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未来学エンターテインメント

2006/08/16 18:09
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プロフィール

ギートステイト制作日誌

2045年の日本を社会学や情報技術といった視点から描き出すプロジェクト「ギートステイト」。批評家の東浩紀氏、エンジニアの鈴木健氏、小説家の桜坂洋氏の3人が「未来」の制作過程をお伝えします(このブログの更新は2007年1月4日で終了しました)。
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みなさん、こんにちは。批評家の東浩紀です。

普段は、こちらのブログでいろいろ書いています。

さて、このたび僕は、小説家の桜坂洋さん、エンジニアの鈴木健さんとともに、「プロジェクト・ギートステイト」なる未来予測+エンターテインメント企画(僕はそれを「未来学エンターテインメント」と名づけたい気分なのですが)を立ち上げることになりました。このブログでは、そのギートステイトの「制作日誌」が、3人の持ち回りで掲載されます。

僕と桜坂さんがどのような仕事をしてきたかについては、それぞれ検索すると情報が出てきます。鈴木健さんは同姓同名のひとが多く、Googleの神通力もいまひとつ及ばないので、彼のサイトにリンクを飛ばしておきます。ここを見れば、鈴木さんの正体がわかるかもしれません。

それでは、プロジェクト・ギートステイトとはどんな企画なのでしょうか。先日CNETにインタビューも掲載されたのですが、概要をあらためて記しておきます。以下の原稿は、先日コミケで販売した『ギートステイト・ハンドブック』からの転載です。

プロジェクト・ギートステイトは、批評家の東浩紀、小説家の桜坂洋、エンジニアの鈴木健が立ち上げた、未来予測エンターテインメント創造プロジェクトである。「いまここにある現在を起点とした、まったく新しい未来社会を描き出す」を目的として、2006年春に始動した。

このプロジェクトは、エンターテインメントであるとともに未来予測でもある。桜坂洋は、ライトノベルの手法を用いて、SFに未来の想像力を回復させることを試みる。東浩紀と鈴木健は、2004年から2006年まで、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターで開催していた研究会、「情報社会の倫理と設計についての学際的研究」、略称「ised」の成果を注ぎ込む。そこに描きだされるのは、かつてなくリアルで、現在と地続きで、しかもセンス・オブ・ワンダーに満ちた未来社会像になるはずだ。

このプロジェクトでは、人文・社会学的見地からの未来予測、それに伴う論理・状況設定を東浩紀が、情報技術的見地からの未来予測、それに伴う論理・状況設定を鈴木健が、上記設定を生かしたサイエンス・フィクションの物語構成を桜坂洋が担当する。物語のすべてを桜坂洋が担当するわけではなく、今後、新たな発表媒体が加われば、同じ設定の上にいくつもの物語が搭載されることも考えられる。

プロジェクト・ギートステイトの一次発表媒体はウェブである。今秋に立ち上がる公式サイト(http://geetstate.org/)では、物語の層(第1層)、世界設定の層(第2層)、それを支える分析(第3層)が有機的にリンクされ、未来社会が網羅的に記述される予定である。

……とまあ、こんな感じです。そして、ここで未来とは、具体的には2045年を考えています。

では、その「2045年の世界」をどう想定しているのか。同じく転載します。

2045年、日本は道州制を導入している。本作品の舞台となる南関東州は、23区を除く旧東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県の領域を占める。南関東州の行政は極限まで縮小され、社会保険から交番の運営まで、公共サービスのほとんどが市場化されている。政策は、ネットのリアルタイム投票によって決定され、これは伝播民主制と呼ばれている。日本は少子高齢化の極にあり、団塊ジュニアと呼ばれた世代を最大とした逆三角形型の人口ピラミッドを形成している。

南関東州では、ギートと呼ばれる若年単純知的労働者が増加している。総人口の6パーセント、およそ150万人がギートであり、ゲームプレイ・ワーキングという在宅労働に従事している。

ゲームプレイ・ワーキングは、ネットワーク上に公開された仕事のことである。マッピングシステムにより、本来の仕事の姿とまったく違うエンターテインメント的な外見( 多くの場合はコンピュータ・ゲーム) をこの仕事は備えており、従事者は、あたかもゲームをしているのと同じ感覚で在宅労働することができる。ギートたちの年収は概して高くないが、中には能力を生かし高収入を得る者もいる。ゲームプレイ・ワーキングを禁止した中国の政策等の事情によりアジア諸国から流入した外国人労働者は70万人を越え、南関東州はしばしば「ギートステイト」とも揶揄される。

この時代、人々は、個人の生活のあらゆる履歴情報をコンピュータに蓄積している。あらゆる履歴情報とは、メール、テキスト、取引情報、閲覧したウェブページや視聴したテレビ番組にとどまらず、その個人をとりまく24時間365日の音声データと映像データ、嗅覚データなどである。これらのデータを総称して「ライフログ」という。

家電メーカーの多い日本はライフログの先進国である。製品ごとにライフログサービスの機能をオフにすることもできるが、あらゆるデバイスやサービスの挙動がライフログのデータによって変わるため、一部の極端なセキュリティー運動家を除くと、ほぼ全国民がなんらかのライフログを利用している。南関東州では、暗号化されたP2Pネットワークをライフログのストレージとして利用している者が多い。

ライフログのデータは個人のものであり、暗号化によって厳重に守られている。ちなみに、中国では、ライフログデータは国家のものである。また、「情報は自律しているべきだ」と考えるオープン派と呼ばれる人々も存在する。ライフログデータに限らず、すべてのデータの暗号化を無くすべきだと彼らは主張し、暗号解読のための研究活動に余念がない。2045年現在、オープン派の天才数学者がライフログの暗号を破る理論を編み出したという噂がネットを席捲し、随所でパニックに似た状況が発生している。

人々の生活は、薔薇色ではないが悪くもなく、ライフログによってしかるべき情報を提供する家電に囲まれ満足度は高い。その一方で、貧富の格差が拡大し、高齢者の犯罪が目立つようになっている。同時に、少ない子供を守るための相互監視体制も敷かれている。「自分の行動は検索エンジンが決定しているのだ」と考える新たな精神病なども発生している。

物語は、そんな世界に生きる元ゲーマーの老人と検索性同一性障害の少女、ギートの青年、そしてひとりのテロリストを中心に、4話のオムニバス形式で展開していく。家族は出会えるのか、老人は幸せになれるのか、思い出は守れるのか、2045年のそれぞれの「居場所」探しが始まる……。

いかがでしょう。

ここで「南関東州」や「検索性同一性障害」がおもに僕が担当する設定で、「ライフログ」や「オープン教」がおもに鈴木さんが担当する設定なわけですね。「ギート」は、「ギーク」と「ニート」の合成語あるいは「グーグル・ニート」の略で、僕と鈴木さんが雑談している最中に思いつきました。この言葉を思いついたところから、以上の2045年の世界は始まっています。

さて、それでこの「制作日誌」です。当初の予定では、ここでは、企画進行に絡めた四方山話を3人が展開する、というけっこうユルいスタイルを想定していました。

しかし、このプロジェクト、意外とあちこちで好評なので、ちょっと方針を変えて、いまはより攻撃的に、僕たちがいま行っている世界構築の舞台裏そのものを公開してしまおうと思っています。具体的には、いままでクローズドなMLで行っていた設定原稿の提出やダメだし、アイデアの投稿などを、このブログ上でそのまま公開で展開し、読者のみなさんの反応を見てみようというわけです。つまり、みなさんはここで、僕たち3人の未来予測/設定企画会議を横から眺めることになります。そして、それは、プロジェクト・ギートステイトを、未来への想像力を回復するための思考実験の場にしたい、という僕たちの願いとも一致しています。

というわけで、最初の3回だけ、今回と同じく予備的な自己紹介が投稿されたあと、このブログは、「2045年の未来」をめぐっての3人の議論の場になるはずです。これそのものがあまり前例のないことなので、どのようにこの形式が機能するのか、僕たちにもよくわからないところがあります。企画会議を公開といっても、実際には僕たちは週に一度は顔をつきあわせているし、ここでは読者の目を意識せざるをえないでしょう。とりあえずは、コメント欄が荒れると悲しいので、コメント機能は3人の投稿に制限、トラックバックはオープンということで様子を見ようかと思っています。

僕の予測では、鈴木さんが天然、桜坂さんがボケ、僕がツッコミという役回りになるのではないかと思いますが、はてさて、どうなることやら……。

今後の展開をおたのしみに!

【追記】

コメント欄ですが、技術的理由で、しばらくのあいだは僕たち3人も書き込めないようです。最初から桜坂さんと鈴木さんは書く気まんまんだったのですが、残念。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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