トヨタの挑戦--柔らかい物をつかみ、透明な物を認識するロボットで生活を楽に - (page 2)

Brian Cooley (CNET News) 翻訳校正: 編集部2021年12月24日 07時30分

 TRIのロボットは、透明な物体や光を反射する物体も認識できる。これがいかに難しいことか、猫を飼っている人なら分かるだろう。物体の表面が透明だったり、光を反射したりしていると、一般的なロボットはないものをあると勘違いしたり、逆にあるものをないと錯覚したりする。透明な容器がずらりと並ぶ食料品店の通路から、あちこちに鏡がある家まで、この画期的な技術を用いることで初めてロボットを導入できるようになる空間は多い。

提供:Toyota Research Institute
提供:Toyota Research Institute

 しかし、その先には依然として「人間とロボットの調和」という大きな目標がある。「今のところ、人間とロボットが本格的に協働している事例はなく、ロボットは人間の能力を増幅させる力を十分に発揮できていない」とBajracharya氏は言う。この力をTRIは「AI」を逆さにした「IA(Intelligence Amplification:知能増幅)」と呼ぶ。簡単に言えば、TRIはロボットを、人間の優れた知能を活用し、それをロボットの強みである強靱性、精度、持続性、再現性と掛け合わせたものだと捉えている。2017年にアテネで開催され、私も参加したToyota Mobility Summitで、トヨタ自動車の社長である豊田章男氏はヒューマンモビリティーの考え方を提唱した。以来、同社はこの分野の研究に力を入れている。

 ここで議題となってくるのが、ロボットの親近感だ。私は長年、人間はロボットを擬人化せずにいられないので、ロボットの普及には能力だけでなく、親しみやすさも必要だと考えてきた。といっても、2017年のCESで話題をさらい、わずか1年半後に生産が中止された家庭用ロボット「Kuri」のような、実用性を伴わない見た目の愛らしさの話をしているのではない。重要なのは、人間と何らかの関係を築けるかどうかだ。Bajracharya氏は、家庭や医療現場では「人間ではないからこそ、ロボットを好む人もいる」と指摘する。しかし未知のものへの恐れや、ロボットが人間の仕事を奪うのではないかという不安から、「この種の機械が自分の環境に入り込むことを毛嫌いする人もいる」という。

 ロボティクスの歴史はまだ序章にすぎない。時間や労力のかかる仕事を人間からロボットに引き継ぎつつ、世界を理解する人間の能力を増幅させる、高度で精密なスキルの開発に取り組むことが、次の章を開く方程式のように思われる。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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