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ノット・IBM、ノット・オラクル-----MicrosoftのYahoo買収ニュースが伝えたもの

2007/05/06 01:16
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殿岡良美

幻の博覧会「世界都市博覧会」で、インターネットを応用した公共イベント企画をプロデュースしたことが、ネットでの活動の出発点でした。しかし結果はご存知の通り。あるいはその未完の記憶が満ち足りない思いを私に残してしまったのか、ネットという愛すべきも、摩訶不思議で捉えようのないものに惹かれ続けてきました。リアルとネットが激しい火花を上げている今日。CNETでは、あらゆる前提や先入観にとらわれない視点から、BigBang的なIT論を展開したいと考えています。
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New York Postが報じた、MicrosoftがYahooと買収交渉に入っているというニュースは、昨夜のワールドサテライトで報じられたほか、一般紙にも報道され。今日にかけて各所で大きな話題になったが、早くも今朝には、この交渉が「事実上進展がないまま終了した」ことをワシントンポストが伝え、騒動は一気に鎮静化に向かっている。だが、それでもなお、このニュースが示唆した水面下の情勢には、興味深いものがあるので、諸所の情報をまとめつつ、触れてみたいと思う。

●MicrosoftがYahooの買収に乗り出しか--米紙報道(CNET Japan)

MicrosoftがYahooの買収に食指を動かしていると、米New York Post紙が報じている。同紙によれば両社はここ数年の間非公式な形で話し合いを続けており、MicrosoftがYahooに対して数カ月前に買収を申し出たとのこと。ただし、この件に関してYahoo!の態度はそっけないものだったという。
 New York Postでは金融関係者の試算として、Yahooの買収額はおよそ500億ドル程度ではないかと伝えている。また、関係者の話として、Microsoftが金融機関のGoldman Sachsと手を組もうとしているとも紹介している。

まず株価だが、このニュースが報じられると、Microsoft、、Yahoo、Googleの株価は対照的な動きを示した。

Microsoft(5days)
http://finance.Yahoo!.com/q/bc?s=MSFT&t=5d

Yahoo!(同上)
http://finance.Yahoo!.com/q/bc?s=YHOO&t=5d

Google(同上)
http://finance.Yahoo!.com/q/bc?s=GOOG&t=5d

Googleは一時下げたものの、その後は持ち直している。Microsoftは、500億ドルと伝えられた買収金額の巨大さと、合併によるシナジー効果とのバランスに対して市場の評価はネガティブであると見え、大きく下げた後低迷。Yahooは、大きく上げたあと、現在では値を戻しつつある状況である。いずれも、ワシントンポストが交渉の終了を報じたところで、株価は急速に沈静化に向かっている模様。(5/5時点)

買収劇では、だいぶ前からMicrosoftがYahooに対して買収の提案を行っていたが、Yahoo側から拒絶されていたという事実が伝えられている。それが再燃した背景には、Googleによる、DoubleClick社の大型買収、そしてMicrosoftのキラー製品であるMicrosoft Officeに直接脅威を与えると思われる、GoogleのSpreadsheetsなどの存在があり、Microsoftの危機感の切迫が交渉再開の背景にあるようだ。

だが、両社合併によるシナジー効果には、概ね疑問の声が強い。仮にMicrosoftとYahooの合併がなったとしても、検索広告マーケットでのシェアは、米国市場でこそ40%ほどになるが、全世界では、高々27%になるにしか過ぎない。65%といわれるGoogleには、遠く届かない。「全てを手に入れることのできない買い物」に対して、高々「いまよりはましな」状態を作り出すために投下される資金としては、500億ドルは、余りにも過剰だと思われても無理がないところである。

まして、企業合併は途中で報道された場合、頓挫する可能性が高い。報道自体がその瞬間から両者の株式評価に影響を与えてしまうからである。絶対極秘の環境で交渉を進め、ことが確定したところで電撃的に発表をしないと、両者の交渉基準に影響を与えてしまい困難な局面になる。
しかもこれほどの大型案件である。今回も、New York Post紙にスクープされた段階で、いわば両者の交渉は中断せざるを得ないことを運命づけられたともいえるだろう。かといって、これでこの交渉が永遠に中断してしまうということもまた断言できないのであり、折にふれて「きな臭い」接触は今後も続くと見たほうがいいだろう。

それはともかく、今回の出来事は、Microsoftが、Googleの攻勢に本気で脅威を感じていること、そして「あせって」いるのではないかという見方を、世間に対して強く印象づけることになった。それに対してYahooに関しては、日本市場での健闘は別として、それほど今は悪い状態ではないという見方がある。最近のYahooには勢いがあるというのだ。オンライン広告のRight Mediaの株式80%を6億8000万ドルで買い取ったのは、4月30日のことだし、12社の新聞社による264紙をはじめ、Web広告配信に関する新規パートナーとの契約を結んでいる。Panamaによるプロジェクトも、まさにスタートするところだ。

●[WSJ] MSとYahoo!!の合併交渉は中断か

 もしも合併交渉が復活したとしても、MicrosoftとYahooが交渉を成立させるかどうかは1年前の結果と同じく、疑問だ。 Microsoftは常に大規模な買収を避けてきた。Yahooは1万1700人の従業員を抱え、今週初めの時価総額は380億ドルだった。合併交渉の報道後、Yahooのニューヨーク証券取引所での株価は32.53ドルまで上がり、同社の4日時点での時価総額は430億ドルにつり上がった。

 丸ごと合併ということでなければ、Microsoftは自社のオンライングループを、独立運営されるYahooに引き取らせ、その代わりにYahoo株を手に入れるという方法もある。それでも事情筋によれば、MSはYahooの買収を望んでいるという。

この他、合併の障害としてはYahooの創業者であるジェフリーチャンが、Microsoftに対して根深いアレルギーを持っていることも原因に挙げられている。また、両社の合併がなされた場合、「従業員の30-50%が解雇されるだろう」とか、「シリコンバレーの古いMicrosoftが嫌いな文化で浸されたYahooの従業員の中に頭脳流出の大きい脅威がある」とも

Microsoft-Yahoo better as partners, not one Eric Auchard and Daisuke Wakabayashi - Analysis, Reuters(canada.com)

昨夜から今日まで動きが慌ただしく、前述したように早急な判断はできないし、今回の顛末が最終的なMicrosoftの「Yahoo買収失敗」として判断されるのはまだ早いだろう。しかし、Microsoftがかつての「誰からも恐れられる会社」ではなくなりつつあることを、象徴的に示した出来事であることだけは間違いない。

元来Microsoftには、自社で開発した技術はほとんどないのは周知のとおり。MS-DOSはDR-DOSから。WindowsのインターフェースはMacintoshから。ブラウザは先行するNetscapeから。節目節目で他企業の技術を買収するか、あるいは「取り入れる」ことで発展をしてきた。そういう意味では、検索マーケットで遠くGoogleの後塵を拝しているMicrosoftがYahooに触手を伸ばすのは、これまでの手法からして当然の展開とも言えるが、今までに見られなかった状況の変化がある。それは、たとえ買収を成功させても、その世界でのシェアでトップになることはできないということである。その状況は今までMicrosoftがこなしてきた数々の「試練」とは質が異なる。そういう意味ではかつてのAppleもNetscapeも「甘い相手」だった。しかし、Googleは違う。

既にGoogleの動かすことのできる資金は、Microsoftとほとんど大差ないと言われており(ただしゲイツの個人資産を除けば、であるが。)その状況下で500億ドルもの資金を投じて検索広告の市場で正面衝突を挑むには、MicrosoftはあまりにもGoogleを大きくさせ過ぎた。

そういう意味からは、Yahoo買収という「ベタな展開」よりは、ネットの一部で噂される、Amazonを巻き込んでの新しいビジネスモデルを追求したほうが、遙かに将来性があるように思える。Amazonに誰が最初に手を伸ばすか。案外そのあたりに、次の動きを見出す鍵があるように思えるのだ。つまりそれは、PCでの正面衝突を避け、iPodで見事に復活したAppleの戦略にも通じるものであるのだが、Microsoftの伝統からすればそれもなかなか困難な道であろう。

奇しくも今朝の朝日新聞で、インタビューに応じたGoogleのCEO、エリック・シュミットは、

「このまま進むと、マイクロソフトやIBM、オラクルといった大手と正面から競争することになりませんか」

という記者の質問に対して、次のように語っている。

「ノット・IBM、ノット・オラクル(笑)」

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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