NFT--人はなぜJPEG画像に何億円も払うのか

Daniel Van Boom (CNET News) 翻訳校正: 編集部2021年12月09日 07時30分
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 下の画像に900万ドル(約10億円)以上の価値があると納得してもらうにはどう説明すればいいのだろう。

 
Richerd氏のアイコン
提供:Richerd/OpenSea

 これは、最初に作られたNFTの1つだ。2017年にリリースされた1万点のNFTコレクション「CryptoPunks」の1つ。当時はまだ、世界中のほとんどの人がビットコインが何なのか理解しようとしていた時代だった。

 皆さんは恐らく、900万ドルという金額あるいはNFTというもののアイデアのいずれかに呆れ返っていることだろう。NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)への反応は、注目が高まったこの3月からあまり変わっていない。一般の人々はNFTを、環境に有害な詐欺まがいのものとして反射的に拒否した。売り上げが大きいほど、不正も横行する。

 さて、上のピクセル化された男の画像に話を戻そう。この画像の所有者は、気さくなカナダ人のソフトウェア開発者、Richerdさんだ。彼は2013年ごろに仮想通貨ソフトウェアの開発を始めたが、最終的にはうんざりしてしまった。Richerdさんは2021年の始めにNFTについて知り、3月31日にCryptoPunkの#6046を8万6000ドル(約970万円)で購入した。それまでの人生で最も高い買い物だったそうだ。

 Twitterで8万人のフォロワーがいるRicherdさんは11月、購入したCryptoPunkは自分にとってかけがえのないもので、どんなに高値になっても売らないと断言した。その翌日、彼の決意が試される時が来た。2500イーサ、つまり950万ドル(約10億7000万円)のオファーがあったのだ。このオファーは、RicherdさんのCryptoPunkにそれだけの価値があるからではなく(同じようなNFTは現在約40万ドル(約4500万円)で購入できる、彼の宣言を多数の人々が目にし、はったりだと思った人もいたからだった。それは挑戦ではあったが、正当なオファーだった。Richerdさんが同意ボタンをクリックすれば、2500イーサが彼のウォレットに振り込まれるはずだった。

 Richerdさんはこのオファーを拒否した。

 Richerdさんは私とのZoomでのインタビューで「前日に『どんなに高値でも売らない』と言っておいて結局売ってしまえば、自分を裏切ることになる。それに、私はこのCryptoPunkを自分のプロフィール画像、自分のブランドとして使っている。誰もがこの画像が私だと知っている」と語った。

 少し前であれば、Richerdさんの説明は私には非常識に聞こえただろう。フリーランス向けマーケットプレイス「Fiverr」で使うロゴのような画像に1000万ドル(約11億3000万円)近い値が付くとは、どれだけ現実離れしているだろう。そのオファーを拒絶するなんて、どれだけ非常識なのだろう。だが、数カ月間NFTについて調べた後だったので、私は全く驚かなかった。実際、これは非常に理にかなった話だ。

ビットコイン長者たち

「Bored Ape Yacht Club」
「Bored Ape Yacht Club」コレクションには1万点のNFTがある。これはその中の3点だ。中央の画像は、人気司会者のJimmy Fallon氏が所有している。
提供:Yuga Labs

 NFTが最高経営責任者(CEO)の報酬に相当する金額で売買される理由を説明できる簡単な事実として、ビットコインで億万長者になった人は10万人以上いると推定されている。3月にNFTが社会現象になったのは当然のことだった。同月にビットコインの価値は半年前から500%以上も上昇し、6万ドル(約680万円)になっていた。

 NFTに途方もない金額が投じられているという記事やツイートを目にする際、われわれ一般人が馬鹿げていると思うのは当然だ。だが、忘れがちなのは、非常に高価なものを買うのは、非常に裕福な人々だということだ。そして、非常に裕福な人々というのは、ステータスシンボルのために多額を投じるものだ。

 例えば「Bored Ape Yacht Club」(BAYC)の場合。これはサルの画像のNFTからなる1万点のコレクションで、すべてのサルに異なる特徴があり、中には他よりも希少なサルもいる。希少なサルは100万ドル(約1億300万円)以上で取り引きされるが、比較的平凡なサルの価格は20万ドル(約2300万円)前後だ。4月の立ち上げ段階では、BAYCの開発者は1点190ドル(約2万円)で販売していた。プロバスケット選手のSteph Curry氏や人気司会者のJimmy Fallon氏などは、所有するBAYCをSNSのプロフィール画像として使った。NFTの画像の主な使用目的は、多くのNFTプロジェクトの拠点となっているDiscordや、TwitterやInstagramなどのSNSでのプロフィール画像だ。

 つまり、1枚のプロフィール画像が最低でも20万ドルすることになる。

 そう考えると、どうかしている。だが、裕福な人々の金の使い方だと思えば、それほど驚くことでもない。JPEG画像を右クリックすれば無料で保存できるのに、なぜそれに金を払うのか。世界のどこででも、100万ドル払えば安全な地域の快適な家を購入できても、セレブというのは2000万ドル(約22億7000万円)の豪邸を購入するものなのだ。500ドル(約5万6000円)で素敵なドレスが買えても、シャネルなどのブランドはその20倍の価格でドレスを販売することでビジネスを構築している。

ビットコイン長期チャート
ビットコインとドルの換算チャートでグリーンの折れ線が急角度で上昇したとき、10万人の億万長者が誕生した。
提供:coinmarketcap.com

 金持ちが現実の世界で贅沢品を買うことは知っている。それなら、彼らがオンラインでも贅沢品を買うと考えられないだろうか。

 仮想通貨調査会社Delphi Digitalのアナリスト、Alex Gedevani氏は「現実世界で人はどうやって裕福さを見せつけているだろうか? 車や高級腕時計を買うこともある。CryptoPunkを購入してプロフィール画像として使うのも、それと同じことだ」と語った。

 もちろん、ステータスシンボルは金持ちだけのものではない。一般市民のわれわれも、なんらかの形で示そうとする。7000ドル(約80万円)の中古車で済むところを2万ドル(約220万円)の新車を購入したり、Walmartでなら5ドル(約560円)以下でベーシックなTシャツが買えるのに、30ドル(約3400円)のTシャツを買う場合などだ。ほとんどのステータスシンボルに共通しているのは、皆特定のオーディエンスを想定していることだ。ロレックスを見せびらかす銀行家もベントレイの高級車にさっそうと乗り込むCEOも、私などの一般人がそれらを高価すぎると思おうと気にもしない。彼らが影響を与えようとしているのは、少数ながら強力な人々のグループだ。NFTも同じことだ。

 Richerdさんの場合、Beepleのようなデジタルアーティストがブロックチェーンを使ってNFTとしてのみ存在できるアートを作成する方法を紹介するビジネス「Manifold」を運営している。最も人気のあるNFTコレクションの1つを保有することは、この分野で役立つのだ。それに、彼が自分のブランドは所有するPunkに基づいていると言うのは大げさではない。彼の支援グループの1つは組織名を彼にちなんでいる。

 Richerdさんは次のように説明した。「CryptoPunkを持っている人は皆、信念を持っている。コミュニティーに長く参加しているからそれを信じている人もいれば、参加するために多額の金を払うことで信念を示す人もいる。私は自分の信念を示したいと思う。これは、何を信じているかを言葉だけでなく、行動で示すためのプロジェクトの1つだ」

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