陰謀論が猛威を振るった1年を振り返る--ワクチンめぐり生死も左右 - (page 2)

Oscar Gonzalez (CNET News) 翻訳校正: 編集部2021年12月29日 07時30分

信じない人もいたが、パンデミックは起きた

 陰謀論は政治的なものだけではない。2021年の初めに米国で新型コロナワクチンが広く接種可能になってからも、公衆衛生当局は、すべての国民に十分に接種できないかもしれないと危惧した。ところが、当局は別の問題に直面した。これはすぐに嘘だと暴かれワクチンには効果がないどころか、危険でさえあるという誤った反ワクチン情報が広まったのだ。

 ワクチンに関する不正確なうわさや動画が、パンデミックの間に人気が急上昇したFacebook、YouTube、TikTokなどのソーシャルメディアで拡散された。ワクチンが新型コロナによる入院と死亡を防ぐのに効果的であることを示す多数の証拠に異議を唱える声を求める人々により、医療専門家と偽情報を広める詐欺師の両方の人気が高まった。

 反ワクチンの陰謀論は、ワクチンには磁石が仕込まれており、接種した腕に金属がくっつくという、馬鹿げたうわさから始まったが、これはすぐに嘘だと暴かれた。

9月にニューヨークで開催されたアンチワクチン集会
9月にニューヨークで開催されたアンチワクチン集会には数千人が参加した。
提供:Andrew Lichtenstein/Corbis(Getty Images)

 陰謀論者は、ワクチンで救われる人よりも殺される人の方が多いと主張し、誤情報を増やした。その「証拠」として、米疾病予防管理センター(CDC)の「ワクチン有害事象報告システム」(VAERS)からの報告を引用する人もいた。この報告システムは、「ワクチンが有害に働いたという異常な、あるいは想定外の報告パターンを検出」ための公衆衛生監視プログラムだ。VAERSにはワクチン接種後に副反応を経験した個人の症例が、死亡したケースも含めて記載されているが、ワクチンに欠陥があるとはしていない。

 もちろん、ワクチンでは副反応が出る可能性はある。記載されている副反応のほとんどはインフルエンザのような症状だが、中には病院での治療が必要になるものもある。それでも、ワクチンのメリットは、接種せずに新型コロナに感染するリスクをはるかに上回る。

 新型コロナの治療に関する誤情報もソーシャルメディアで広まった。最も人気を集めたのは、抗寄生虫薬のイベルメクチンに関するものだ。この薬が新型コロナに感染した患者の回復を助けることを示唆する研究報告が幾つかあったが、その多くは不正確であることが判明し、支持は低下した。より多くの研究が、イベルメクチンが新型コロナ治療に効果がないことを示した。

 それでも、コメディアンのJoe Rogan氏、UFCのプロモーターのDana White氏、NFLチーム「グリーンベイ・パッカーズ」のAaron Rogers氏などの著名人が新型コロナ罹患後にイベルメクチンを飲んだと公言し続けた。こうした著名人を含む多くの人々は人間用のイベルメクチンを服用したが、家畜用を服用した人も少なからずおり、中毒センターへの相談が急増し、この薬の過剰摂取で2人が死亡した。

 新型コロナウイルスに関する誤情報とこのウイルスによる死亡との間に明確な因果関係を確認することはできない。Redditの「r/HermanCainAward」というサブレディットは、これらの陰謀論を信じた人々に関する洞察の提供を目的としている。このサブレディット名は、Trump氏の選挙応援集会に参加した後、新型コロナで亡くなった元共和党大統領候補のHerman Cain氏にちなんだものだ。ここには、新型コロナに関する誤情報を共有した後で新型コロナで死亡した人々に関する投稿が溢れている。その多くは、ソーシャルメディアへの関連する投稿のスクリーンショットだ。投稿にはパターンがあり、まず新型コロナに関する誤情報を共有している人物のスクリーンショットが、それに続けてその人物が検査で陽性だったという投稿のスクリーンショット、そして最後は、その人物が新型コロナで死亡したと報告するその人物の家族や友人による投稿のスクリーンショットとなっている。

2022年には変化があるだろうか?

 陰謀論が消滅しそうにないことは確かだ。米大統領選の不正投票説や新型コロナワクチン有害説のように、その根拠の薄さが暴かれても、陰謀論は既に拡散されすぎており、止めることはできないようだ。

 偽情報を研究するCopland氏は「ソーシャルメディア上の偽情報の状態が来年以降に良くなるか悪くなるかを予想するのは非常に難しいが、兆候は良くはない」として、「こうしたグループはますます過激になっている。偽情報が増え続ける可能性はかなり高い」と語った。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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