早稲田大学では、かつてよりセカンドライフをはじめとするバーチャルワールドに関する大学としての指針を策定すべく、検討を重ねていたが、昨年末に同大学のメディアネットワークセンター(MNC)を中心に以下の基本方針を決定して、同学のサイトで「早稲田大学バーチャルワールドに関する運用暫定ガイドライン」制定およびMNC研究部会「早稲田大学バーチャルワールド研究部会」設置についてを発表した。この研究部会には私も参加させていただくことになったので、ここに一報させていただくとともに、今年は企業と大学を結ぶ、3次元世界の実際的な技術やアイデアの運用に助力していきたいと思っている。
研究部会設置の目的としては
・バーチャルワールドにおける教育実施の諸課題のリスク検討など
・バーチャルワールドにおける諸課題について、学内ルールの検討 および実践的な利用方法の検討など
また、主な研究テーマとしては、
(1)早稲田大学におけるセカンドライフ利用に関する運用ガイドラインの研究
(1.1)早稲田大学の建造物および知的財産構築に伴う諸課題の検討
(1.2)バーチャルワールドの教育への利用に関する諸課題の検討
(1.3)バーチャルワールドの研究への利用に関する諸課題の検討
(2)バーチャルワールドの教育目的の利用に関する技術的研究
(3)バーチャルワールドの生涯学習・校友サービスへの利用に関する研究
(4)バーチャルワールドの研究目的の利用に関する技術的研究
を掲げている。詳しいガイドラインはこちら。
実際のところは、昨年の秋ごろより、創立125周年という節目に当たったこともあり、学内外でセカンドライフを利用して、様々な研究開発を行おうとする研究者や、研究室、学生の動きが平行して進行し、その流れを大学として窓口を1本化することが必要になったための、急遽緊急対応的な措置という意味合いもあったのである。実際に私のところでも夏頃より個別プロジェクトを先行させていたので、大学全体の動きの中でのポジションを明確にする必要があった。そういう意味で大学側の動きを歓迎している。
ガイドラインでは、セカンドライフなどの3次元空間での大学名や大学関連諸機関の名称(「早稲田大学」などの文字の表記他)を使う場合の、諸規定も細かく言及されていて、少々窮屈な印象も与えるが、実際に大隈講堂など大学の資産をイメージした建造物が複数先行して構築される動きがあり、また一部の企業と研究室レベルでの共同研究も先行してスタートしつつあったので、急遽大学としての姿勢を明文化する必要があった。私のプロジェクトも、それに合同してガイドラインにのっとって進行することになった。
早稲田大学としてのSIM開発の具体的な大筋はこれから研究会で練られることになるが、単なる規律ガイドラインの策定にのみ終わらないように、個々の研究プロジェクトを今後充実させていくことが必要になってくると思う。企業との共同研究もこれから顕在化してくるだろう。また学部生にもセカンドライフに関して意欲的な試みをしている人たちが多くいるようなので、自分としてはそうした学生たちとも連携をとっていきたい。
最近の話がどうしてもセカンドライフと電通関連に集中する傾向があるが、今後はセカンドライフをも1つのバーチャルワールドとしてとらえ、その他の世界も含めた幅広い視野での発想が求められることになるだろうと思うが、その中でもセカンドライフの先行性はまだまだ圧倒的であると思う。ともすると大学が絡むと遠隔教育や単位取得などの、教育フェーズに限定された応用が発想されるのだけれど、それらの分野にとどまらない発想を持たないと、今年は先進性を保てないようになるだろう。具体的には決済や広告、そしてコミュニティポータルや、インワールド通信、HUDを応用した情報配信などが上げられる。
セカンドライフのブーム性が、落ち着きを取り戻し始めている今年こそが、そうした実のある地に足の着いた開発が、企業にもそして大学にも求められる段階になってきたと考えている。