これまでに再三言っているようにサーチエンジンの特徴でもあり問題点でもあるのがその一方通行性である。サーチエンジンの働きは、その仕組み上あらかじめ作成しておいたインデクスを調べ検索結果を表示するということを繰り返し行っているだけであり、リアルタイムにユーザーのニーズを捉え、それを反映させた上で検索結果を並べ替えるなどと言ったことは全く行っていない。Aさんが検索してBさんが検索しても全く同じ結果である。Aさんは日本に住んでいるかもしれないし、Bさんは中国へ出張中かもしれない。
どのようなビジネスでもそうなのだが、ユーザーのニーズを聞くところから始まる商売が多い。こういうものをマーケットインというのだろうか。ところがハイテクとされるサーチエンジンは技術志向のエンジニアが作り上げたプロダクトアウト的なサービスである。Information Retrievalというような分野やArtificial Intelligenceというようなハイテク分野の研究からビジネスになったと言える。
一方、その使い方をユーザーの側から考えて見ると、これは極めて生活や個人の趣味趣向に密着している。技術とは関係なく日々の生活の何気ないシーンで、検索を行うという行為が自然に定着してしまった。インターネットを使う人=エンジニアはインターネットの歴史の初期だけで今では雑誌やTVや電話と同じ感覚で当たり前のもととして使う。
しかもサーチエンジンのビジネスモデルはリスティング広告という、これまた極めて原始的なビジネスである。仕組みは最先端だが、アイデアは原始的である。つまり人々の生活の中で必要なものを必要な人に必要な時にうまく見せる広告で飯を食っているわけである。
私の考えではサーチエンジンはこのままではいけない。自動的に作られた一方通行のインデクスではいけないのだ。そこに、ユーザーのフィードバックを反映させる何かが必要になってくると思う。そうでなければ、より便利なより身近な自分にとって使いやすいサーチエンジンにならないではないか。
現在のサーチエンジンはウェブマスター(ページを作った人)の意見がリンク、アンカーテキストという形で反映されたものである。いわば発信者の意向だけが反映された順位で表示される。将来的には、利用者の意向と発信者の意向が半々になったような状態がベストではないかと思う。
パーソナライズという言葉で、各サーチエンジンが何を作ろうとしているのか分からないが、ユーザーの意向が反映されてこそ次の時代のサーチエンジンとなるのではないだろうか。
私も次の世代のサーチエンジンのために、少しでもお役に立つような仕事をしていきたいと思う。
さて、最後に今回でこの連載は最後となります。これまでご愛読頂いた方、コメントやトラックバックを頂いた方、本当にありがとうございました。
今後もオリジナルサイトの方では個人のブログを書き続けますので、そちらをご覧頂ければ幸いです。
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