マスク氏は「最悪の荒らし」--テスラから投資家も顧客も離反中 - (page 2)

Ian Sherr (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年12月23日 07時30分

広まる否定的な見方

 3人のケースは決して特別ではない。調査会社YouGovによると、この2カ月で自動車購入者におけるTeslaの評判は大きく変わったという。Teslaの好感度を示すスコアは、年初に5.9%、5月には6.7%に達していたが、11月にはマイナス1.4%にまで落ち込んだとThe Wall Street Journalは報じている。しかも、これはMusk氏がFauci氏を攻撃するツイートを投稿する前の話だ。Morning Consultの調査でも、Teslaに対して否定的な見方をする人が年初よりも増えていることが分かった。

 自動車業界のデータを追跡しているS&P Global Mobilityによれば、Teslaは今も米国で最も普及しているEVブランドだという。2020年には、米国で車両登録されているEVの79%をTesla車が占めた。しかし、GM、Ford Motor Company、現代自動車(ヒョンデ)、トヨタ自動車などの主要な競合企業もEVのラインアップを拡充しているため、Teslaの割合は65%まで低下している。2025年には、EV市場におけるTeslaのシェアは20%未満に急落するとS&P Global Mobilityは予測する。

 Musk氏は10月に行われた決算発表の電話会議で、アナリストらに対し、ホリデーシーズンに向けて「旺盛な需要」を見込んでいると述べ、「当社が製造するすべての車を、見通せる限り将来にわたって販売していく」と宣言した。この発言は、TwitterのCEOに就任する直前の10月19日になされたものだ。

 しかし、Teslaのセールス担当者の見方は違う。Loganさんは2023年初めにリース期間が終了することから、すでに新車を予約していたが、この注文をキャンセルするために同社に電話をかけた。すると担当者から、注文を維持してくれれば4000ドル(約53万円)近くを払うというオファーを受けたという。Model 3は、最低4万6990ドル(税制上の優遇措置やその他の値引きを除く。日本では596万円)もする高級セダンだ。

 Teslaは12月、年内に新型「Model 3」または「Model Y」の納車を希望する人には、希望小売価格から3750ドル(約49万円)を値引きし、かつ1.6万km分のスーパーチャージを無料で付けるという特典を公式ウェブサイトに掲示した。これは、Loganさんが提示されたオファーとほぼ同じ内容だ。

 Heatherさんは、馬力のあるマッスルカーが好きだ。Musk氏がTwitterを買収した頃、Teslaから電話が入り、Model Sのリースを続けるか、別の車に乗り換えるかを尋ねられたという。Musk氏の行動に嫌気が差していると伝えると、担当者は「Musk氏は会社全体を代表しているわけではない」と、CEOとの距離を置こうとしたという。

 その後、しばらくしてセールス担当者から再び電話がかかってきた。Heatherさんは「状況は悪くなる一方だ」と伝えた。以前はTwitterを定期的に使っていたが、競合するSNS「Post」に乗り換えることにした。Heatherさんは「Musk氏に何が起きたのか分からない」と言いつつ、Teslaの取締役会がなぜ同氏の行動を許しているのかと首をかしげた。

 この件についてTeslaにコメントを求めたが、広報部門がないため回答は得られず、また取締役会からも反応はなかった。Twitterも同様だ。毎日、Twitterに精力的に投稿しているMusk氏にもコメントを求めたが、回答は得られなかった。

Tesla株の将来に対する懸念

 Musk氏の振る舞いに反感を覚えているのは、Tesla車のオーナーだけではない。同氏がTwitterの買収計画を4月に明らかにして以来、ウォール街のアナリストや投資家らは一斉に懸念を表明してきている。

 Teslaの個人株主であり、その持ち株数で第3位となっているインドネシアの大富豪KoGuan Leo氏は14日、Musk氏がTeslaを見捨てたと確信しているとツイートした。Leo氏は「Teslaはフルタイムで働くCEOを必要としており、そうするだけの価値もある」と記し、Appleを業界の巨人に成長させた立役者であるCEOのTim Cook氏とMusk氏を比較した。「Elon(Musk氏)ではなく、Tim Cook氏のような実行力のある人物が必要だ」(Leo氏)

 投資情報サイトThe Motley Foolのライターで、Teslaに投資しているBrian Feroldi氏がMusk氏に対し、Twitterに時間を取られすぎていることを株主らが「懸念」しているとツイートしたところ、Musk氏はテキサス州でのTesla製造の進捗に関する会議を「今まさに終えたところ」だとツイートし、自らを擁護した。

 しかし、多くの投資家は納得していない。Teslaの株価は2022年に入ってから60%以上下落しており、同氏がTwitter買収計画を発表した後と、TwitterのCEOに就任した際に特に大きな下げ幅を記録している。また、同氏自身が4月に、Tesla株の売却は今後予定していないとツイートしたにもかかわらず、2022年を通じて売却しており、その額は累計400億ドルに上っている。これには、米証券取引委員会(SEC)に提出された報告書から明らかになった、12月半ばに売却されたおよそ36億ドル(約4800億円)相当の株式も含まれている。

 Musk氏の振る舞いに幻滅しているのは投資家と顧客だけではない。影響は同氏のファンにも及んでいる。かつてTesla株に投資しており、Tesla車を所有するとともにSpaceXのStarlinkを予約していたTomさんは、Tesla車のリース契約が2023年に切れたらTesla車以外のEVを買うつもりだと言う。

 「Musk氏は尊敬に値する人物だった」と語るTomさんは、「今では、より多くの金額を払うことになっても他社製品を使いたい」と続けた。

 

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]