先月下旬にリリースされた「VMware Fusion 3」では、有力なType 2 ハイパーバイザの一つして仮想化エンジンに対して種々の機能強化等が行われていますが、その中でも今回は、ゲストOSに対して複数の仮想コアを割り当て可能な「Virtual SMP(Virtual Symmetric Multiprocessing、仮想対称型マルチプロセッシング)」における実装形態の変更に着目し、その概要等を簡単に纏めてみたいと思います。
Mac OS Xベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Fusion」における「Virtual SMP」はVer.1.0において最大2コア(2way)、Ver.2.0以降において最大4コア(4way)の対称型マルチプロセッシングに各々対応していますが、Ver.2.0までは(「2.0.6 Build 196839」の段階において)各コアが独立したCPUソケットをエミュレート(シングルコアのクアッド(デュアル)CPUをエミュレート)していたため、最大2ソケットのサポートに止まるWindows Vista/XP等をゲストOSとして利用した際には、最大2コアの「Virtual SMP」の利用に限定されていました(Vista Home Premium/Vista Home Basic/XP Home等は1コアに限定)。
しかしながら、米国時間10月27日付にてリリースされたアップグレード相当のVer.3.0より、「Parallels Desktop for Mac」「Sun VirtualBox」等と同様にマルチコアCPUをエミュレートする事が可能となっているため、デュアルCPU以上(複数の物理CPU)をサポートしていないゲストOS(Windows Vista Home Premium/Vista Home Basic/XP Home等)においても複数の仮想コアを利用する事が可能となっています。
↑「VMware Fusion 3.0」における「Virtual SMP」の実装。マルチコアCPUをエミュレートする事が可能となっているため、「Windows XP Home Edition」においても複数の仮想コアを利用する事が可能となっています(クリックで拡大します)
尚、Windows/Linuxベースのデスクトップ仮想化ソフトウェア「VMware Workstation」における「Virtual SMP」の実装は、米国時間10月27日付にてリリースされたアップグレード相当のVer.7.0より実装形態が変更されており、4コア(4way)を最大として、エミュレートするプロセッサ数、及びコア数をGUIを通じて任意に指定する事が可能となっています(1基のクアッドコアプロセッサ、2基のデュアルコアプロセッサ、4基のシングルコアプロセッサ等)。
※以降は現時点(「VMware Workstation 7.0 Build 203739」「VMware Fusion 3.0 Build 204229」の段階)における仕様ではありますが、仮想マシンにおけるゲストOSのタイプとして「Windows 7」を選択し、且つ当該仮想マシンに対して2基の仮想コアを割り当てた際の「Virtual SMP」は2基のシングルコアプロセッサにて構成される事となり、この場合にはWindows 7 Home Premium/Home Basic/Starter Edition(何れもゲストOS)において複数の仮想コアを認識する事ができません。前記の環境において複数の仮想コアを認識させるためには、「VMware Workstation」においてはセッティングエディタを通じたGUIにて、「VMware Fusion」においてはテキストエディタ、或いはGUIコンフィギュレーションエディタ「VMX Extras」等を用いて仮想マシンバンドルに含まれる構成ファイル(.vmx)を編集する必要があります。
追記
米国時間2009年12月10日付にてリリースされた「VMware Fusion 3.0.1 Build 215242」において上記の仕様が変更され、同バージョンよりWindows 7 Home Premium/Home Basic/Starter Edition(何れもゲストOS)においてもデフォルトにて複数の仮想コアを認識する事が可能となっています(仮想マシンにおけるゲストOSのタイプとして「Windows 7」を選択し、且つ当該仮想マシンに対して2基の仮想コアを割り当てた際のデフォルトにて、単一のデュアルコアプロセッサとして構成される事となります)。