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技術とコンテンツのビミョーな関係

2010/04/23 13:41
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プロフィール

大家正巳

そりゃまあ色々ありますが、どうせ愚痴るくらいなら、いっそ書いて公表してしまおう!ということです。
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 「ライカ」というカメラメーカーがある。カメラ好きなら絶対に知っている歴史の古いメーカーで、熱心なコレクターも多い。
 で、このライカのレンズ、不思議なことに「昔のものほど良い」と言われることがある。現在のものよりも戦前に作られたレンズの方が、はるかに出来が良かったというのだ。
 現存する古いレンズは劣化が進んで直接の比較ができないため、真偽の程は良くわからないらしい。
 このように「昔のものの方がずっと良かった」といわれるものは他にもある。たとえばワーゲンビートルやローバーミニなど名車の世界や、ストラヴィバリなどの楽器の世界等々。

 楽器、特に木製楽器には「時間とともに枯れる」という要素があるので、まあ納得できることも多い。
 しかし、研究開発や技術革新で間違いなく進歩するはずの純粋な工業製品の世界においては、「昔のほうが良かった」というのは、モノに対する思い入れや愛着に共感こそすれ、実際には都市伝説と言って良かろう。現実には全体性能は間違いなく向上しているはずである。(そうでなければ、我々技術者っていったい何?ということになる)

 話はかわって。

 最近、我が家に生息するナゾの生物「オンナノコ」たちがハマっているアニメがある。
 「赤毛のアン」。かの世界名作劇場シリーズのひとつで、1979年に放送された名作である。
 これが今、デジタル放送で再放送されており、女房子供がまあ夢中。ビデオの録画番組一覧はさながら「赤毛のアン全集」の様相を呈している。昨夜などは帰宅するとちょうどマシューが死ぬ場面で、私は悲嘆にくれるマリラとアンの泣き顔を見ながら飯を食うハメになった。

 まあよい。
 しかしこの作品、とても良く出来ている。今も全く古さを感じない。
 いや、厳密に言えば「古いなあ」という感じは、実は多々ある。完全手書きのセルアニメであり、そこかしこにCGならば絶対にないであろう「粗さ」が目立つことは確かだし、固定カメラのように動かない視点で構成されるカット割りに一定の「古臭さ」はやはり否めない。
 しかし、そのことが作品の価値に全くと言って良いほど影響していないのだ。

 同種のことは実写映画や音楽などにも言える。
 白黒であることは「七人の侍」の面白さに全くマイナスではないし、アナログレコードのあのノイズだって、音楽を味わう行為にほとんど影響しなかった。

 これらのことは、とても重要なことを意味していないだろうか。
 記録や再生のための工業技術は時代とともに間違いなく向上する。画質や音質は良くなったし、これからも良くなるだろう。
 しかしそのことと、コンテンツの完成度や質との相関関係は、実は驚くほど少ないのだ。
 それはもういっそ「関係ない!」と言い切ってしまえるレベルなのではないか、と常々私は考えている。分野こそ違え、技術者のはしくれとして複雑な思いを感じつつ。

 何のことかというと、3Dテレビである。
 なにやら本当に近い将来、お茶の間に3D時代が訪れそうな気配がある。今はまだその技術面にのみ注目が集まっており、有望コンテンツも音楽ビデオやスポーツ中継などに限られているようだ。
 しかしいずれ、ドラマやニュースやバラエティなどを含め、数多くの分野の3D化が試みられることだろう。市民権獲得のためにはその段階での成功が重要だ。

 そのとき、コンテンツ制作側の人々には是非、「3Dでどう見せるか」といった小手先の技術に振り回されることなく、「3Dであるかどうかなど、もはや関係ない」というくらいの本質的に良質な作品を生み出してほしいなあ、と思った次第である。

 

 ところで私も、「3D化したらゼッタイ見たい!」と思う分野がある。
 ヨメに内緒なのは皆さんと同じだ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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