シャープ呉CEO、事業所視察、メディア懇親会など1カ月半の活動報告--「『実践』こそが『競争力』」

 シャープ 副会長兼CEOの呉柏勲(Robert Wu)氏は5月16日、社内イントラネットを通じてCEOメッセージを配信した。4月1日にCEOに就任し、同3日に最初のCEOメッセージを配信したのに続き、2回目の配信。メッセージのタイトルは、「失敗を恐れず、積極果敢に変革に挑戦していきましょう」とし、就任以来の約1カ月半の活動などについて報告した。

シャープ 副会長兼CEOの呉柏勲(Robert Wu)氏
シャープ 副会長兼CEOの呉柏勲(Robert Wu)氏

 まず、5月11日に発表した2021年度連結業績について振り返り、「2021年度業績は、新型コロナウイルスによる中国でのロックダウンや、ウクライナ情勢の影響などにより、2月から3月にかけて、想定以上にサプライチェーンが混乱したことから、売上高と営業利益は公表未達になった。だが、経常利益と最終利益は公表値を達成し、また、前年対比では、売上げ、各利益とも増収増益を確保することができた。とくに、経常利益は前年同期比1.8倍、最終利益は同1.6倍の大幅増益になった」と報告。

 決算会見の参加者からは、「証券アナリストの予想平均を下回る企業が多いなか、想定レベルの業績を確保しており、健闘した印象」、「業績が安定していること、財務体質が大きく改善していることが再確認できた」といった声があがっていたことを紹介した。

 2022年度については、ブランド事業では、国内における高付加価値商材の販売拡大およびソリューション事業の強化を進め、円安影響の最小化を図ること、海外においては、商品カテゴリーやラインアップの拡大を加速し、さらなる事業拡大に取り組む姿勢を強調。デバイス事業では、中型パネルの販売拡大やSDP(堺ディスプレイプロダクト)とのシナジー効果の最大化などに取り組む考えを示した。

 さらに、「さらなる原価力の向上や、サプライチェーンの強化および柔軟な対応など、環境変化に動じない体質の構築を進めるとともに、デジタルヘルスやカーボンニュートラル分野における新規事業の早期立ち上げなど、将来に向けた確かな布石も打っていく考えである」と述べた。

 その上で、「私は、シャープの3年先、5年先を見据えた時、『若くて活気溢れる企業風土』を醸成し、社員一人ひとりが、失敗を恐れず、積極果敢に変革に挑戦していく会社になることが、なによりも重要であると考えている。企業が成長していくためには、理想的なありたい姿の実現に向け、事業環境や競合他社の動向などをしっかりと分析し、緻密な戦略や施策を練り上げることが大切であり、それをいち早く実践に移してこそ、大きな成果を掴み取ることができる」とした。

 また、「『実践』こそが『競争力』であり、『スピード』こそが『勝利へのカギ』である。こうした意識を高く持ち、『理想の実現を追い求める実践者』として、シャープの持続的成長の原動力になってもらうことを期待している」と述べた。

 なお、2022年度の通期業績予想については、「シャープを取り巻く事業環境は、サプライチェーンの混乱に加え、インフレや景気の先行きも不透明であり、今後も厳しい状況が継続する見通しである。現在、新経営体制のもとで精査を行っており、1カ月後を目処に公表する予定」とし、厳しい内容になることを示唆した。

 一方で、シャープでは、構造改革として、八尾事業所(大阪府八尾市)における冷蔵庫生産の終息や、栃木工場(栃木県矢板市)のテレビ事業関連メンバーの堺事業所や幕張事業所への集約に加え、カメラモジュール事業の天理事業所(奈良県天理市)への移転、三原工場(広島県三原市)や平野事業所(大阪市)、八尾跡部(大阪府八尾市)の事業所売却、Dynabookとの拠点統合など、事業所の再編を進め、成果をあげてきたことに触れ、「こうした構造改革の第2ステップとして、今後は、各分野の専門人材の獲得や、顧客および取引先との緊密な連携による開発機能と販売機能の強化、事業間の横連携のさらなる深化による事業変革の加速、職場環境の改善による社員のモチベーション向上などを狙いに、さらなる拠点の最適化を進めていく」とした。

各事業所を視察、今夏には海外拠点にも訪問

 また、呉氏は、4月1日に副会長兼CEOに就任後、4月2~5日にかけて、東広島、福山、八尾、奈良、天理の事業所を視察し、各事業の幹部と、事業の現状や今後の取り組みについてミーティングを行ったことも報告。「こうした事業所視察は、今回だけに限らず、今後も定期的に行っていく。まだ視察できていない事業所も含め、社員とFace to Faceで議論する機会を増やしていこうと思っている」と述べた。

 呉氏は、4月12日に、大阪府堺市の同社本社でメディア懇談会を開催し、初めて報道関係者との対話の場を設け、質疑応答を含めて、1時間45分に渡り、経営の方向性などについて説明した。

 参加した記者の声として、「熱意が伝わってくる良い内容だった」、「デジタルヘルスという新たなキーワードが加わり、シャープの事業戦略に厚みが出てきた印象」といったコメントがあったことを紹介しながら、「今回の懇談会が有意義なものになったと感じた一方で、一日も早く取り組みを具体化し、成果につなげていかなければならないという思いを強くした」とコメントした。

 さらに、「こうした背景もあり、私はCEO就任以降、土曜日に最重要拠点である八尾事業所を訪れて、デジタルヘルスおよびカーボンニュートラルの取り組みの方向性や協業戦略などについて、各責任者と議論を重ねている。今後、早急に戦略を組み上げるとともに、適切なタイミングで対外的に公表していく考えである」としたほか、「ゴールデンウィーク期間中には、欧州、米州、ASEAN、台湾の各販売会社責任者とミーティングを行い、今後の経営の方向性について改めて説明するとともに、拠点ごとの販売拡大戦略について議論をした。今夏には海外拠点も視察したい」とし、CEO就任以降、精力的に活動していることを示した。

 35~45歳のマネージャーを対象にしたランチミーティングを5月から実施する予定も明らかにした。

 また、「現状の各事業を中心とした体制を維持しつつ、より地域に根差した企画や開発、販売が可能な体制の検討を進めており、7月1日付で、組織体制の見直しを行う予定である」とも述べたほか、「『若くて活気溢れる企業風土』の醸成に向けては、優秀若手社員の登用やグローバルでの人材管理の仕組みの整備、海外各地域の水準に適した処遇設計など、これまでの信賞必罰のポリシーをベースとしつつ、さらなる制度改革に着手しているところだ」と語った。

 また、6月23日に開催予定の定時株主総会での承認を経て決定する新経営体制については、「私が代表取締役社長兼CEO、専務執行役員の沖津雅浩氏が代表取締役副社長として、先頭に立って、シャープのさらなる成長を牽引していく」とし、「今回の取締役交代に伴い、シャープの構造改革や将来に向けた基盤づくりに尽力をいただいた戴会長(会長執行役員の戴正呉氏)と、野村社長(社長執行役員兼COOの野村勝明氏)は、シャープの経営からは退任し、今後は、子会社の役員という立場からサポートしてもらう」と報告。「6年間、本当にありがとうございました。心より御礼申し上げます」と述べた。

 メッセージの最後には、「6月23日の株主総会以降、シャープは、本当の意味で新体制を始動する。これに向けて、残り1カ月半、足元の事業計画を着実に遂行するとともに、新たな経営方針に基づいた戦略や施策の具体化を一層加速しよう」と呼びかけた。

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