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クリス・アンダーソン著「FREE」への反論(4)

2010/04/13 11:34
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大家正巳

そりゃまあ色々ありますが、どうせ愚痴るくらいなら、いっそ書いて公表してしまおう!ということです。
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 無謀な反論その4。シリーズ最終回である。

非貨幣経済

 無償の労働力により構成された完全フリーの世界で、オープンソースやウィキペディアがその代表的成功例である。

 人は金銭目的だけで働くのではない。見返りとして「注目」や「名声」を得ることができるのであれば、たとえ無償であっても喜んで労働力を提供する。マズローの欲求段階説まで持ち出されて説明されてしまうと、とても説得力のある理想的な世界が広がっているように思える。

 確かにオープンソースは確実に成長しているし、ウィキペディアもウェザーニュースも大成功している。今や人類はボランティアによって英知を結集し、知の共有化に成功した、と言っても良いだろう。少なくとも現時点までは。

 では反論。
 このモデルでは品質保証も気になるところである。しかしまあ、オープンソースと品質保証についての話などが既に様々議論されているし、今回は「フリーライダー問題」を中心とする。

 フリーライダーとは「財やサービスをタダで享受するのみで、その対価を負担しない」者を指す。そして、いずれ大多数がフリーライダーとなると、財やサービスの供給が困難になってしまう、というのが「フリーライダー問題」である。このため、各種の公共サービスは税金によって運営されている。

 「フリー」本文中に、「ネットの世界ではフリーライドは問題にならない」という旨の記述がある。参加者が圧倒的に多く、またネット上の情報は「減る」ものでもないので、「タダ乗り派」が圧倒的多数を占めても構わない。むしろフリーライダーの数の多さこそが、提供側のモチベーションになる、という趣旨だった。しかしその結論を出すのはまだ早いのではないだろうか?

 インターネットが世界を変える時代を我々はリアルタイムに体験している。一種のフロンティア世代と言って良いだろう。新しいものを創り上げるのはとても楽しいことだ。我々は現在、間違いなくその楽しさを享受している。フリーライダーにならず、進んで供給のために労働力を提供する人が多いのは、そのためだと言えないだろうか?

 そう、とても面白いのだ。自分が書いたものがいきなり見知らぬ多くの人に読まれる、ということは。(実感…)
 そして、それは「これまでできなかったこと」だからこそ、なのだ。

 今後、重要になるのは創り上げた財やサービスを「維持する」ことだろう。そのとき、我々の子供たちの世代はどうなるだろうか。
 たとえば20年後、ほぼ全ての用語が解説し尽され、あとは地味で地道なメンテナンス作業だけとなった時、「調べものはタダ」が当たり前で、「自分が書いたものがすぐ全世界に発表できる」ことに慣れきってしまった新世代は、それでも喜んで匿名無償でウィキペディアを支えるのだろうか?

 同じように例えば将来、なんらかの理由によって「対マイクロソフト」の御旗が意味を持たなくなったとき、OSSはそれでも無償の労働力によってバージョンアップを続けられるだろうか?

 ネットの世界にフリーライダー問題が発生するかどうかは、もう一世代待つ必要があるように思う。そして、残念ながらあまり楽観できないのではないかとも思う。

 現在成功している「非貨幣経済」モデルは、「仕事と趣味」の間のとても危ういバランスの上で、しかもフロンティア世代限定で成り立っている、かなり特異なケースなのでは、と思うのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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