「Galaxy Fit 3」はスマートウォッチとフィットネストラッカーの境界線上に位置する不思議なデバイスだ。その絶妙なサイズ感と必要最低限のスマート機能は、どちらとも分類しにくい。けれど数週間使い続けてみると、このシンプルで飾り気のないガジェットの魅力がじわじわと伝わってきた。
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この「ハイブリッドスマートウォッチ」(私はあえてこう呼ぶことにした)の最大の魅力は価格だ。9500円で「Samsung Health」を手軽に使い倒せるのは大きな魅力だ。すでにGalaxyスマートフォンを持っているユーザーなら選ぶ価値は十分だろう。さらに、ごつさを感じさせず、控えめながら洗練された外見も嬉しいポイントだ。
多種多様なスマートウォッチが目まぐるしく競い合い、多機能さをアピールする中で、Fit 3の飾り気のない魅力と価格の手頃さは新鮮だ。高級路線のGalaxy Watch 7や、競合のOnePlus Watch 3よりも大幅に安く手に入るのだからなおさらだ。
約3週間使い続けて、このコストパフォーマンスとバッテリー性能には十分納得できた。ただ、それでもほとんどのユーザーには、もう少し予算を出して「Amazfit Bip 6」をおすすめする気持ちも残っている。
初めてGalaxy Fit 3を見たとき、1.6インチ(40mm)の鮮やかなAMOLEDスクリーンは、フルサイズのスマートウォッチと見間違えるほどの存在感があった。一般的なトラッカーの枠に収まらない、角を丸く整えられたアルミフレームのカラー展開は、今回レビューしたローズゴールドのほか、シルバーとダークグレーの計3色だ。
しかし、よく見ればこのデバイスが真の「ハイブリッド」であることが伝わってくる。スクリーンは他のスマートウォッチ(Amazfit Bip 6やApple Watchなど)より細身で、情報表示の幅が狭まるという制約が生まれるが、それがむしろシンプルさにつながる。また、ボタン類は極めてシンプルで、物理ボタンは1つだけ。回転ベゼルやクラウンなどは非搭載だ。
Galaxy Fit 3が真価を発揮するのはバッテリー性能だ。常時表示をオンにし、スマホの通知を完全にミラーリング、睡眠計測を毎晩実施し、さらに日々のワークアウトを欠かさないようなハードな使い方でも、丸3日間持ちこたえた。常時表示を控えれば、メーカーがうたう最大13日の駆動にもかなり近づくだろう。
これほど長時間の駆動が可能なのは、スクリーンが小型なうえ、機能豊富で重めなWear OSではなく、非常に軽快なOSで動いているおかげだ。同じサムスン製でもGalaxy Watchシリーズでは2日持たずにバッテリー切れになることが珍しくないため、本機の方が日常使いと睡眠トラッキングをストレスなく両立できることは明白だ。さらに充電速度も素晴らしく、満充電まで約1時間強しかかからないのも魅力だ。
Fit 3を「本格的なスマートウォッチ」と呼べない一番の理由は、スマート機能が徹底的に削ぎ落とされているからだ。「Galaxy S25 Plus」とペアリングしても、音声入力やモバイル決済が使えない。他社のAndroid端末でも動作はするが、その場合、カメラのリモート操作やアラームの同期といった便利機能まで失ってしまう。
もう一つ個人的に残念だったのがモバイル決済の非対応だ。Fit 3にはNFCが搭載されていないため、手首をかざしてのスマートな支払いはできない。
また、アプリの選択肢が非常に限られる点も特徴的だ。普段愛用しているRokuのTVリモコンやSpotifyといったサードパーティ製アプリをFit 3で使うことは諦めるしかない。基本機能として残されたのは、アラーム、計算機、天気予報、Galaxy端末用のカメラリモコン、そして「Samsung Health」だ。とりわけSamsung Healthこそ、Fit 3を選ぶ際の最大の魅力と言っても過言ではない。
まず気になる欠点からはっきりさせておくと、Galaxy Fit 3はGPSを非搭載だ。そのため正確なランニングデータを記録したければ、走る間もスマホを持ち歩かなければならない。これは私にとってかなり残念なポイントだった。
大柄なGalaxy S25 Plusを片手に走るのは決して快適とは言えず、時には30分ほどスマホの束縛から解放されたいと感じることもある。試しにスマホを家に置いて5キロ走ってみたところ、Fit 3が記録した走行距離とコースは、実際のルートから約500メートル(0.3マイル)もズレてしまった。
フィットネス機能に関して言えば、Fit 3は100種類以上のエクササイズを追跡できるうえ、ランニングやウォーキング、ローイング、エリプティカルのような運動は自動で検知して記録してくれる。ただし、この自動トラッキング機能は初期設定ではオフになっているので、設定画面でオンにするのを忘れずに。また防水性能は5ATM(50m)でIP68認定なので、泳ぎに使ってもまったく問題ない(とはいえウォータースキーのような激しい水上スポーツはNGだ)。
Fit 3の心拍測定性能を検証するために、家庭用心拍モニターの「黄金基準」ともいえるPolar製チェストストラップと比較してみた。全体の精度は概ね良好だったが、急な心拍の上昇に対しては少し遅れが出る傾向にあった。
これは手首装着型のデバイスにはよく見られる特性でもある。例えば全力疾走のピーク心拍数に到達した際、Fit 3はチェストストラップの測定値より2~5拍ほど低く表示され、実際に追いつくまで数秒ほどタイムラグが生じた。ただ、ワークアウト終了後に表示される平均心拍や最大心拍といったサマリーの数値では、その差は2拍以内におさまっており、十分実用的な範囲だと感じた。
Fit 3は、心拍数が高すぎたり低すぎたりしたときに警告を出す機能を備えているが、心電図(ECG)測定には非対応だ。一方でストレスレベルのモニタリングや血中酸素濃度の測定は可能で、さらに「転倒検知機能」まで備わっている。同機能は激しい転倒を感知すると、ペアリングしているスマートフォンを通じて自動的に緊急通報サービスに連絡する。さらに、側面のボタンを5回連続で押せば、自分でSOS通報を発信することもできる。
睡眠トラッキングに関しては、Fit 3はサムスンのフラッグシップGalaxy Watchシリーズと肩を並べるほどの性能を誇っている。睡眠の深さやサイクルを詳細に分析するだけでなく、Galaxyスマホのマイクを活用して、いびきの状況まで検出できる。
7晩分の睡眠データが溜まると、自分専用の睡眠改善アドバイスが提供される仕組みだが、今回のテスト期間中には残念ながらその段階には至らなかった。毎朝表示される睡眠スコアは、その日の調子と一致することが理想だが、実際には6時間半しか眠れなかった夜にも91点(評価は「優秀」)が出るなど、やや疑問を感じることもあった。
Galaxy Fit 3は、その機能やデザインで他人を驚かせるタイプのデバイスではないが、価格に関しては人の目を引く魅力を持っている。たった60ドルでGalaxyスマホユーザーが同じエコシステム内で健康やフィットネス管理を始められるというのは、大きな強みだ。
さらに、洗練されたデザイン、充実したヘルスケア機能、抜群のバッテリー寿命といった特徴のおかげで、サムスン端末を持っていない人でも十分購入候補に入れて良いだろう。
低価格帯のスマートウォッチ市場には他にもいくつか魅力的な選択肢が存在するが、Fit 3はシンプルで直感的な操作性を持つ、地味ながら「確実な選択肢」と呼ぶにふさわしい存在だ。
この記事は海外Ziff Davis発の 記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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