米商務省が発表した調査によると、自動車メーカーや医療機器メーカーなどのチップ消費者が保有するコンピューターチップの在庫期間の中央値は、2019年に40日だったのが、2021年には5日未満まで減少したという。この影響は深刻だ。同調査報告書には、「コロナのまん延や自然災害、政情不安により、ほんの数週間でも国外の半導体施設に混乱が生じれば、米国の製造施設が休業に追い込まれ、米国の労働者とその家族が危険に晒されるおそれがある」と書かれている。そうした危険性は、自動車メーカー各社も認識している。
自動車セクターは、極めて聡明で先見の明のある人々が従事する業界の1つだ。彼らは安全性と燃費の基準を満たし、顧客のニーズに対応するために、何年も前から計画を立てて、細部にまで気を配ることを習慣としている。今回、業界全体が半導体に関して失策を犯したことに人々が驚いたのは、そのためだ。半導体不足がこれほど大きな問題になると予想した人はいないと思うが、自動車会社は潜在的なリスクを認識しておくべきだった、とSchuster氏は述べている。
Fiorani氏は、「現在では、私たちが購入するほぼすべてのものにチップが関わっている」と言う。パンデミックが発生した当初、自動車メーカーは販売台数の大幅な落ち込みを見越して、半導体の注文を減らした。「OEMは予想外の行動に出て、チップを製造するメーカーは、その工場のスペースを、『iPhone』や『PlayStation』など、収益性と需要がはるかに高い製品向けのチップ製造に割り当てた」(同氏)。自動車販売が再び好調になった今、チップメーカーは生産能力に余裕がないため、需要に対応できずにいる。残念ながら、再び照明をつけて生産を再開し、すぐに増産すれば済むという簡単な話ではない。
Fiorani氏はもう1つの問題として、収益性を指摘する。自動車業界が必要としているのは、半導体メーカーの利幅が小さくなる旧式のチップだ。いくつかのパーキングセンサーを稼動するだけなら、「iPhone 13 Pro」よりもはるかに少ない処理能力で済む。また、自動車会社は安全のために、実績のある設計や、あらゆる温度や湿度などの状況で何十年も機能する、信頼性の高いチップを使用する。NVIDIAやTexas Instruments、台湾積体電路製造(TSMC)など、あらゆるチップメーカーには、自動車業界の顧客を犠牲にして、より先進的な半導体を製造する動機がある。
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