エン・ジャパンが人事担当者を対象に実施した調査で、5社に1社が「静かな退職」状態の社員がいると回答していることが分かった。特に従業員300名以上の企業では、90%以上が該当する社員が「いる」もしくは「いる可能性がある」と答えており、企業規模が大きいほど問題を深刻に捉えている実態が浮き彫りになった。
静かな退職とは、仕事への熱意が薄れた従業員が必要最低限の業務にしか携わらない状態を指す。近年注目を集めている労働問題の一つだ。
調査では、まず「静かな退職」という言葉の認知度を確認した。この概念について「知っている」と答えた企業は52%で、このうち内容も含めて理解しているのは31%、名称だけ知っているのは21%だった。
企業規模別に見ると、従業員1000名以上の大企業では53%が「内容も含めて知っている」と回答し、認知度の高さを示した。一方、従業員1~9名の小規模企業では18%にとどまり、企業規模による認知度の差が顕著に表れている。
静かな退職状態の社員がいると回答した企業に、該当する社員の特徴を尋ねたところ、年代では「40代」が48%で最多となった。30代と50代もそれぞれ45%、47%と高い割合を示しており、中堅からベテラン層に多く見られる傾向が明らかになった。
役職・クラス別では「一般社員クラス」が84%を占め、圧倒的に多い結果となった。チーフ・リーダークラスが36%、マネージャー・管理職クラスが14%と続いた。
年収帯では「400万円~599万円」が70%で最多。「600万円~899万円」が55%で続いた。399万円以下は20%にとどまり、一定の収入水準に達した層で静かな退職が起きやすい実態が浮かび上がった。
職種別では「バックオフィス職(経理・総務・人事他)」が26%で最も多く、「営業職(新規開拓・代理店・ルートセールス他)」が22%、「アシスタント職(一般事務・受付他)」が20%と続いた。
静かな退職状態の社員が「いる」「いる可能性がある」と回答した企業に、静かな退職状態になってしまった要因に心当たりがあるかを問うと、「プライベート重視になってしまったから」(30%)で最多となった。「特にない・わからない」が26%、「ある程度の出世・昇給に満足してしまったから」が25%で続いた。
静かな退職状態の社員がいる状況に対して今後どのような対応を考えているか問うと、「給与体系の見直し」と「特に何もせず状況を見る」がそれぞれ32%で同率トップとなった。積極的な改善策を検討する企業がある一方で、様子見を決め込む企業も多く、対応が二極化している状況が見て取れる。
給与体系の見直しを検討する企業からは「改善が見られない場合、他の活躍してくれている従業員にもっと還元すべき」「評価を給与に反映する設計に見直す」といった声が寄せられた。
一方、何もしない企業からは「一度労務問題に発展したことがある」「静かな退職状態の管理職が年配のため、誰も何も言えない」といった理由が挙げられ、対応の難しさを物語っている。
調査では、静かな退職状態の社員による周囲への影響についても具体的なエピソードが報告された。
IT企業からは「フルリモートではないのにフルリモートをしている。チャットを送っても返事が遅い」といった勤務態度の問題が指摘された。建設関連企業では「挑戦することよりも失敗しないことを重視し、ルーティン業務しかやらない高給取りになっている」という年功序列制度の弊害を訴える声もあった。
とあるメーカーからは「言われたこと以外は全くやらなくなった。主体的に業務に関わろうとしない」、サービス業からは「働かない管理職が増え、それを見た部下達もモチベーションが上がらない」といった組織全体への影響を懸念する意見が寄せられている。
今回の調査は、エン・ジャパンが運営する人事・採用担当者向け情報サイト「人事のミカタ」上で4月8日から5月14日にかけて実施し、212社から回答を得た。静かな退職という概念が日本の企業にも浸透し始めている実態が明らかになった形で、今後の人事管理や組織運営において重要な課題となりそうだ。
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