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「おくりびと」とセカンドライフ

2009/02/25 16:40
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プロフィール

殿岡良美

幻の博覧会「世界都市博覧会」で、インターネットを応用した公共イベント企画をプロデュースしたことが、ネットでの活動の出発点でした。しかし結果はご存知の通り。あるいはその未完の記憶が満ち足りない思いを私に残してしまったのか、ネットという愛すべきも、摩訶不思議で捉えようのないものに惹かれ続けてきました。リアルとネットが激しい火花を上げている今日。CNETでは、あらゆる前提や先入観にとらわれない視点から、BigBang的なIT論を展開したいと考えています。
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第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎監督の「おくりびと」だが、そのチーフ助監督を務められたアバター名sela boaさんこと、 長濱英高さんが、セカンドライフ内でも熱心にマシネマ「ぼくのおとうさん」などを制作しておられる有名な方だったことから、ノミネートされた段階からセカンドライフ内では注目をあびていたのだが、ついに受賞ということで、大きな話題となっている。

長濱さんは、そのブログ「監督風味♪── オチコボレ映画監督の再生(?)記 ──」で、映画『おくりびと』脚本第2稿を読んだ感想を求められたときのことを記されている。

「そうですね?、地味ですね?。だけど、こういう地味なのって嫌いじゃないですよ」
そう答えたと思う。
その時点では不完全さが目立ったけど、
生と死を真っ向からとらえた作品は、なんだかほんわかと暖かく好感が持てた。

また、チーフ助監督を引き受けられた当時のことを、「あの頃、・・・・ボクは、日々無常にも過ぎ去り行く現実に膿んでいた。」と表現されている。
長濱さんは、1997年に、武田鉄矢さんが監督を務めた「プロゴルファー織部金次郎」という映画の併映作品である「もうDEBUなんて言わせない!」を監督され、ヒットとなった。その翌年にVシネマ作品である「かっ鳶五郎」を撮られたが、ご本人いわく、「ボクの途方に暮れ続ける人生」が始まったと述懐されている。30歳で映画監督を名乗ったが、そのあと「どのような作品を撮ればいいのかが見えなくなった」のだそうだ。お仕事的にも順調とは言えない日々が続いたらしいことが察せられる。

そんな長濱さんだが、セカンドライフの中ではsela boaさんとして、才能を発揮しており、セカンドライフの中で構築した建築物【ピーチマニアゲリラックス】は、日経アーキテクチュア主催の建築コンペで、特別賞(インワールド賞)を受賞している

【デジタルデザインコンペ】幅広い層がイマジネーションを競う仮想建築――受賞作・結果発表〈前編〉
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20080312/1008012/

ご本人の思いとは別に、リアルと同じように、SLの中でも見事に才能が開花されたといえるだろう。

そして、今回の受賞の喜び。ブログから引用させていただく。

寒い山形の夜、ホテル万光園で、朝方になるまでシナリオのことを
あーでもないこうでもないと打ち合せしていたことを思い出す。
あの時は、まさかこんなことになるなんて夢にも思っていなかった。
誰もが純粋にこのお話を『いいもの』にしたい。
そう思っていただけだった。
ありきたりの表現になってしまうけど、
その結果が、こんな夢のような出来事になるなんて!!!
ホントに映画の神さまのいたずらとしか思えない。
だけどこれはまぎれもない現実。
なんか色々書いてるけど、ホントにホントに言葉にならない。
言いたいことの数パーセントも書けない!
滝田さん、ありがとう!!
ホントにホントにありがとう!!!

今さら言うまでもないことなのだが、セカンドライフの中には、優れた才能を持っておられる方が、それこそごまんといるのは、日々実感するところである。そうした方々の中には、もちろんこれから世に出て行こうという若い人たちも沢山いるが、すでにリアルの世界でも見事に実績を残されている方が、セカンドライフに来て自分の新たな側面から創造的な活動を行い、それがまた別の形で開花する。そういう例も沢山ある。そしてそれがまたリアルの活動にフィードバックされる場合もある。

いまはアバターで、ひょこひょこ歩いている(笑)隣のひよこさんだか、パンダさんだとかが、実は大変に著名なアーティストであったり、世界屈指の巨大企業で工業デザインを行われている有名人だったりすることは、そう珍しくはない。実世界での経験や実績は表面上は隠されているが、おつきあいをするほどに実力の高さや人間性がじわりと感じられるようになる。昨年末より早稲田大学も、セカンドライフ内でプリンストン大学と共同研究を始めたが、きっかけはプリンストン大学の先生がアバターとなって、ふらりと仮想キャンパスを訪れたのがきっかけだったという。

チーフ助監督としての参加とは言え長濱さんは、「おくりびと」に表現者として関わっておられ、日米双方のアカデミー賞受賞作品に参画するという、余人が到達できない世界に到達され、とりも直さず、リアルの世界で紛れもない栄光をつかまれた。

その上だ。何も驚く話でもないのだろうが、これほどメジャーなタイトルを戴く栄誉を経験しながら、長濱さんは、今後もセカンドライフでの制作活動も、やめる気配など微塵もないようだ。それどころかますます意欲を持たれているようにお見受けする。私は長濱さんとは面識もないのだが、そのことが普通に受け止められている長濱さんの周囲の世界にも感銘を受けている。

仮想世界の活動と、実世界での栄誉。両者の間に何か因果関係を見るのは誤りであろうし、それは当り前のことといえば当たり前のことだ。だが、そんな当り前のことにいまさら気がつかせてもらった気がするのだ。

このサクセスストーリーには実に味があるのだ。

どうだ。世界も捨てたものではない。

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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