前回のエントリにて採り上げました「Parallels Desktop 7 for Mac」に引き続き、米VMwareによるType 2 ハイパーバイザ「VMware Fusion」が、2009年10月以来となるメジャーアップグレードを迎えました。現在VMwareによる公式ダウンロードページを通じて、日本語含む7言語リソースを包含するマルチリンガル版のバイナリパッケージが入手可能となっていますので、当エントリではVer.3.1からの変更点を中心に、その概要等を簡単に纏めてみたいと思います(公式ブログによるアナウンスはこちら。当エントリ投稿時点において「4.0.1 Build 474597」が最新GA版となります。尚、「VMware Fusion」は、単一のバイナリパッケージに日本語含む複数言語リソースが包含されたマルチリンガル版として提供されているため、「英語版」「日本語版」等の区別はありません(OS Xにおける言語設定に準じたインターフェイスが提供される事となります))。
この度リリースされた「VMware Fusion 4」では、パフォーマンスの全般的な改善、インターフェイスのリデザイン、及びGUIクライアント(VMware Fusion.app)の64bit化が行われた他、新たにAppleによる「OS X Lion」がゲストOSとしてサポートされました(ゲストOSとしてのインストールガイドはこちら)。また、その他の主な特徴として以下の項目等が示されています。
- パフォーマンス、及び機能性の向上等を主目的として、「VMware ESXi 5」「VMware Workstation 8」「VMware Player 4」等と同様に、デフォルトの仮想ハードウェアのバージョンを「8」にアップグレード。仮想マシンのハードウェアバージョンは、セッティングエディタを通じたGUIにて変更可能(「Other」>「Compatibility」)
- インストールプロセスの変更。従来までMac OS X標準のインストーラウィジェットを用いて行われていたアプリケーションのインストールを、アプリケーションパッケージのドラッグアンドドロップにて行えるように変更。この変更に伴い、従来まで「/Library/Application Support/VMware Fusion/」に属していた各種関連ツール等は、アプリケーションバンドル内(/Applications/VMware Fusion.app/Contents/Library/)に移動。これにはコマンドラインユーティリティ「vmrun」、仮想ディスクコンフィギュレーションツール「vmware-vdiskmanager」等が含まれる
- アプリケーションアーキテクチャの変更。従来までホストOSに常駐していたvmnet等の各種関連プロセスが、GUIクライアントの起動時のみにプロセッシングされるべくした変更を適用(GUIクライアントの終了と共に関連プロセスも終了。「VMware Fusion Helper」「VMware Fusion Start Menu」は常駐)。この変更は、ホストシステムの起動、或いはシャットダウンプロセスの時間短縮、及び「VMware Fusion」非使用時におけるメモリ使用量の低減等に貢献する。一方でヘッドレスモードの利用には一定の制限が付く
- Windows 7/Vista(何れもゲストOS)において、HDオーディオデバイスを利用可能に(Windowsで提供される最新のサウンドドライバを利用し、高負荷状況下においてもハイクオリティなサウンドを生成可能)
- Bluetoothデバイスの共有。最新の仮想ハードウェアバージョン(Ver.8)が適用された仮想マシンにて、Bluetoothフォン等のデバイスをMac OS X(ホストOS)、或いはWindows(ゲストOS)の何れかとペアリング可能に(現時点ではヘッドフォン等のオーディオデバイス、或いはキーボード、マウス等のインプットデバイスのゲストOSとのペアリングは非推奨)
- 仮想マシンに対するリンクステートプロパゲーション。NATベースの共有ネットワーク使用時に、ネットワーク間の移動時においてもアプリケーションがシームレスに通信可能に(例えばワイヤードネットワーク環境からワイヤレスネットワーク環境にホストシステムを移動した場合にも、アプリケーション間の通信はシームレスに継続される)
- 3Dグラフィックスを含むグラフィックス関連の改善。グラフィックスのレンダリングにおける正確性の改善、及びグラフィックスドライバのチューニング(Windowsビデオドライバをアップデート)
- ゲストOS内のデータ保護等を主目的として仮想マシンを暗号化可能に(「Other」>「Encryption」)。セキュリティオプションの一つとして実装され、当該環境に構築されている任意のVMware仮想ディスク(vmdk)を必要に応じて暗号化する事により、認証されていないユーザによるアクセス等から仮想マシンをプロテクト可能に。暗号化に際しては、標準規格の共通鍵暗号方式「AES-128(Advanced Encryption Standard 128)」が使用され、仮想マシンのパワーオン時にはパスワードが要求される(暗号化は仮想マシン毎に適用可能)
- サポート対象オペレーティングシステムの追加。「CentOS 6.0」「Debian 6.0」「FreeBSD 8.2」「Mandriva 2010」「openSUSE 11.4」「SUSE Linux 11 Service Pack 1」「RHEL 6.0」「VMware ESXi 5」をゲストOSとしてサポート
- 「Virtual Machine Library」を含むユーザインターフェイス関連の全般的なリデザイン。各種のインターフェイスエレメントを最小限に保つ事により、仮想環境によって齎される生産性、及びデスクトップエクスペリエンスにおける全般的な一貫性、調和性等を改善
- 関連オプションや設定等を伴うシングルウインドウを基本としたインターフェイスを採用し、仮想マシンにおける種々のユーザエクスペリエンス等を最適化。新たに実装された折り畳み可能なツールバーコンポーネントを通じて、ネットワークの切り替え、各種デバイスの接続(接続解除)、及び共有オプションを含む種々のアクションに対するクイックアクセスを提供
- スナップショットビューア(スナップショットマネージャ)の刷新。Appleによる「Time Machine」ライクなタイムラインベースのインターフェイスを採用
- ホストOS、ゲストOS間におけるシームレスな統合。ホストOSにおけるアプリケーションメニュー、及びメタデータ検索「Spotlight」に対してゲストOSアプリケーションを追加可能に
- 「Unity」モードにおいて、より高解像度なアプリケーションアイコンが使用されるべくした改善を適用
- Mac OS X(ホストOS)「Dock」、及びアプリケーションスイッチャにおけるWindows(ゲストOS)アプリケーションのアピアランスを改善
- 仮想マシンにおけるパワーオペレーションとして、GUIコンソールを通じてポーズを実行可能に(当該時点におけるメモリテータスを保持しつつ、仮想マシンを一時停止可能)。「vmware-vmx」プロセスをメモリに保持しつつ、CPU使用率を1〜2%程度に保つポーズステートは、システムリソースが一時的に負荷を強いられると想定される場合、或いは仮想マシンが直ちには必要とされない場合等に有用(従来まではコマンドラインユーティリティ「vmrun」、sshクライアント「PMRC(Poor (wo)Man's Remote Control)」、或いは自動化アシスタント「Automator」のアクション等によって利用可能となっていた機能をGUIコンソールから実行可能に)
- 主としてMacBook Airを対象として、Remote CD、及びDVDドライブをサポート(ゲストOSのインストール時等に使用可能)
- 仮想ディスクのクリーンアップ機能の改善。事前にスナップショットノードを削除する事なく、スナップショットを含むVMware仮想ディスクを収縮可能に。この改善により、旧版よりも容易に仮想マシンのメンテナンス、及びディスクスペースのリクレイムを許容(セッティングエディタにおける「System Settings」>「General」セクション)
- ゲストOS拡張機能「VMware Tools」のインストール、及びアップデートプロセスを容易にすべくして、新たに「VMware Update Agent」を導入。通常、Windows(ゲストOS)に対する「VMware Tools」のインストレーションは「Easy Install」、或いは「Virtual Machine」>「Install Tools」を実行する事によって行われる。これらのオペレーションでは、仮想CD/DVDドライブに「Windows.iso」イメージがマウントされ、同梱されている「setup.exe」が実行されるが、当バージョンでは「Windows.iso」の代わりに「windows-agent.iso」がインストールされる事となる。仮に、「VMware Update Agent」が「VMware Tools」のインストールに失敗した場合には、当該ビルドに同梱されている従来までのisoイメージを用いて、手動でインストールする事も可能
- 「Settings」パネルにおけるアピアランス、及びラベルを微調整
- 新たなシームレス仮想マシン。Windows(ゲストOS)アプリケーションが、デフォルトにてMac OS X(ホストOS)におけるアプリケーションフォルダに表示されるべくした変更を適用
- Ver.2.0より実装されていたファイルシステムドライバ「MacFUSE(Mac Filesystem in Userspace)」を除去
- Ver.3.1よりインストーラにバンドルされ、カスタムインストールにてインストール可能となっていたO2V(OVF to VMX)/V2O(VMX to OVF)コンバートツール(コマンドラインユーティリティ)「VMware OVF Tool」を除去。同ツールはVMwareによる公式ダウンロードページを通じてMac OS X、Windows、Linuxを対象としたバイナリパッケージが入手可能(現時点において「2.1.0 Build 467744」が入手可能)
- And many others...
↑「VMware Fusion 4」における仮想ハードウェアのバージョン設定(クリックで拡大します)
↑「VMware Fusion 4」における仮想マシンの暗号化(クリックで拡大します)
↑「VMware Fusion 4」における「Virtual Machine Library」(クリックで拡大します)
↑「VMware Fusion 4」におけるスナップショットビューア(クリックで拡大します)
上記リストにも示しましたように、Ver.4.0では新規仮想マシン作成時におけるデフォルトの仮想ハードウェアのバージョンが「8」にアップグレードされていますが、このバージョンが適用された仮想マシンは旧版の「VMware Fusion」とは互換性がありません。特に旧版で作成した仮想マシンをアップグレードする場合には御注意下さい。尚、各仮想ハードウェアバージョンにおける互換性は以下の通りとなります。
- Ver.8→「VMware Fusion 4.0」以降
- Ver.7→「VMware Fusion 2.0」以降
- Ver.6→「VMware Fusion 1.0」以降
尚、Ver.4.0におけるシステム要件は、64bitプロセッサを搭載したApple製コンピュータ、ホストOSは「Mac OS X 10.6.3」以降(「Mac OS X 10.6.7」以降を推奨。「OS X Lion」を含む)となっています。Ver.3.1にてサポートされていた32bitプロセッサ(Intel Core Duo/Core Solo搭載機種)、及び「Mac OS X 10.5.8」は対象外となりますので御注意下さい。
↑「VMware Fusion 4」+「Ubuntu 11.04(Natty Narwhal)」(クリックで拡大します)