Appleの製品発表イベントが米国太平洋時間9月12日午前10時(日本時間13日午前2時)に開催される。すなわち、うわさの「Apple Watch Series 9」がまもなく発表されるかもしれないということだ。Series 9がこれまでのモデルと同じパターンを踏襲するなら、最小限の変更が施される控え目なアップグレードになる可能性が高い。
だが、Appleがその次期フラッグシップスマートウォッチをさらに進化させる方法はたくさんある。
筆者が何よりも期待しているのは、Series 9が、より高価な799ドル(日本では12万4800円)の「Apple Watch Ultra」から、より長いバッテリー持続時間や便利な「アクション」ボタンといった、いくつかの機能を継承することだ。これらの機能は、アスリートではないユーザーにも有用なので、スポーツにフォーカスしたApple Watch Ultraだけでなく、標準のApple Watchにも搭載されるべきだと思う。
Appleは通常、9月に「iPhone」の新型モデルとともに新しいスマートウォッチをリリースする。つまり、もう少しだけ待てば、Appleの次期製品群の詳細が明らかになる可能性が高い。Bloombergの報道によると、Apple Watch Series 9には新しいチップが搭載され、新たなカラーバリエーションが提供される可能性がある一方で、おそらく2024年に、標準のApple Watchに大規模なアップグレードが施される計画があるという。
Apple Watch最大の欠点はバッテリー持続時間だ。それは、Appleだけの問題ではなく、Googleの「Pixel Watch」やサムスンの「Galaxy Watch6」など、ライバルの「Android」搭載スマートウォッチのバッテリーも、1回の充電で1日強しか持たない。筆者が着用している「Apple Watch Series 8」は通常、一昼夜使用すると、翌日午後の早い時間にバッテリーが切れる。
睡眠の追跡に関心がなく、夜間にスマートウォッチを充電するつもりなのであれば、このバッテリー持続時間で十分だろう。だが、睡眠を記録したいのなら、次の日の朝にApple Watchを充電する時間を確保しなければならない。Appleはこの数年の間に、充電時間の短縮や2022年に導入された「低電力モード」など、バッテリー持続時間に関する改良をいくつか施している。
しかし、Ultraモデルの方がバッテリー持続時間が長いことは間違いない。筆者の経験では、Apple Watch Ultraはおよそ2~3日間持続した。2022年にApple Watch Ultraをレビューした同僚のLexy Savvides記者によると、ワークアウト機能やGPS機能を使用するとバッテリーの減りが早くなるものの、ほぼ丸2日持続するという。
Ultraを見ると分かるように、Apple Watchのバッテリー持続時間を延ばせることをAppleはすでに証明している。今こそ、標準のApple Watchでも、Ultraと同等のバッテリー持続時間を享受できるようにすべきだ。
筆者は自分のことをアスリートだと思っていないので、Apple Watch Ultraの高度な機能は自分には不要だと思っていた。だが、Ultraには、筆者の心に響いた機能が1つある。それがアクションボタンだ。
初代モデルの発売以来、AppleがApple Watchの操作方法を大幅にアップデートしたのは、これが初めてだ。アクションボタンは、特定の機能をすばやく起動するよう設定することが可能で、例えば、ワークアウトを開始、ストップウォッチを実行、「バックトレース」などのナビゲーション機能を起動、本体の画面をフラッシュライト(懐中電灯)として使用、といった動作をすぐに呼び出せるように設定できる。
このようなちょっとした便利機能のおかげで、アプリの切り替えがはるかに容易になる。アクションボタンが標準のApple Watchにも搭載されるべきだと考えるのは、そのためだ。より長く持続するバッテリーと同じように、アクションボタンも、スポーツウォッチの機能性としてだけでなく、Apple Watchの全体的な有用性を高めてくれる。より大きな画面、より耐久性の高いデザイン、水深計など、Apple Watch Ultraを標準のApple Watchと差別化する方法は他にもたくさんある。
Apple Watch Series 8とApple Watch Ultraは、Appleが初めて皮膚温センサーを搭載したスマートウォッチだ。この2モデルでは、夜間の手首の温度を測定でき、同社はそのデータを使用して、過去の排卵日を推定したり、月経予測の精度を高めたりしている。
だが、Apple Watchの周期記録機能を使用しない場合、皮膚温センサーには、それ以外の用途がほとんどない。Appleの「ヘルスケア」アプリでは、皮膚温の変動を確認できるが、そのデータを有効に活用する方法がない。Appleが皮膚温の変化と他のデータポイントを組み合わせて、OuraのコンディションスコアやFitbitのエナジースコアと同じように、装着者の体がどの程度休息できているかなど、より多くの情報を提供してくれることを期待している。
このようなアップデートには、必ずしも新しいハードウェアが必要なわけではない。Appleはソフトウェアのアップデートによって、皮膚温センサーを活用する機能を追加することもできるかもしれない。
Apple Watchのような小型のディスプレイでは、画面スペースの使い方が極めて重要になる。そのため、筆者は、常時表示機能のアップデートや新しい文字盤を通して、Apple Watchの画面の有用性を高める新たな方法をAppleが考え出してくれることを期待している。ディスプレイの有効活用に関して言えば、Appleはこの数年の間に、例えば「iOS 17」の「Dynamic Island」や「スタンバイ」モードなどの機能を通して、「iPhone」に多くの改善を施している。そのアプローチを、Apple WatchでもSeries 9から採用すべきだ。
同社が次期Apple Watchを正式に発表するまで、詳細を知ることはできない。だが、Appleがそのディスプレイを新たな次元に引き上げる方法は、いくつか想像できる。例えば、常時表示ディスプレイは、Appleが2019年に「Apple Watch Series 5」で導入して以来、あまり変わっていない。現状の常時表示ディスプレイでも便利だが、Appleがバッテリー持続時間に影響を及ぼすことなく、さらに多くのデータを常時表示する方法を見つけられれば、本当に素晴らしい。
装着者が手首を下ろしているとき、Apple Watchはバッテリーを節約するために、文字盤の特定の機能を制限する。例えば、ライブデータを表示するコンプリケーションは非アクティブになり、タイマーやストップウォッチなどの時計関連のコンプリケーションは、毎秒更新しなくてもいいように、1分単位の情報表示に切り替わる。Appleのプロセッサーとディスプレイ技術の進歩によって、今後は常時表示モードで実行できることが増えていくかもしれないが、それは現時点では単なる推測に過ぎない。
2022年のアップデートでは、Apple Watchのパフォーマンスはそれほど向上しなかった。したがって、AppleにはSeries 9でより大きなインパクトを与えるチャンスがある。Series 8の場合、アプリの起動、ワークアウトの開始、ホーム画面に戻るなどの基本的な操作に関しては、すでに十分な速度を備えている。
だが、Apple Watchのディスプレイは他のデバイスに比べて非常に小さいため、操作は可能な限り機敏かつ滑らかでなければならない。それを考えると、Apple Watchのようなデバイスには、常にパフォーマンス改善の余地があると思う。「watchOS 10」でウィジェットなどの新機能が追加されることを考えると、なおさらだ。
2022年のApple Watch Ultraの登場を除けば、Apple Watchのこの数年の改善は、小規模なものにとどまっている。これは必ずしも批判ではなく、Apple Watchが成熟したというだけのことだ。スマートフォンと同様、スマートウォッチでも、毎年のアップグレードのインパクトは、以前ほど大きなものではなくなっている。心拍数センサー、GPSの内蔵、セルラー接続など、かつてはプレミアムと考えられていた機能が現在では当たり前になっているからだ。そのため、新しいデバイスを際立たせることがより難しくなっている。
だが、Appleには、バッテリー持続時間などの欠点に対処しつつ、ヘルストラッキングを含むApple Watchの既存の得意分野を伸ばせる可能性がある。同社がApple Watch Series 9で、そうしたアプローチをとってくれることを期待している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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