メタバースという概念は新しいものではないが、このところ、テクノロジー企業各社は自社の事業でメタバースをより前面に押し出すようになっている。Facebookは2021年10月、社名をMetaに変更し、メタバース構築への取り組みの強化を反映させた。最高経営責任者(CEO)のMark Zuckerberg氏は、メタバースを「次なるフロンティア」と評しており、バーチャルな交流をより親密なものにする潜在的な可能性を説いている。Microsoftは2022年1月、ゲーム大手のActivision Blizzardを買収することで合意した。「メタバースの基礎的要素となる」ためだという。サムスンもメタバースでのイベント開催を始めている。
他の業界の企業も注目し始めている。先頃発表されたKraft HeinzとMicrosoftの提携では、食品飲料大手Kraft Heinzの製造施設のデジタルツインを作成して、さまざまなプロセスを実際の工場への導入前にテストできるようにする予定だ。MicrosoftのJudson Althoff氏は、提携の詳細を記載したプレスリリースの中で、「産業メタバース」という言葉を使った。Disneyも2月、自社のメタバース戦略を監督する幹部を任命している。
Fadell氏は、気候危機など、メタバースよりも重要な解決すべき問題があると考えているが、メタバースの誇大宣伝を信じない理由は他にもある。今日のメタバース体験の多くでは、ユーザーがアバターとして参加するため、社交にはリアルさが伴わない。「表情が見えず、気持ちを通い合わせることはできない」とFadell氏は語った。
そうした疑問を呈したのは、同氏が初めてではない。The Guardianによれば、SnapのCEOのEvan Spiegel氏は先頃、「メタバース」という言葉は「曖昧」で「仮説的」であるため、同社のオフィスでは決して使用しないと述べたという。しかし、Snapのような企業は、ARに重点的に投資を行っている。ARはデジタルグラフィックスを現実世界と融合させるテクノロジーであり、メタバースと関連付けられることも多い。Snapは2021年にARスマートグラスを発表した。AppleもARスマートグラスの開発に取り組んでいるとのうわさだ。
Fadell氏がかつて在籍していたGoogleは、2012年という早い段階でARスマートグラス市場に参戦し、「Google Glass Explorer Edition」のデモを披露している。2022年5月11日から開催された年次開発会議「Google I/O 2022」で、同社は話し言葉を翻訳できる新しいARスマートグラスの試作品を発表した。
しかし、Fadell氏にとって、最初のGoogle Glassには、現在のメタバースと同様の問題があった。それは、その技術が何らかの問題を解決していないということだ。Fadell氏によると、テクノロジーやプラットフォームを作り出すだけでは不十分だという。
「それを使って何をすべきなのかを人々に伝える必要がある」。Google Glassの欠点から得られた教訓を、どうやって次のARスマートグラスに生かせられるか、と尋ねられた同氏は、そう答えた。
「現在のメタバースにも全く同じ問題がある」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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