米航空宇宙局(NASA)は米国時間6月1日、次世代宇宙服の製造業者として、Axiom SpaceとCollins Aerospaceonの2社を選んだと発表した。
NASAの宇宙飛行士たちは、この新しい宇宙服を着て冒険の新たな時代に乗り出すことになる。それは、2030年に引退する国際宇宙ステーション(ISS)の船外活動で宇宙飛行士が着る最後の宇宙服になるだろう。NASAの宇宙飛行士が約50年ぶりに月面を歩く時も、この服を着ることになるだろう。そして、NASAの有人火星ミッションの準備を助けるだろう。
NASAのジョンソン宇宙センターのディレクター、Vanessa Wyche氏は同日、記者会見で「これらの宇宙服で歴史が作られる」と語った。
AxiomとCollins Aerospaceの両社は、2025年ごろには宇宙服を披露できる見込みだとした。既に宇宙服を開発中だが、まだ公開できる画像はない。
両社との新たな提携は、急成長中の商業宇宙経済を促進するためのNASAの取り組みにおける重要なマイルストーンでもある。実質的には宇宙服は2社が所有し、他の船外活動システムと共にNASAに対し“サービスとしての船外活動システム”として提供する。
この2社は、探査船外活動サービス(xEVAS)の契約要請企業の中から選ばれた。この契約の下、AxiomとCollinsは2034年まで、多様なタスクオーダーとミッションで、宇宙遊泳の必需品提供を競う。この契約の規模は、すべてのタスクオーダーを合わせて最大35億ドル(約4600億円)になる見込みだ。
NASAは、これらの民間パートナー企業に対し、共同開発した技術やデータのNASA以外での商業活用を検討するよう奨励している。NASAはそうした技術やデータをNASA内での将来の宇宙探査プログラムの調達にも使用する権利を維持する。
民間企業にこうしたインセンティブを与えることで、技術革新と持続的な競争を促進し、開発コストを下げ、重要なミッションの冗長性を確保できるとNASAは考えている。
NASAで2005年から2015年までISSのプログラムマネージャーを務めた経験を持つAxiom SpaceのCEO、Michael Suffredini氏は「われわれは長年、官民のパートナーシップについて話し合ってきた。これは、実際に官民双方に利益をもたらす最初のケースの1つだろう」と述べた。
Axiomは、引退するISSに代わる新たな商業宇宙ステーションの建設を目指して設立された企業だ。同社は最近、史上初の完全民間乗組員をISSに送り込んだ。
「Axiom Spaceは宇宙服を必要としている。船外活動を希望する顧客が既に多数おり、プログラムの一環として宇宙服を作る予定だった」とSuffredini氏は説明した。
「NASAの長年の経験と、現在のデザインに至るまでにNASAが行ってきたすべての作業から利益を得られるパートナーシップを築けるのは素晴らしいことだ。(中略)お陰でわれわれのニーズを満たす宇宙服を作れる」(同氏)
ジョンソン宇宙センターのISSプログラム運用統合マネージャー、Dina Contella氏は、NASAの現行の宇宙服は「この40年間、主力だった」と語った。NASAとそのパートナーがISSで実行した250回の宇宙遊泳中、169回はこの宇宙服で行われた。
「宇宙服の技術は、40年も経てば当然古くなる。われわれは未来の新技術を試したいし、それを手頃な予算で実現したい」(同氏)
NASAは、宇宙服製造のための技術と安全性の基準を定義する責任を負っている。また、宇宙服製造を希望する企業には、一定の要件を出している。例えば、女性の5パーセンタイルから男性の95パーセンタイルまで、幅広い体型に適合させることが義務付けられている。
AxiomとCollins Aerospaceは、可能な限りパーツの少ないモジュール式の宇宙服をデザインしようとしている。だが、宇宙で使うあらゆる種類の乗り物や機器を扱える必要もあり、可能な限りの機動性も持たせなければならない。
Collins Aerospaceのシニアテクニカルフェロー、Dan Burbank氏は次のように述べた。「われわれは宇宙服のことを、よく世界最小の宇宙船と呼ぶが、宇宙船のように感じさせてはならない。宇宙飛行士に最大限の機動性を与え、その能力を制限するのではなく、補完するような没入感のある環境を作りたい」
同氏は、最終的には「エクストリームスポーツのアウターを高耐久化したような」宇宙服を作りたいと語った。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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