4月22日に書いた「インターネット視聴率とは使えるデータなのか」が色々なところで取り上げられているので整理したい。
私の不勉強で知らないことも色々あるし、別の方が書いているブログを読んでなるほどと思うこともたくさんある。そういうことも含めてそもそも私の書いている文章はブログである。新聞記事ではない。マスメディアではない。CNETと契約はしているが私の意見(無知も含めて)を書いている。
Netratingsの萩原さんの講演を聞いて、本当はその場で色々と質問したかったのだが、質疑応答の時間がなかったので疑問に思っていることをエントリーに書いた。私の立場は明確でインターネットをパーソナルメディアという切り口から捉えている。
当然、インターネットにはマスメディアという別の切り口がある。それで大きなビジネスになっていることも事実だし、関連する方が多いのもよく知っている。私自身もマスメディアで給料をもらっているようなものだ。だからこそ、あえてパーソナルメディアという切り口で色々と突っ込んだ質問をしたかったし、このブログでは一貫してインターネットをパーソナルメディアとして捉えようとしている。異論もあろうが一人位そういう者がいてもいいだろう。
萩原さんや他の方からコメントを頂きました。ありがとうございます。
Yahoo に行ったからと言ってそれがどんな意味になるのか? とありますが、どんな人がどのサイトやコンテンツをどのくらい利用しているのかという継続的な測定は、インターネット視聴率が担っている最も基本的な役割です。
広告業界ではメディアデータとして使われますし、ECサイトでは来店者データとなります。企業サイトも競合社と比較したトレンド推移やポジショニング把握は不可欠です。私どもの顧客はそこに大きな価値を感じるからこそ、ご契約、ご活用いただいているのだと思います。
マスメディアとしては非常に貴重なデータであり私自身もこれらのデータには大変お世話になっています。今後ともこのようなデータは十分にインターネット関連企業や社会全体に役立つと思います。
また「広くユーザーにアプリケーションをばらまいてデータを収集するというやり方以外にインターネットらしい調査の仕方はない」という考え方も危険です。Alexa で収集できるのは特殊な集団のデータにすぎません。
単にスケーラブルであることに優位性があるのではなく、データの質や性格も問われます。Alexa のような特殊なサンプルで事足りる課題もあれば、客観的指標としては使い物にならない課題もあると考えるべきです。
Alexaという例をたまたま出しましたが、これはマスメディアの対極としてまさに一人一人のユーザー行動を古くから取ろうとしている、すなわちパーソナルメディアと捉えた場合のメジャメントの例として挙げました。Alexaのユーザーが偏っていることは私も知っているし、少々残念だと感じていますが、マスメディア的でない手法でユーザー行動を把握しようという試みには興味があります。
この他に先日のA9のツールバーでも同様の試みをするものと思われます。Amazonはオンライン小売業ですが、常連客にはその人に合ったサービスを提供しようとしており、その道を突き進むと思います。
いずれにしても、どんな調査・分析でも目的にあったデータや手法を選択することが何よりも大切ではないでしょうか。
井上さんのブログは業界への影響が非常に大きいですから、インターネット視聴率に関しましてもご理解をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
インターネット視聴率の有用性については十分に理解しました。コメントありがとうございました。
講演の中で、「最近はサーチエンジンから来る場合にはリファラーのキーワードも保存している」という説明がありましたが、この辺りがまさにマス的でないデータだと思いますので、このトピックについてのクライアントの要望やデータの集め方に対する今後の方向性などをお聞かせ願えればと思います。
藤原さんのコメントには、以下のような部分があります。これは非常に面白い意見だと思います。
オーディエンス調査を行うことで、もし時間帯別に想定するセグメントが変化するようなデータが判明すれば(例えば午前中は主婦層のアクセスが多い等)、セグメント別にマッチしたサマリーテキストを表示する手法は、SEOの見地から非常に有効だと思います。そういった意味でSESでの萩原さんは適材適所に思いました。
但し、サイトの巡回は検索エンジン任せなので、時間帯別に検索結果のサマリーテキストを変化させるのは現実的ではありません。しかしながら、リスティング広告(=SEM)では是非実践したいところです。時間帯別にターゲットにするセグメントを絞り込んでクリエイティブを変化させることは、業種業態によっては、メディアのパフォーマンスを高める有効なスキームになるのではないでしょうか。
究極的には「セグメント」ではなく「パーソン」になると思います。SEMでも進化の過程として「セグメント」を取り入れることは有効ではないかと思いますが、最終的にはその人にあった広告を出すことが目標になるのではないかと思います。
加賀さんのコメントの以下の部分は私の意見と同じです。
例えば、テレビであれば夜8時から9時までの間に8CHを視聴している視聴者であれば同じ番組、広告を見ているといえますが、夜8時から9時までの間にYahooのサイトアクセスしているインターネットユーザーが同じ種類のコンテンツ、広告を参照しているといえるでしょうか。掲示板、オークション、ゲーム、検索などそれぞれ別々のコンテンツにアクセスしているのではないでしょうか。
広告の媒体として考えた場合、掲示板、オークション、ゲーム、検索など各コンテンツのユーザーはそれぞれ興味が異なりそれぞれ別の広告戦略が要求されると思われるので、サイト全体に対するアクセスだけでなく、サイト内セグメント別の調査も有効ではないでしょうか。(井上氏や萩原氏とは論点がずれているような気もしないでもないですが、一応私の意見として書いておきます。)
また、以下の部分については私も含め同意見の関係者が多いと思いますので、萩原さんのコメントがあると幸いです。
しかしながら、全体のインターネット利用者からみて、家庭外からサイトにアクセスする利用者がかなりの比率で存在するにもかかわらず、自宅のPCからのアクセスのみを調査範囲とするネットレイティングス調査方法にも、インターネット全体のユーザーの視聴行動を考えた場合、家庭からアクセスするユーザー向けにコンテンツを提供しているサイトが高く評価されるという意味で調査範囲に偏りがある可能性が高いのではないでしょうか。
高木さんのコメントは次のようになっています。
大人同士の会話だからかも知れませんが、この場合ははっきりと井上氏の発言は間違っていると指摘するべきであると思います。
貴重なご意見ありがとうございます。冒頭に述べたとおり、最初に立っている地点が「パーソナルメディアから考える」ことですので、それが間違っていると言われれば意見の相違ということでしょう。
もともとのエントリーで言いたかったことは、「パーソナルメディアという立場に立った場合、メジャメントはどうなるのか?」という問題提起です。この問題を考えずにリスティングビジネスの評価はできないし、お客様にリスティング広告を売る場合に何を見せれば良いのか分からなくなります。
単に「インターネット視聴率に意味があるのか?」などと言ってしまったために誤解を招いてしまったのではないかと思います。もちろん意味があることは重々承知です。
Cnetの報道としての格式がどうかは別として、間違った記事を奇妙な推論に立脚し行っているのであれば削除をするのが筋だと思いますし、いまだにこうして閲覧できる状態にあるというのは理解に苦しみます。
ブログをマスメディアと捉えるなら削除しろというのは正当な意見ですが、パーソナルメディアとして捉えるなら何を書いても良いと思います。インターネットは玉石混交ですから、前回のエントリーは石として無視して下さって構いません。
ただしブログといってもCNETという看板がついている以上どこまでマスでどこから個人なのかの判別には私自身悩むことは確かです。しかし私のエントリーは高木さんのおっしゃるような「報道」でないことだけは確かです。
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もともとブログを書く動機は、「まずはどんなものか自分で使ってみる」という基本姿勢が常にあるからです。CNET上で書くということもインターネットの発展上の一つの試みではないかと思って、書くことにしました。
「人が多く集まるところ=マスメディアとして最適」ではない
インターネットが生んだキラーアプリケーションである「オークション」はものすごい数の人が集まり、ものすごいPVを生み出す。Yahoo!ジオシティーズやExciteフレンズ、その他掲示板やコミュニティーサイトなども多くの人が集まり、多くのPVを生み出している。しかしそれらのサイトやページはマスメディアとしては利用されていない。
また、翻訳や辞書などのツール類を利用している方も非常に多い。しかしこれもマス広告を入れる対象としてはあまり利用されない。
Googleのトップページは非常に多くのPVがあると思うが、Googleはそこには広告を出さない。出したいという人は多いと思うが、Googleは出さない。その代わり、AdWordsやAdSenseをどれだけ多く出せるかにフォーカスしている。
Googleはインターネットをマス広告の媒体とは捉えていない会社の良い例になっている。
再度、繰り返して言うが私はインターネットのマスメディア性を否定していない。単に別の切り口から捉えているだけである。
-inoue