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PBCのパターン(2) 成功報酬型サービスの契約条件

2010/08/23 13:30
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甲斐真樹

一人一人のコミュニケーションの間にあるモノ、その先にあるキッカケをどのよ うにして価値あるものにするか、おもてなしを科学するブログ。
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前回では、EC分野における成功報酬型モデルの人気と、当社のサービスを含む主要な成功報酬型モデルのご紹介をさせていただきつつ、このモデルの抱える課題として「契約解除の条件」があるという指摘までをさせてもらいました。

今回は、課題とした契約解除の条件について整理をし、回避のためにどのようなことが必要かを書いてみます。


リスクを負うのは、将来のリターンを期待して

Webソリューション会社が、成功報酬型モデルにおいて開発費や運営費のリスクを取るのは、その契約によって大きなリターンを期待できるからです。

本来のPBCの目的である、不透明な人月単価の解消やベンダー側の相違工夫など付加価値に対する報酬のあり方などの解消、という効果はもちろんありますが、多くのWebソリューション会社がこのサービスを手掛けるのは、稼働量でしか対価を得られない状況を改善したいという思いもあるのではないかと思うのです。

自分たちの取り組みやアイディアが、売上アップという成果に繋がることで、稼働対価以上のリターンが見込める。これはWebソリューション会社の従来の仕事から考えると非常に魅力的なことです。

受託開発の場合、基本的には「稼働量」でしかお金を頂くことはできません。そのECサイトがどれだけ成長しても、どれだけ売上が伸びても、それに比例して運営費や保守費などがつりあがっていくことはないわけです。(もちろん管理するシステム規模が大きくなったり、売上が伸びていくことで取り組まないといけないことが多くなり、運営費が伸びるということはあります。しかし、その場合でも、あくまで実際の「稼働量」が増えるということが前提にあります。)

一方で、上記で紹介したような成功報酬型モデルは、分配率などは売上に応じて変動するところが多いとは思いますが、それでも、売上が伸び成長していければ、その分頂ける報酬額も増えていきます。それも実質的にな稼働量とは関係なく増えていくわけです。

ベンダーとしては、頑張って売上を伸ばすことで、自社が得られる成果も大きくなるわけなので、様々な工夫を凝らすでしょうし、少しでも売上が伸びるように真剣に取り組むでしょう。


成功すればするほど報酬額が高く感じられると....

それで仮に売上が倍、倍で伸びていったとしましょう。売上が大きくなっていった時に、Webソリューション会社が得られる報酬は、当然ながら普通に受託開発契約などでソリューション会社に支払うシステム保守費や開発費よりは大きいものであるはずです。でなければ、リスクをとって持ち出しで開発を行う意味もあまりありません。

しかし、一方で、メーカーからしてみるとどうでしょうか。順調にサイトが成長していった時に、ソリューション会社に支払う報酬額をもっと削減できたら、もっと大きな利益になるのに、とか、成功報酬ではなく、通常の委託業務契約に変えた方が固定コストになって利益がでるのではないか、というような考えが浮かばないでしょうか。

しっかりとした信頼関係やパートナーシップが築けており、このECサイトの運営に、このソリューション会社の存在は欠かせないのだと思われていることはもちろん必要だと思いますが、それでもビジネスの世界です。担当レベルではそう考えていても、会社のトップから見たら、自社内でチームを持って対応したほうが安い、今後の成長を考えても、外部に頼ってる状態は危険だ、と判断するケースもあるのではないでしょうか。

成功報酬型のサービスは、売上が小さいときには、ソリューション会社にとっても旨みはあまりありません。
仮に成功報酬率が売上の20%だったとします。売上が10万円のときは、得られる報酬は2万円ですが、これが100万円になると20万円、1億になれば、2000万円ということになります。売上が大きくなればなるほどテコの原理が働くので、大きな利益を確保できることになります。(もちろん、ほとんどの成功報酬型契約は、売上のレンジによって按分率が変わるので、上記のように、そのままの報酬率がずっと維持されることはないとは思いますが)

売上が10万円、20万円のレベルのときに、成功報酬で契約ができたとしても、Webソリューション会社にとっては、おそらく殆どの場合赤字になるでしょう。赤字でも手掛けるのは、そのECサイトが成長したときのリターンを期待してのことです。

その段階で、内製でやる、委託モデルに切り替える、というような決定を下されてしまうと、Webソリューション会社としては、何のためにこのサイトを育ててきたのか、ここに稼働やアイディアを投入してきたのかがわからなくなります。言ってしまえば、投資が無駄になってしまうのです。


集客に係るコストや広告費を負担した場合....

この問題は、初期の集客費用や広告費用の負担というところにも、大きく関係してきます。

ゼロからサイトを立ちあげるということになった場合には、集客というのも大きな問題のひとつです。広告などもすべてWebソリューション会社側が負担するというようなところもあるようです。

商品にもよりますが、ほとんどの場合、広告などを使って初回購入客やお試し申し込み客を獲得しようとすると、獲得単価のほうが、1人当たりの購入額から得られる粗利よりも大きくなってしまいます。つまり広告で赤字が出ます。

それでも広告などを利用して新規客を獲得するのは、そのお客さんに2回目、3回目と買う、リピーターになってもらうことを期待するからです。トータルとしてペイすれば良いわけです。多くの通販は「売り切り」ではなく、リピーターを増やしていくことで売上を伸ばし、安定化させていきます。新規客を獲得することと、リピーター化することは、ECサイト運営の両軸ですが、多少新規客獲得にコストがかかっていても、きちんとリピーター化に成功できていれば問題ないわけです。

リピーターを育てていくことでトータルとして儲かるようなプランを立てて、広告を利用する場合、その広告の負担をすべてWebソリューション会社が持っていると、「契約解除」が持ち上がった時にどうなるでしょうか。持ち出しで、赤字を背負いながら、広告も展開した、さぁ獲得した顧客のリピーターも増えてきて、これから回収時期にはいろうかというときに、契約解除ということになれば、これもなんのための広告だったのか、何のための持ち出しだったのか、意味がなくなってしまいます。


では、契約内容にどのようなことを考えておくべきか?

さて、この問題を回避するためには、どのような契約や同意が必要でしょうか。

1から立ち上げた独自のサイトならば、契約終了段階で、そのサイトを閉じる、というような契約もあるかもしれません。ドメインや、購入者やメールマガジン登録者のデータなどは、メーカーさん側のものとしてその後も利用はできますが、その店舗自体や店舗を動かすためのシステムや仕組みなどは、Webソリューション会社のものとして、契約が終了したら使えなくなるというような契約です。

引き続き利用するには、今度はシステム利用料や保守費用といった別契約とする場合もあるでしょうし、あるいは、そのシステムや店舗を継続するためには、それごと買いとってもらうというような形もあるかもしれません。この場合でも、初期段階での契約書には、その内容を盛りこんで同意しておく必要があるでしょうし、買いとってもらう場合の価値算定の方法なども必要でしょう。

広告も持ち出しでやるのならば、広告から獲得した顧客をきちんと見分けがつくように管理しておき、その顧客分については費用を貰えるようにしておく、あるいは負担した広告費などについて取り決めをしておく、などの必要となってくるでしょう。

元々存在していたサイトに途中から手を入れる、運営を引き継ぐなどの場合はさらに複雑となります。
どこからどこまでがこのサービス契約において改善された箇所なのか成果なのか、そんなことを1つ1つ厳密に見ることはおそらく不可能です。契約を解除したから、手を入れた箇所だけ元に戻すなんてこともできません。

契約前と契約後での平均売上の差分から、Webソリューション会社の付加価値を算定して、その額に何かしらの変数をかけ合わせて契約解除金額を決定するような方式は考えられないでしょうか。これも算定は一筋縄ではいかないとは思いますが、何かしらの取り決めは必要でしょう。

というようなことを書いていると、Webソリューション側の立場から、なるべく契約解除されないような条件を設定しておいた方が良いと考えているように思われるかもしれません。私自身がWebソリューション側の立場の人間なので、そういう考えに偏りがちなのですが、決して契約解除されないようにしたいわけではありません。

むしろ、成功しているとき、サイトが成長していくときには、お互いがよりお互いを必要として、より強力なパートナーシップを結んていくことが最も好ましい状態であると思います。ただ、リスクという意味では、Webソリューション会社側の負担のほうが大きくなるケースが多いと思うので、あくまでもリスクヘッジとして考えた場合に、こういうところを想定しておく必要はあるだろう、という認識です。

もちろん、ここまでは比較的、サイト運営がうまくいった場合に、メーカー側から「契約解除」を検討されるという前提で考えてきましたが、その逆のパターンもあります。サイト運営がまったくうまくいかない場合もあります。

メーカー側から見ると、もっと売上が伸ばせるはずなのに全然伸びない、期待していたように成長しないのに、毎月報酬額だけがとられていく。これなら自分たちでやったほうが、あるいは別の会社に依頼したほうが成長させられるだろう、と考える場合もあるでしょう。また、Webソリューション会社から見たときには、商品の問題やメーカーさんの協力姿勢の問題などから、いくら取り組んでも、これ以上売上を伸ばすことは出来ないし、そこで多くの稼働をとられても回収できる見込みがなさそう、契約を解除しないといつまでも赤字に足を取られてしまう、というような問題に直面することもあるでしょう。

お互い言い分は様々でしょうが、うまくいかないので、どちらかが契約を解除したいと考えるケースは必ずあります。

この場合も予め契約で取り決めが必要となるでしょう。お互いが契約解除を申し入れた場合の条件や制約などを決めておく必要があるでしょう。しかし、お互いが契約に縛られて、負担ある状況、満足のいかない状況を我慢し続けなければならないという状態には陥らないように配慮しておく必要があるかと思います。


パートナーシップの試金石としての契約

ある意味、この手の成功報酬型のビジネスの要点は、どのようなパートナーシップ関係を前提としながら、うまくいかなかった時、うまくいった時のお互いのリスクをどう捉えておくか、というところになります。最近では、それでも厳しくなってきている方だとは思いますが、基本的に日本での商慣習は、契約書などを前提とするものではなく、ある程度アバウトな信頼関係、人間関係で成立しているものが多いとは思います。

しかし、完全成功報酬型での契約の場合には、先にお話したような、かなり具体的なレベルでの決め事も最初に憚りなく、取り決められているかということは非常に重要なのではないかと思います。そこを曖昧にせず、きちんと詰めていける、逆に言うと、それがパートナーシップの前提条件になるのではないかと思います。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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