数年前からIoT化やスマート化の波が訪れているものの、ブームになるまでには至らないのが「スマートキッチン家電」だ。シャープの「ヘルシオ」シリーズや日立グローバルライフソリューションズの「ヘルシーシェフ」シリーズ、パナソニックの「ビストロ」シリーズの一部機種には、スマートフォンでレシピを検索して調理工程を本体に転送できる機能や、調理が完了したらスマホにお知らせしてくれる機能などが以前から搭載されているものの、あまり一般には浸透しきれていないのが現状だ。
家電のスマート化は各社それぞれが試行錯誤を繰り返しており、ビルトインオーブンから小型調理家電、キッチンスケール、温度計、ワインデキャンターなど、幅広い製品が登場している欧米にはまだまだ追いついていない状況と言える。
とはいえ、国内でもユニークなスマートキッチン家電が続々と登場しはじめている。
プロデュース・オン・デマンドは2021年3月に、1度刻みの温度管理と1秒刻みの時間管理で調理できるスマートIH調理器「Repro(リプロ)」を発売した。最大15ステップまで、調理を“プログラミング”できるのがユニークなポイントだ。
そのほかにも、専用調理器具(鍋もしくはフライパン)を使うことで、レシピに合わせて自動的に調理を進めてくれる米国発のスマートIH調理器「Hestan Cue(ヘスタン キュー)」も11月に日本に上陸した。
オーブンレンジの上位モデルや電気圧力鍋ではあまりスマート化の進化が見られなかったが、ユニークなスマートキッチン家電も登場している。
パナソニックは全部の機能を搭載する“フルスペック”ではなく、必要な機能だけをスマホアプリ経由で転送して活用できる「マイスペック」シリーズの展開を開始した。炊飯から煮込み調理までできる「ライス&クッカー」や、別売品を追加することで必要な機能を後から追加できる「マイスペック オーブンレンジ」をラインアップする。スマホアプリを使うことで機器を細かく制御するなど、よりスマートに活用するという正統派のスマート調理家電とは方向性が異なるものの、ITリテラシーが決して高くない一般消費者まで幅広く使えるスマート調理家電の新たな方向性として注目だ。
日立グローバルライフソリューションズは特定の棚にかかる重量を計測することで食品の材料チェックを行い、必要に応じて自動再注文まで行えるスマート冷蔵庫「スマートストッカー」を発売した。
米国では、低温調理器の代名詞にもなっている米Anova(アノーバ)が2020年12月に、スマートフォンアプリ経由で細かくコントロールできる家庭用スチームコンベクションオーブン「Anova Precision Oven」を発売した。
2021年10月には、電気圧力鍋のデファクトスタンダードになっているInstant Brandsの「Instant Pot」シリーズから初のスマート電気圧力鍋「Instant Pot Pro Plus」も登場した。どちらのブランドも一部製品が日本国内でも販売されているが、これらのスマート調理家電が日本に上陸するかどうかは不明だ(恐らく日本語化の問題もあって一般販売されるのは難しいだろう)が、2022年にはこのように“攻めた”スマートキッチン家電が国内メーカーから登場するのにも期待したい。
フードテックは官民連携の動きも活発になっている。農林水産省は2020年4月から7月まで6回にわたって「フードテック研究会」を開催し、課題や解決方法などを議論した上で2020年7月に「フードテック官民協議会」を発足した。フードテック官民協議会は2020年10月、21年3月、21年10月と、これまでに3回の全体提案・報告会を実施しており、「スマート育種産業化」や「昆虫ビジネス研究開発」、「細胞農業」など、さまざまなワーキングチームに分かれて議論が進められている。
2021年7月にはフードテックの関連情報を発信するウェブメディアFOOD TECH Lab(フードテックラボ)」をフードテック官民協議会がオープンし、フードテックの開発事例や活用事例などの紹介をスタートしている。
また、オープンイノベーションの動きも始まっている。2020年9月には、米国と日本でスタートアップ企業に投資するファンドを運営するスクラムベンチャーズがフードテック関連のオープンイノベーションプログラム「FoodTech Studio - Bites!」をスタート。11月までに応募のあった世界30カ国、218社の中から85社のスタートアップと30人のメンターによって2021年1月から3月まで事業開発を行った。4月に行われた「プログラム先行事例発表会」では、「真空調理無菌包装」や「ラーメン自販機」、従業員のストレスを軽減するAIプラットフォーム、微細藻類を用いた廃液処理など、さまざまな取り組みが紹介された。
そのほか、2021年11月にはフードテック関連技術を持つ企業と食品関連企業とのオープンイノベーションを促進するための「食関連分野オープンイノベーション・ チャレンジピッチ」を農林水産省、経済産業省と中小機構が連携して開催するといった動きも出ている。
オープンイノベーションにはある程度の時間がかかるため、2021年には大きな成果物としての製品やサービスのローンチまでは至っていないようだが、2022年にはさまざまな取り組みが具現化することを期待したい。
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