「三菱商事、三井物産などの大手商社、 三菱UFJ銀行、三井住友銀行などのメガバンクが本社を東京から大阪に移転する」というデマ情報がネットに飛び交っている。
ことの始まりは、2月24日の都知事会見東京都知事の記者会見の席上で、あるフリーの記者が石原都知事に対して次のような質問をしたことから。
「知事は施政方針演説で都税収入が5年連続で減少していると言った。昨日、三菱商事、三井物産、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、パナソニックなどが大阪へ本社を移転すると発表した。税収がかなり下がると思うが、その点について知事の見解を。」
それに対して石原都知事は
「本社がたくさん東京にあったほうが良いが、集中集積が進み過ぎるのも好ましくない。大阪が「大大阪」として復活しようとしてるときに優良企業が大阪に本社を移すのは、大阪にとって好ましいこと。相対的に日本にとっては、そう悪いことではないかな。」
と答え、あたかもこのやりとりの中で、これら企業の「大阪への移転」が石原都知事にも既知の事実であるかのように受け取られた。しかもこのやりとりが動画にも残っていたことから、一気に「主要企業の東京脱出説」として火が付いた。
今回のデマのもっともらしいところは、
●ネット上だけではなく、リアルの「東京都知事記者会見」という公的な場所で記者によって質問がされている。
●しかもその動画が残っている。
●東日本に地震や放射能不安が広くあり、「主要企業の東京脱出」という話にこれら不安層が飛びついた。
●橋下大阪市長の「大阪都構想」=大阪の発展復権 が社会的な注目を浴びている。
などが原因と思われる。
しかしながら、この「フリー記者」がどこからニュースソースを入手したのか。いくら調べても2ちゃんねるの書き込み1本しか出てこない。
名無しさん@12周年 : 2012/02/23(木) 23:42:53.23 ID:ikTrNG3+0 [6/6回発言]
【日経】大手商社、メガバンクが本社機能を東京から大阪に移転へ
日本経済新聞の取材によると、三菱商事、三井物産などの大手商社、 三菱UFJ銀行、三井住友銀行などのメガバンクが
2013年度から順次、東京の本社機能を大阪に移すことが 明らかになった。
東京には、先日発表された文部科学省試算による震度7の東京湾北部地震のおそれ、 各地に高濃度の放射能汚染地域があり、 将来のリスクが大きいとして、本社機能の移転を決断した。
日本を代表する企業の本社機能移転は、他の大企業にも大きな影響を与えるものと思われ、 東京に本社を置く電機・鉄鋼などの大手メーカーの中にも、 既に東京からの本社機能移転を検討していることが取材で明らかになっている。
今回の動きで、一気に大企業の本社機能移転が進む可能性がある。
頭に【日経】とつけているが、もちろん日経の記事にこのニュースが取り上げられたことはない。「取材によると。。。明らかになった」という曖昧な表現で濁しているが、何の根拠もない書き込みである。よもやと思われるが、フリー記者はこの書き込みをそのまま真に受けて、翌朝の記者会見で石原都知事にぶつけた疑いがある。
石原都知事は、よく事態が飲み込めないまま、事実であると誤解し、先の答弁になったのではないか。
名前を挙げられたパナソニックに至っては、もともと大阪府門真市に本社を置く企業であり、東京にあるのは「東京本社」でしかない。ところが悪いことにこの東京本社に関しては移転話があり、下記のリンクも何度もツイートされた。
よく読めば、これは東京都内で「東京本社」を移転するだけの話であり、元々大阪にある本社とは関係のない話である。パナソニック=旧松下電器産業は元々大阪を拠点とする企業であることは周知の通り。
考えてみれば何のソースも明らかにならない大企業の移転話がいきなり都知事会見で飛び出し、一切他の報道が続かないこと自体を見れば、容易にデマとわかりそうなものであるが、週末を挟んで今日、月曜日になっても未だにツイッターではこのデマが真実と受け止められて拡散が続いている。
ツイッターでデマが拡散されることは珍しいことでもないが、今回のように長時間にわたって多くの人がそれを真実であると信じ続けるのは最近では珍しいことである。上記のような偶然的な「不運」はあるにせよ、やはり地震や原発への社会的な不安が広範囲に存在していることが背景として欠かせないだろう。
そして、我々が何度言われてもいかに「デマ」に踊らされやすいか。そしてわずかでも「信用するに足る」根拠があればいっそう信じ込んでしまうことの典型的な一例であると言えるだろう。
それにしても、無責任で人騒がせな話である。石原都知事に質問をした件の記者のコメントが一言欲しいところである。
【参考】経過については以下のまとめが詳しい
【日経】大手商社、メガバンクが本社機能を東京から大阪に移転へ←デマです