁止を免れる行為の制限)

第百四十六条  何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。

総務省は「ホームページの更新」を「文書図画の頒布」にあたるとして候補者等にサイトの更新などを自粛することを呼びかけている。不思議なことに更新さえしなければ、公示期間前に設置したホームページなどは「文書図画の頒布」とはみなされない。これもおかしなことだが、そもそも電磁的な画面に表示されるホームページを更新する行為は、文書図画の配布にあたるのか。総務省に、この点を問い合わせると論拠として必ず持ち出すのが平成17年12月22日東京高裁において出た判決である。

平成二十二年三月二十九日に当時馳浩議員が「インターネットを利用した選挙活動に関する質問主意書」を提出している。その趣旨は以下にある。

「公職選挙法第142条及び第146条は憲法第21条第1項に違反するのではないか、政府の見解を問う。」とした馳議員の質問書に対して総務省は

公職選挙法第142条に規定する「頒布」とは、「文書図画を不特定又は多数の者に配布する目的でその内の一人以上の者に配付すること」 (昭和51年3月11日最高裁判所第一小法廷決定)をいうものと解されているところ、従来より、不特定又は多数の者の利用を期待してホームページの開設又は書換えをすることは「頒布」に当たると解しているところである。

と総務省判断で「開設または書き換え」を「頒布」にあたると「解釈」した上で平成17年12月22日東京高裁の判決を提示している。それによると

「ホームページを開設することは、インターネットを通じて不特定多数の者がホームページにアクセスすることを期待し、不特定多数の者に対してホームページの画像を到達させることを目的とするものであるから、現実にインターネットを通じて画像が送信されれば、これが、上記「頒布」に該当することは明らかである」(最高裁では控訴棄却)

これが、裁判所がホームページを「頒布」にあたると認定した唯一の判例であると思われるが、この解釈の前時代性はともかく、それでも「開設」や「更新」=頒布であるという総務省の解釈は無理がある。おそらく既設のサイトをすべて閉じろというような話は非現実的であるし、馳議員の言うように日本国憲法第21条第1項の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」に違反している可能性があることを意識したものと思われる。

何よりも問題なのは、明らかにインターネット登場以前につくられたこれらの法律が、ネットの存在を前提にしていないために明文化されていない一方で、かえって有権者に負担がかかると思われる電話による勧誘や戸別訪問は問題ないとされていることである。

したがって「違法」ではなく「法規に記載がない」あるいは「法規が前提としていない」ために曖昧な状態になっていることが問題なのであって、一刻も早く「ネット選挙」の実現のための法整備をという論議は選挙のたびに起っているが、選挙が終わると消える。

野党時代の民主党や、自民党の一部議員はこれらネット総選挙の熱心な推進論を唱えていたが、民主党が与党になったとたんにほとんど言わなくなった。目立った立法のための行為も聞かない。特に自民党は大量の「浮動層」が投票に来るようになるきっかけになると思われたネット選挙が自党に不利になると考えてきたので従来は熱心ではなかった。(安倍総裁の発言など最近の状況をみていると状況に変化があると思うが)

選挙期間中は候補者は摘発を恐れておとなしくネットでだんまりを決め込み、当選したとたんにきれいさっぱり選挙活動の形態を論じることに興味をなくす。その図式が何度も繰り返されてきた。(ちなみに実際にはネットにおける選挙活動が摘発され罰則を受けた例は一例もない。主として選管と無用なトラブルを起こしたくない候補者の自主規制の面もある)

さらに現在。ホームページやブログの時代からさらに進みTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが全盛の時代である。新たな問題が発生して状況をさらに複雑化している。これらの上でなされたつぶやきや書き込みも「文書図画の頒布」といえるのか。「Twitterでつぶやいたら更新」の概念を持ち込むのは無理がないか。Facebook等では「不特定多数」ではなく、対象を会員や友人など狭い範囲に限定した書き込みも可能になっている。

何よりも一定の完成された文書や画像を表示するホームページやブログと違って、参加者相互の意思の交換を主として成り立つソーシャルメディアは、情報の発信形式が根本から異なっている。古い時代に制定された「文書図画」の概念を拡大解釈するには限界があるし、それはもうとうに形骸化している。

つまりネットにおける選挙活動をめぐる問題は、ホームページやブログの更新を議論した時代から、さらにもう一段階新しいところにさしかかっているといえる。こうしたことから、おそらく今回の総選挙では、ホームページやブログはともかく明確な判例がないTwitterやFacebookでは事実上解禁状態になると私は思っている。事実、組織的な運動員による大量の宣伝行為でなければ、個々の有権者がTwitterで自分の支持する候補者を表明したり、候補者がスケジュールや感想をツイートすることは事実上、問題がないという解釈が主流となっている。総務省も国もこれに対して明確に違法性をいうことは到底不可能だからである。

何よりもまず、私たち有権者も政治家も、選挙前になるとネット解禁を騒ぎ、終わるときれいさっぱり忘れるといった「怠慢」をやめなければならない。生活におけるネットの重さと領域は前回の総選挙のときに比べても比較にならないほど格段にあがっていることは誰もが認めるところだろうと思う。またネットはコストも安く、誰もが行使できる発信手段である。有権者の接触もモバイルの普及などできわめて容易になっている。その広大な領域で確かな位置を占めるようになったソーシャルメディアをも「文書図画の頒布」として言いくるめ、憲法に抵触する疑いがある制限行為を続けることは誰が考えても無理がある状態にさしかかっている。

【参考】
音声は当然に「図画」ではないのでネットにおいては事実上フリーであると考えられるが2007年の都知事選で特定候補者の政権放送が無制限に投稿されたので東京都の選管が削除依頼をするといった事態があった。拙ブログの記事をリンクしておく。

都知事選で選管が映像削除要求---ではYouTubeに公平に投稿したらどうなる-BigBang


以下はあくまでもネットを含めた選挙運動に関する私的な見解が示されているサイト
やっていい選挙活動、こんなにあります



※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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