iPhoneの「Apple Intelligence」は本当に便利なのか--ITライターが本音レビュー

 iOS 18.4の提供開始により、日本語でのApple Intelligenceが利用可能となった。iPhone 16シリーズおよびiPhone 15 Proシリーズの目玉となるこのAI機能がどのように使えるのか、主要な機能をまとめてみた。

  1. Apple Intelligenceとは
  2. スマートなSiri
  3. 作文ツールで文章作成をスムーズに
  4. Image Playgroundで画像作成
  5. Safariやメールの要約
  6. 重要な通知を抜粋
  7. シームレスに統合されているが未だ発展途上
  8. 総評

Apple Intelligenceとは

 Apple IntelligenceはiOS/iPadOS/macOSに組み込まれたパーソナルアシスタントだ。生成AIモデル(大規模言語・画像モデル)を活用し、ユーザーの個人的な文脈を理解して応答する点に従来のSiriなどとは異なる特色がある。iPhoneでの対応機種は、iPhone 15 ProシリーズとiPhone 16シリーズの全機種(Plus/Pro/Pro Max/16e)だ。

Apple Intelligence Apple Intelligence
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 AI処理はオンデバイスでの処理とクラウドの処理を組み合わせる構成となっている。音声認識や簡単な処理はスマホ上で行い、複雑な質問に対してはサーバ側のモデルが応答し、処理後の結果だけが端末に返される仕組みだ。

 クラウド上の処理はAppleの専用サーバー上に構築された大型モデル(プライベートクラウドコンピュート)で行うが、その処理内容は匿名化されており、Apple自身もその内容を覗き見ることができないなど、プライバシーにも配慮されている。

 また、Apple IntelligenceではChatGPTとも連携している。例えばSiriに複雑な質問をするとき、ChatGPTに連携して回答を返すことができるようになっている。

 以下では、Apple Intelligenceの具体的な使い方を見ていこう。

スマートなSiri

 音声アシスタントSiriは、Apple Intelligenceに組み込まれたことで、より複雑な応答を返せるようになった。

 たとえば、「向こう一週間の東京都の天気を教えてください」といった質問に対して、明確な天気予報を提示できる。また、「コツメカワウソとユーラシアカワウソの生態の違いを教えてください」といった専門的な質問についても、ChatGPTと連携して生息地や体の大きさなどのポイントを明確に整理した回答を返してくれる。

 一方で、「キャンプ場を3つ挙げて予約状況も確認してください」といった、地図アプリや予約サイトなど複数のアプリをまたいでの詳細な情報連携が求められる質問に対しては、マップでキャンプ場の候補地提示までにとどまった。

Visual Intelligence Visual Intelligence
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 新しいSiriは以前より賢くなったものの、期待していたほどのシームレスな連携はまだ実現できていない印象だ。ChatGPTと連携した応答は便利だが、複数のアプリを横断して情報を取得し処理するような複雑なタスクはまだ難しいようだ。Appleが宣伝するようなスマートさには至っていないのが現状だ。

作文ツールで文章作成をスムーズに

 筆者が最も感動したのが「作文ツール」だ。単なる文章校正や装飾にとどまらず、「情報の整理」「視覚的構造化」「文脈に応じた最適化」まで一括で手助けする総合的な文章アシスタントだ。特に箇条書きを表に変換する機能は驚くほど便利で、情報を整理する手間が大幅に削減される。

 メールやメモ、SNSなどあらゆる場所から起動可能。多くのシーンではテキストを選択して表示するコンテキストメニューから起動できるが、メモアプリなどでは画面上に作文ツールのアイコンが設置されている。

 作文ツールには、要約やリライト、ゼロからの文章作成といった機能が詰め込まれている。

 分かりやすいところでは、作成中のメールのリライトだ。テキストを選択して作文ツールを開き、「フォーマル」のボタンを押すだけで、より丁寧でかしこまったメールが書ける。

作文ツール 作文ツール
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 文体の変換のバリエーションは多彩で、表形式への文体変換も可能だ。例えば「コウテイペンギンとオウサマペンギン」という箇条書きの文章を作成したときに、作文ツールの「表」ボタンを選択すると2種の違いを示した表に一発で変換できる。

 さらに、白紙から文章を生成することも可能だ。ChatGPTと連携して、ユーザーが与えた数語のキーワードやプロンプトをもとに、挨拶文、報告書、提案書、説明文などを生成できるのも便利だ。

 また、作文ツールに「ChatGPT」との連携機能がさりげなく組み込まれているのも素晴らしい。特にメモアプリでの活用は秀逸で、音声入力と組み合わせることで、思考を整理しながら文章を作成できる。初期段階ではメモアプリが最も使いこなせるが、Twitterなどの入力画面からコンテキストメニューで開ける仕様は、意外と気づきにくいかもしれない。

作文ツールとSiriが連携 作文ツールとSiriが連携
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 ビジネスでもプライベートでも、「ちょっと言葉に迷う」と感じたときに頼りになる存在だ。

Image Playgroundで画像作成

 Apple Intelligenceはいくつかの画像生成ツールを備えている。プロンプト(指示文)を入れて画像を生成する「Image Playground」はOSに組み込まれていて、例えばメモアプリでファイルを添付するボタンを押したときなどに起動できる。

Image Playground Image Playground
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 具体的には、短いプロンプトを入れると画像が生成されるというもので、かわいらしい動物の画像などは数秒で作成できる。アニメ風、スケッチ風、イラスト風という3つの絵柄も指定できる。

 一方でいくつか制約があるようで、たとえば人物については後ろ姿でも作成できない。「コツメカワウソの親子」という指示も人物と判断されて画像作成がされなかった。また、「日本アニメ風に」という指示についても受け入れられないなど、制約が厳しめな印象だ。

 また、オリジナルの絵文字を作成する「ジェン文字」という機能もある。メモやメール、メッセージなどApple純正のアプリを開いて、絵文字キーボードから起動できる。「みかんをかじるカワウソ」や「踊る宇宙人」のようなありそうでない絵文字が作成できる。人物の画像を元にイラスト化したジェン文字も作成可能だ。ただ、この機能は対応アプリが限られており、せいぜいメモアプリ内にとどめておくか、メッセージアプリでステッカーとして送信するか程度の使い道しかない。

 Image Playgroundは専用アプリがあるのかと思いきや、メモアプリの画像添付から起動するという分かりにくい導線が残念だ。生成される画像も欧米的な雰囲気が強く、「アニメ風」と指定してもアメリカナイズされた絵柄になる印象がある。これは韓国のGalaxy製品が韓国風の絵柄を生成するのと同様、お国柄が出る部分だろう。ジェン文字については、日本ではiMessageの普及率が低く、LINEやDiscordなど他のアプリでは使えないため、実用性に乏しい印象だ。せっかく楽しい機能なのに、コピペでも使えないのは残念である。

Safariやメールの要約

 生成AIが得意とする「要約」は、Webブラウザーやメールアプリに組み込まれた。Safariではリーダー機能に要約ボタンが追加されており、長文のWeb記事でも要旨を200字程度にまとめることができる。メールも100文字程度で要旨を把握できる。

 メールアプリの新着メール一覧画面にも要約機能が組み込まれており、メッセージの要点を1文で把握できるようになっている。

 実際に使ってみたところ、たしかに便利だが、文章の長さを調整できないのが惜しい。取材レポートなどの長文を200字で要約するのは物足りなく感じる。また、要約後にさらに質問できる機能があればより実用的になるだろう。この機能こそChatGPTとの連携があると良いのではないかと思う。

重要な通知を抜粋

 Apple Intelligenceでは、通知のフィルタリング機能も実装された。設定アプリの「集中モード」の中にある「さまたげ低減」という設定をオンにすると利用できる。

 スマホに届く多数の通知の中から、重要な通知だけを絞りこんで表示するように設定できる。

 この機能は日々の通知疲れを解消する可能性を秘めている。実際に使ってみると、AIが学習して徐々に重要度の判断精度が上がっていくようだ。特に仕事中に個人的な通知をフィルタリングしてくれるのは助かる。

シームレスに統合されているが未だ発展途上

 Apple Intelligenceはまさに同社が発表会で掲げた「AI for the Rest of Us(残された人のためのAI)」という理念を体現している。OSに深く統合されたAI機能は、生成AIに馴染みのないユーザーでも意識せずに活用できるよう工夫されている点が特徴的だ。文章作成支援や要約機能は日常的なタスクにシームレスに溶け込み、ユーザーの負担を軽減する実用性を備えている。

 しかし現状では、Siriの高度な連携はChatGPTとの組み合わせを除けば期待通りに動作しない場面も多く、ジェン文字のような機能は技術的には興味深いものの用途が限定的であるなど、使い勝手として不十分な側面も目立つ。画像生成も制約が厳しく、実用的な活用シーンはまだ模索段階といえる。

 プライバシーを重視したオンデバイス処理の組み合わせという設計思想は評価できるが、全体としてApple Intelligenceはベータ版という位置づけ通りの発展途上感は否めない。先進的なAI機能を一般ユーザーにも使いやすく提供するというビジョンの完全な実現には、これから数年をかけた継続的な改善が必要だろう。

総評

 Apple Intelligenceは多機能すぎてどこからどう使えばいいのか分かりにくい面もあるが、作文ツールや要約機能など、実用的な機能も多い。特に作文ツールはメモや文書作成において本当に便利で、これだけでも価値がある。一方で、画像生成やジェン文字といった機能は「お遊び」の域を出ていない印象だ。

 将来性は感じるものの、現状では「ベータ版の発展途上のAI」という印象が強い。ただ、プライバシーを重視した設計思想は、個人情報に敏感なユーザーにとって大きな安心感をもたらしてくれるだろう。

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