米国のビルマ民主化支援団体、米国ビルマキャンペーン(USCB)が5月1日から、ビルマ問題に関する新しいキャンペーンを開始した。これは、
「ハリウッド・スターとビルマの30日 ハリウッドの人気俳優が日替わりでビルマを語る!」
というタイトルで、30日間に渡って毎日、ハリウッドの人気俳優がビルマについての映像メッセージを発表するというものだ。ビルマ情報ネットワークでは、この映像を、日本語訳をつけて紹介しており、今日現在で8本(8日目まで)が掲載されている。
・1日目:ウィル・フェレルから皆さんへ
・2日目:ジェニファー・アニストンvsウディ・ハレルソン
・3日目:住めば都? ねずみがいても大丈夫〜ジェイソン・ビッグス&ジェニー・モーレン
・4日目:サラ、白衣の天使になる?〜サラ・シルバーマン
・5日目:テキサスの非現実、ビルマの現実〜ジュリー・ベンツ
・6日目:若者・思い・喪失〜エディ・イザード
・7日目: このゲームは一体〜エリック・ズマンダ&ジョルジャ・フォックス
・8日目: 声
作品を見るとすぐに気がつくのは、さすがにハリウッドでありこの問題を正面からとらえるものだけではなく、問題の暗さが深刻であるにも関わらず、私たちに苦い笑いを誘うものまで、実に様々な表現方法がとられていて、ビルマの直面している様々な問題が実感できるようになっていることがわかる。正面からの政治的なスローガンは苦手であるという方も、ぜひ一度ご覧になっていただきたいと思う。
この中からいくつか紹介しよう。
●2日目:ビルマが自由になるまでは!?〜ジェニファー・アニストン&ウディ・ハレルソン
ジェニファー・アニストンは、1994年から2004年まで全米で放送されたテレビドラマ「フレンズ」で一躍有名になり、その後は映画を中心に活躍中。日本では、2005年にブラッド・ピットと離婚したことで話題になった人である。
トレーラー(ロケ現場での控え室)からなかなか出てこない俳優を説得するため、ジェニファーはあることを約束します。そのあることとは?
(トレーラーから男性(俳優)が出てくるのを待つ女性スタッフ。)
女性スタッフ「マンディどうぞ。そう、もう3回もノックしたけど、出てこないのよ。水もかけられたし、ヘンプシード(麻の種)らしいものも投げられたし……いいわ、わかった、もう一回やってみる」
(トレーラーのドアをノック。中から大きな物音と犬のほえる声)
ジェニファー・アニストン「ちょっと、もう一体どうなってるのよ。私もう2時間も待ってるのよ。お金がかかりすぎてるわ。彼は一体なにがほしいの? 豆乳マテラテ(豆乳でマテ茶を割ったもののこと)? 何?」
女性スタッフ「カフェインの問題じゃなくて……」ジェニファー「そう、じゃあ何か化学物質のせいで呼吸ができないとでも?」
女性スタッフ「エアコンは止めた……」
ジェニファー「そう、エアコンは止めたと。じゃあ何が問題なのよ?」トレーラーの男性「ビルマが自由になるまでは出ていかないぞ!」
ジェニファー「ええ? ビルマ? それだけ? そんな簡単なことだったなんて! だったら大丈夫。もうできたも同然! じゃあ私が、その……ビルマ? を何とかしておくから、その間に……あと5分くらいで……
(男性、首を振ってドアを閉める)
ジェニファー「了解。じゃあ、あなた今の聞いたわね、だから言われたとおりにして、ビルマを自由にしてきてよ。お金はいくらかかってもいいから。いいわね?」
残された女性スタッフ「ビルマってどこにあるのよ?」
(日本語訳:ビルマ情報ネットワーク 秋元由紀 )
この作品がユニークなのは、ジェニファー・アニストン自身が、決して正当なビルマ論を唱えるのではなく、役柄とは言え、むしろ全くこの問題がわかっていない、実にトンチンカンな女優として自ら出演していることである。彼女自身が道化を演じることで、逆に見る側に自分自身の無知だとか、意識の足りなさを思い起こすような構成になっている。言うはた易いが、実際には誰もがこの問題に関しては正義を訴えたいはずなのに、自身が道化を演じるとは、なかなかできないことではないだろうか。ある意味でのハリウッドの「懐の深さ」が感じられる作品だと思う。
他にも2例ばかり紹介しておこう。
●7日目: このゲームは一体〜エリック・ズマンダ&ジョルジャ・フォックス
,br>人気テレビドラマ「CSI:科学捜査班」の主演2人、エリック・ズマンダとジョルジャ・フォックスが、あるゲームをするというもの。ゲームは次第にジョルジャの表情を凍らせていく。
エリック: 新しいゲームやってみる?
ジョルジャ: いいわよ。
エリック: 「強制労働」っていうゲーム。僕はビルマ軍の兵士役。
エリック: 君は、ビルマの市民ね。
エリック: まず、僕は君の奥さんを殴ってレイプする。
エリック: 次に、君の子どもを殺す。
エリック: そして、君の村を焼き払う。
エリック: それから君は僕の荷物や弾薬を持って何日も歩き、君の足は傷つき血だらけになる。食べ物ももらえない。そして歩くときは君が先に行くんだ。つまり地雷があったら、まず君が踏むことになるわけ。
エリック: 具合が悪くなって歩くのが遅れたら、殴ってやる。
エリック: 逃げようとしたら殺す。
J: どうして私がビルマの市民役じゃなきゃいけないの?
エリック: 不法な軍事政権が指導力を握ってからは、君に選ぶ余地はないんだ。
ジョルジャ: 私、このゲーム嫌い。
エリック: 好きな人なんていないよ。(日本語訳 大垣俊朗 秋元由紀 )
●8日目: 声
他のものとは異なり、映像でビルマ軍政下の自由のない「耳を奪われた」生活を告発するもの。言葉よりもむしろ映像の力で見せているところが特徴的。顔を覆われたカットの連続がかなり刺激的。
人はみな、耳を傾けてほしいと思う声を持っています。ビルマ軍政は国民を押し黙らせています。
私たちが声を合わせれば、軍政の抑圧を止めることができます。
100万人の運動に参加しましょう!
今後も、シルベスター・スタローン、アンジェリカ・ハストン、シェリル・クロウなどが参加する予定だという。