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起動画面が変えるものと、変えないもの

2006/12/19 08:47
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ギートステイト制作日誌

2045年の日本を社会学や情報技術といった視点から描き出すプロジェクト「ギートステイト」。批評家の東浩紀氏、エンジニアの鈴木健氏、小説家の桜坂洋氏の3人が「未来」の制作過程をお伝えします(このブログの更新は2007年1月4日で終了しました)。
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■ 未来の起動画面はどうなっているのか

任天堂のWiiが発売されました。米国から個人輸入したドーピング薬を飲んでWii Sportsをやっています。コデブに近づいていた体型が地味にひきしまりつつあるかんじです。ブラボー! ゲームといえばピザの代名詞だったのに、痩せるなんていい時代です。東さんにもお薦めしたいです。

ところでWiiの起動画面ですが、リモコンで電源を入れるといくつかのアイコンが表示されます。ゲームディスクが入っていても変わりません。初期のゲーム機では、ディスクが入っていた場合、企業ロゴが表示されたあとすぐにゲーム画面になりました。それが、Wiiではランチャー風の画面になったのです。DSもそうでした。

わたしが最初のPCであるPC-6001を買ったとき、起動画面には「How many pages?」と表示されました。DOS時代には起動用のバッチファイルを自分で書くのが普通でした。Windowsでは、起動時にユーザー名とパスワードを入力します。そして、ケータイではランチャーが表示されます。

PCとなると、CTRL+ESC→P→起動するアプリケーションの頭文字で起動したほうが自分的に速いのでそうしていますが、ケータイではわたしもランチャーを使用しています。そこにあるアイコンは、カメラ、ナビ、TV、メール、電卓、mp3プレイヤー、とまったく秩序がありませんし、階層化もされていません。ケータイでできることの中から、ユーザーがやりたいと欲望したものがアイコンになってフラットに並んでいるのです。ここで肝心なのは、ユーザーの欲求によってアイコンが並べられているということです。

次世代ゲーム機の起動時にランチャー風画面が表示されるようになったのは主にダウンロードコンテンツに対応するためでしょう。ユーザーがコントローラのアイコンをクリックしてニュースを見たがるかどうかはわかりません。好評なPS3の「トロステーション」は、ニュースを見るというよりトロのギリギリトークを見るといった意味合いのほうがいまは大きいようです。ですが、ニュースを見るという欲求が生じたとき、ニュースのアイコンはフラットな状態でそこにあるのです。これは重要な変化です。次々世代機、その次と進化をつづければ、TVとインターネットに繋がれ大容量記憶装置が搭載されているデバイスで実現可能なもののうち、ユーザーが欲求するすべてのアイコンが起動時にフラットに表示されるよう整理されていく可能性があります。

では、リビングに座っているTV画面の前のユーザーはなんのアイコンを欲求するのでしょうか。

■ 個人で見るコンテンツと集団で見るコンテンツ

家庭内でも、わたしはPC画面を覗かれるとわりとストレスを感じます。ケータイの画面もそうです。ラブリーな猫画像やおもしろいYouTubeの動画を見つけたとき、同じ部屋にいる人に声をかけて一緒に見ることはありますが、ネットはひとりで見るのが普通です。部屋が違っていたら、立ちあがって扉を開け声をかける前に、インスタントメッセンジャーにURLをコピーアンドペーストするでしょう。本や新聞なども、回し読みはしますが、他人と同時に見ることはしません。

一方、テレビ画面は皆で見ます。映画などは、映画館に行って、見ず知らずの他人と画面を共有してもストレスになりません。映画の冒頭などでスクロールするテキストを皆で読んでも嫌な気分になることはありません。いらいらすることはあるでしょう。小学校時代の朗読の時間などは、自分はもう読み終わっているのになぜこんな冗長な時間を過ごさねばならないのかと思ったものでした。

ゲーム画面も基本的には見られても平気です。数人で遊ぶゲームもありますし、RPGやAAVGなどを皆でわいわい言いながらプレイすることもあります。ところが、ノベルゲームになると微妙になります。ここでの線引きは、美少女ゲームかどうかではなく、ノベルゲームかどうかである気がします。なぜなら、美少女ゲームも、パラメータ操作型のSLGなどであれば皆でプレイしてもそれほどストレスを感じないからです。

それぞれのメディアを表にしてみます。

本・新聞 PC・ケータイ ゲーム テレビ・映画
個人
集団
×


ここで、鍵となるのは共時性です。共時性に対してもっとも相性が悪いのがテキストです。人はそれぞれテキストを読む速度が違います。読むという行為は、他者と同じ時間を共有しません。「いま自分がどこを読んでいるか」という情報はプライベートなものなのです。映画館の文字は強制スクロールであり、どこを読んでいるかはパブリックなものとならざるを得ません。

数年前、マイクロソフトがセットトップボックスの征覇を狙っているとか、ライブドアによるネットとテレビの融合とか言われましたが、ネットとTVの融合は依然として進んでいません。なぜなら、TVはリビングで皆で見るものなのに、ネットのテキストは個人で読むものだからです。最近のわたしなどは、TVのニュース番組の冒頭で気になるニュースの見出しが読まれると、ニュース本体を待たずにネットで検索し先に読んでしまいます。ですがこれは、わたし個人の欲求であり、リビングにいる他の人とは共有できません。

日々見ているネットの画面をリビングで家族と共有したい人はあまりいないのではないでしょうか。TVに繋いだドリームキャストで通信をやってた人を知っていますが、その人はひとり暮らしの女性でした。人は、リビングで他人と一緒のテキストを読みません。ふたりで並んで読むのは別々の本です。そのテキストがネット由来のものであっても、「いま読んでいる場所」がプライベートなものであることは変わらないでしょう。一方、YouTubeの映像など、ストレスなくリビングで共有できるものもあるでしょう。これらは未来になっても変化しません。「リビングの画面を皆で見る」という行為はひとつのライフスタイルを表しており、そのライフスタイルそのものが崩れる可能性はあります。ですが、「稼ぎ手である一組の成人+その子供」という核家族と同程度には未来でも維持されることでしょう。

個人で見るコンテンツと集団で見るコンテンツは、現在、ネットとTVで、各省庁の縦割行政みたいに分断されてしまっています。これらを整理整頓し、皆で見ることができるコンテンツをリビングの画面に集約する作業が、今後ゆっくりと進行していくと思われます。40年後の世界で、わたしたちが使用するデバイスの起動画面はどうなっているでしょう?

■ 未来にある2つのデバイス

未来のユーザーがリビングでスイッチを入れると、ある起動画面が映ります。

・検索窓
・天気
・映像ニュース
・映像コンテンツ
・音楽・音声コンテンツ
・ゲームコンテンツ

このデバイスは、他者と同じ時間を共有しても問題のないコンテンツを再生するものです。検索窓は、電車の運行情報とか、行楽地情報とか、映画の上演時間とか、食べもののデリバリーサービスとか、公共性の強い情報や、映像・音楽・ゲームコンテンツを検索しやすいよう特化されています。家にいるときはかならずPCが立ちあがっている人以外には、「ちょっとしたネットの検索」は役に立つものです。こうしたテキストの入力には音声を使うかもしれませんし、リモコンで宙に文字を書くのかもしれません。リビングにあるこのデバイスは家の持ち主の認証を受けており、それと同時に、コンテンツは家の持ち主のペアレンタルコントロール下にあります。

一方、個人は、それぞれひとつ以上のデバイスを携帯しています。PSP(公共サービスプラットフォーム)カードと呼ばれる個人認証チップと連動して動くデバイスです。個人認証チップは公的なものではなく、行政サービスを委託された民間業者が発行したものです。携帯デバイスは、携帯電話、ちょっとしたPC、各種電子マネー、電子キー、乗車カードなどを統合した機能を合わせ持っています。ライフログにアクセスするときにも使用します。情報そのものはどこかにあるサーバに貯め込まれるため、デバイスに大容量の記憶装置は必要ありません。デバイスに入っているのは、「どこにアクセスすればその情報を入手できるか」というメタ情報です。

携帯デバイスもコンテンツ再生機器の一種で、他者と同じ時間を共有するとストレスの発生するコンテンツを主に再生します。文字ニュース、blog・掲示板等のネット情報、ゲーム・小説・漫画などです。ついている画面や音声再生装置が貧弱なだけで、再生機能はリビングのデバイスと同等です。未来では、画面や入力装置にデバイスは固定されていません。リビングや個人の部屋にある画面は、携帯デバイスの画面として一時的に流用することができます。人は、他人と情報を共有したいときだけ、リビングの画面に携帯デバイスの情報を映し出すのです。

未来学エンターテインメント「ギートステイト」も、40年後は携帯デバイスで読まれることになるでしょう。わたし個人の欲望としては、紙の本も残っていて欲しいのですが、もしかすると残っていないかもしれません。ちょっとさびしいですね。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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