昨日も Search Engine Strategies 2004 に行って来た。最初の基調講演でNetratingsの萩原社長の話があったが、その講演を聴きながら考えることがあったので書きたいと思う。講演のタイトルは
ウェブ利用行動データからみた検索サイトの現状と課題
でありインターネット視聴率から見た検索サイトの比較や、検索サイトからその他サイトへの誘導などを国内外の例を挙げて説明していた。
まずこのインターネット視聴率(オーディエンス・メジャメントと呼んでいたがここでは簡単のため視聴率と書かさせてもらう)について本質的な疑問がある。
それはパネル数の少なさである。
Netratingsではテレビで6,000世帯、インターネット(家庭)では1万世帯を対象にしているとのことだ。テレビについて言えば東京ではNHKと民放あわせて7チャンネルから選択可能であるが、一方でインターネットはGoogleのインデクスに入っているものだけで42億ページある。もちろん多言語が含まれるので、日本語では数億というオーダーだろう。
選択対象のオーダーが億単位で違う(7 vs 数億)のに、調査対象は同一オーダー(6,000 vs 1万)であることに大きな疑問を感じた。1万世帯のパネルはサンプルとしてどれ位意味があるのだろうか?
もちろんユーザーの大きな流れはつかむことが出来る。例えばYahooに行く、Googleに行く、楽天に行く、ISPのサイトに行く、などの大枠は分かる。しかしYahooに行ったからと言ってそれがどんな意味になるのか?
Yahooに行ったとしても、ある人は掲示板で自分の趣味について読み書きし、ある人はオークションを使う。またある人はサーチやディレクトリを使って他のサイトにジャンプして行ってしまう。
結局、そのユーザーが何に興味を持っているか、を考えると1万世帯というパネル数は圧倒的に少ないと言わざるを得ない。
最近はサーチエンジンでのキーワードもきちんと解析するようになったと言うことだったが、これは評価できる。まずはそこから始めないとインターネットの本質を見誤る。インターネットはマスメディアではないのだ。Yahooが一番リーチが多いのは誰でも知っているが、ではYahooに来る人達は全員同じ興味の持ち主だろうか?答えは明らかにNoだろう。
検索キーワードを一度でも見れば1万世帯では足りないことにすぐに気がつくだろう。
昨日の基調講演ではウェイン・ロージングはブログのことを"self publishing phenomenon"と言っていた。私はパーソナル・メディアと呼んでいるが本質的には同じ事象を指している。
Netratingsなどの第三機関のデータは非常に参考になるが、クライアントの知りたいユーザー行動が具体的になればなるほど、1万世帯というパネル数では参考にならないことに気づくだろう。
例えば、「1週間以内に、ヨドバシカメラで買い物をして、ブログを書いて、Yahooオークションでゴルフクラブをチェックしている人」を知りたかったら果たして何人になるだろうか?それをサンプルとしてインターネット人口に当てはめて良いのか?
インターネット視聴率のようなもので具体的なユーザー行動を知りたいと考えたら、測定自身もスケーラブルにしないといけない。それを古くから行っているのがAlexaだろうと思う。広くユーザーにアプリケーションをばらまいてデータを収集するというやり方以外にインターネットらしい調査の仕方はない。残念ながらAlexaは日本語のインターフェースがないので、一般の人には知名度が非常に低いが良く出来たサービスなので是非一度皆さんも利用してみることをお勧めする。
(追記: 2004/5/6)
-inoue