「Quest 2」突然の値上げ--VRヘッドセットの価格は年末までに高騰か - (page 2)

　MetaのQuest 2、Appleの仮称Quest Proと比べて「手頃」そうなのは、2022年末の登場が予想されている「PlayStation VR2」かもしれない。それでも、プレミアム価格になりそうな気配はある。スタンドアロン型ではないもの、高解像度のOLEDディスプレイ、空間オーディオ、触覚フィードバック対応のヘッドセット、視線追跡、カスタムの高度な触覚フィードバック対応コントローラーと、極めて洗練された要素が満載だ。これだけの機能があれば、PC接続型のVRヘッドセットでも600ドル（約7万8000円）を下回ることはない。初代の「PlayStation VR」は399ドル（4万4980円）だった。PlayStation VR2を使うには、499ドル（4万9980円）からの「PlayStation 5」も購入する必要がある。手に入れば、の話だ。

PlayStation VR 2も高額になるかもしれない。
提供：PlayStation

　「これが最近の傾向だとは思わないが、この価格帯では引き続きQuest 2が最も完成度の高いVRソリューションだろう」と、Moor Insights & StrategyのVRおよび仮想現実（AR）担当アナリストを務めるAnshel Sag氏は話している。「Project Cambriaなどのヘッドセットがかなりの高額になることは、あらゆる兆候から明らかだ」

　ただし、Sag氏によると、ビジネス指向のモデルとは別に、コンシューマー向けヘッドセットを意識したVRも同時に復活しそうだという。「Quest 2の価格が上がる一方で、PlayStation VRがその方向に貢献するだろう」

　VRデバイスが100ドル程度、あるいはほぼ無料という時代もあった。スマートフォンと組み合わせる小さなプラスチック製のゴーグルとか、段ボールを折って組み立てるディスプレイなどによって、小型で固定式のVRのデバイスが登場した2010年代半ばのことだ。そんな時代はもう終わった。MetaのQuest 2は、その後を一時的につないでいたわけで、299.99ドルのオールインワンシステムというのは、実に魅力的な存在だったのだ。

　Metaに関しては、データをめぐるポリシーや行動に疑問点も多い。そこへ来て100ドルの値上げ、さらにはMetaが抱える財務の問題もある。それでもなお、Quest 2が依然としてベストで最も手頃なVRヘッドセットだというのは、驚異的な事実だ。そして、その状況が変わる可能性は低い。TikTokの運営会社、字節跳動（バイトダンス）と、同社のVRハードウェア企業であるPicoから、Quest 2と競合するヘッドセットが間もなく登場する可能性もあるが、ソフトウェアライブラリーが、Metaのライブラリーにすぐには追いつかないだろう。HTCの「VIVE」ハードウェアも、有望ではあるものの、依然としてビジネス指向だ。同社には、スマートフォンに無線接続する実験的な「VIVE Flow」ヘッドセットもあるが、こちらは対応アプリが多くない。Qualcommは、スマートフォンと接続するVR/ARヘッドセットの登場を以前から約束している。主な処理能力をスマートフォンに任せることでコストを削減できる可能性があるという。いわば、スマートフォンベースの低コストVRの再来とも言えるが、実際にハードウェアを作るメーカーを何処にするつもりなのだろうか。アプリのライブラリーはどうやってそろえるのだろうか。Apple、Google、サムスン、Valve、Amazon、あるいはMicrosoftが参加しなければ、対抗するのは難しそうだ。

　今のところ、Quest 2が依然として有力な低コストの選択肢ということになる。そう考えると、今回の値上げでMetaは賭けに出たのかもしれない。Quest 2の魅力が上がるわけではないが、2022年末には、周りはもっと高価な競合製品だらけ、という状況になっているかもしれない。