2022年のベストガジェットは手回しハンドル付きゲーム機

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年12月30日 07時30分

 2022年の記憶はあいまいだ。個人的には外出の機会が増えた。はからずも病院に行くことも多かった。記憶に残るガジェットは、例年よりも少ない。今年は新型の「iPad」やノートPC、スマートフォン、スマートウォッチ、さらにはVRヘッドセットまで登場したが、心に深く響いたものはと言われると、何も思い当たらない。2022年に登場したガジェットの中に、2021年以前に登場したガジェットから筆者の関心を奪うものはなかった。

PanicのPlaydate
提供:Scott Stein/CNET

 とは言ったものの、実は筆者のポケットの中には、どこに行くにも必ず持ち歩いている、小さな黄色い物体がある。クランク(手回しハンドル)の付いた、この小さな物体は、たわいもなく、特に役立つわけでもないが、ついついいじってしまう魅力と癒やしにあふれている。

 Panicの「Playdate」は、2022年の筆者のお気に入りガジェット、いや、それ以上のものだ。筆者には、外出する際に必ず持っていく「標準セット」がある。ノートPC、おそらくはiPad、スマートフォン、「Nintendo Switch」、場合によっては「Kindle」。ここにPlaydateが加わった。出かけるときはいつもポケットに忍ばせ、手持ち無沙汰のときはクランクをくるくると回して、ちょっとしたゲームを楽しんでいる。

 Playdateは、変わり種の極小携帯ゲーム機だ。突然変異の「ゲームボーイ」、現代版の「ゲーム&ウオッチ」と言ってもいい。主流からは外れた、プロトタイプのようなインディーゲーム機である。Playdateで遊べるのは、巷にあふれる今風のゲームではない。シーズンごとに配信されるオリジナルのインディーゲームと、itch.ioなどのサイトで開発者たちが作った各種ゲームだけだ。

 Playdateについては、春にレビュー記事を書いているが、実は今も楽しく使っている。

 筆者は子どもの頃、任天堂のゲームボーイやゲーム&ウオッチに夢中だった。いつも何かをいじっていたいタイプなので、学校に行く時は必ず小さなパズルやちょっとした手品グッズをポケットに入れていた。今も「AirPods」でいちばん気に入っているのは、マグネット内蔵の小さなフリップケースだ。Playdateのデザインは、それ自体が魅力的だ。2022年は手術を受ける機会があり、静養のために1カ月ほど仕事をセーブした。その間ずっと、この小さい相棒でインディーゲームの「Bloom」をプレイし、そのストーリー、ゲーム内の友人とのやり取り、小さなガーデンでの花いじりに没頭した。任天堂にゲームボーイやゲーム&ウオッチの新作を作ってほしいとさえ思ったが、Playdateさえあれば満足できるかもしれない。

 筆者は日常的にVRヘッドセットを使っている。小さなPlaydateは、VR世界に完全に没入できる巨大なヘッドセットの対極にあるように感じられるが、その小さいが独特の魅力で、VRとは別の意味で筆者を没入させてくれる。Playdateのデザインは、そのすべてが体験の一部だ。すべてのオリジナルゲームが、このクランク付きゲーム機の魅力を形成しているといっても過言ではない。

Playdate
提供:Scott Stein/CNET

 Playdateをきっかけに、筆者はインディーゲームへの関心を自覚し、この実験的な空間に注目するようになった。itch.ioのようなインディーゲームの配信・売買サイトは、ゲームの未来を予感させる活気にあふれた場所だ。アイデアは瞬時に共有され、広がっていく。個人的には、ゲーム機向けに大量生産される洗練されたゲームよりも、itch.ioのような新しい場所の方がわくわくする。Playdate向けにどのような実験的ゲームが登場するか、毎週の更新を楽しみにしているほどだ。

 「iPhone」の「App Store」がオープンしたときや、Oculusの「Quest」や任天堂のSwitchが発売されたときなど、新しい製品の初期にはこうした高揚感がある。筆者は新しいものがもたらす興奮の中毒になっているのかもしれない。Playdateのユニークで限られた性能は、インディーゲームの開発者たちにとってもやりがいのある挑戦となっているようだ。こうして登場したオリジナルゲームの中から、今年の筆者のお気に入りをいくつか紹介しよう。

 例えば「A Joke That's Worth 99 Cents」は、長いジョークがゆっくりと語られている間にクランクを回し、画面内に描画されたミニサイズのPlaydateのクランクを動かして、大きな尻の小人が落ちないようにするだけのゲームだ。どれだけ長い間、小人を落とさずにいられるか。このゲームは、筆者の子どもたちのお気に入りだ。

 「Crunky」は、さくっと遊べるアーケードゲーム風のサバイバルゲームだ。ゲーム&ウオッチの古い名作ゲームのように、プレーヤーが病みつきになるよう完璧にチューニングされている。

 Playdateのゲームは、アドベントカレンダーのように少しずつ配信される。シーズン1に配信されたゲームの中には、楽しくて繰り返しプレイしてしまうものがいくつもあった。サーフィンでハイスコアを目指す「Whitewater Wipeout」、円を動かす図形パズルの「Omaze」、エレベーターでペンギンを移動させる「Flipper Lifter」、絵柄を3つずつそろえていくパズルゲームの「Pick Pack Pup」、それから「Asteroids」や「Tempest」といった往年のゲームをほうふつとさせる「b360」、「Star Sled」、「Hyper Meteor」などだ。他にも、かつてゲーム&ウオッチの小さな画面で熱中したようなゲームがそろっている。

 もちろん、すべてが完璧というわけではない。そもそも、Playdateは今、買うことさえできない。次の入荷は2023年の予定だ。マルチプレイにも対応しておらず、一日中使えるわけでもない。画面が小さい上に、バックライトもなく、バッテリーの持ちも安定しないからだ。それでもPlaydateのゲームは飽きない。新しいインディーゲームが出ていないか、しょっちゅうitchを探ってしまうほどだ。何が飛び出すかわからないお楽しみ箱のようなゲーム機。このゲーム機のすべてが好きだ。

 筆者がガジェットに求めるものは、ちょっとした喜びにすぎないことがある。ツールは便利だ。よく考えられたプラットフォームは役に立つ。でも、Playdateは癒やしだ。

 今年は「退屈だが良い」製品がたくさんあった。新型のノートPC、少し進化したスマートフォンやスマートウォッチ、ヘッドホン、スマートTV。どれも悪くない。しかし、今年登場したガジェットの中で、長く記憶に残るものと言えば、このクランクで動かす小さな黄色い箱をおいてほかにないだろう。

 

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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