Zuckerberg氏のプレゼンテーションでは、メタバースの希望に満ちたビジョンが語られた。デジタル空間に人々が集い、仮想の剣で斬り合ったり、自宅にいながらにしてコンサートを楽しんだり、シンプルに仮想のオフィスで仕事をしたりできる。
だが、Facebookはソーシャルメディアで取り組んでいるのと同じ問題にも対処しなければならない。データプライバシー、セキュリティ、児童の労働や性的搾取の危険性、コンテンツモデレーションといった問題だ。誤情報は、同社の社名を冠したソーシャルネットワークであるFacebook上で幅広く問題化してきた。2021年1月6日の米議会乱入事件や、新型コロナウイルスワクチンの忌避は、Facebook上で広まった虚偽の情報が原因だとも指摘されている。
こうした問題を議員たちも把握しており、Facebookや同類のテクノロジー大手を規制する方策をめぐって検討が続いている。
「Metaといえば、転移(Metastasizing)のことだろう。『われわれは民主主義に対するがん細胞であり、全世界を監視するプロパガンダマシンへと転移して、独裁体制を進め市民社会を破壊する。すべては利益のためだ』という宣言にしか聞こえない」。ニューヨーク州選出のAlexandria Ocasio-Cortez下院議員(民主党)は、このようにツイートした。
Meta as in “we are a cancer to democracy metastasizing into a global surveillance and propaganda machine for boosting authoritarian regimes and destroying civil society… for profit!” https://t.co/jzOcCFaWkJ
— Alexandria Ocasio-Cortez (@AOC) October 28, 2021
コネチカット州選出のRichard Blumenthal上院議員(民主党)と、テネシー州選出のMarsha Blackburn上院議員(共和党)も、社名を変更したところでFacebookへの責任追及がゆるむことはない、とZuckerberg氏に警告している。両上院議員は、小委員会を率いて最近Haugen氏と面談し、同氏のFacebookに対する懸念について話し合っている。
仮想世界は、Facebookが2014年にヘッドセットメーカーOculusを買収し、VRと拡張現実(AR)への投資を強化するはるか前から存在していた。そして、仮想現実の世界では、すでにハラスメントの問題も起きている。The Washington Postの報道によると、2007年には、「Second Life」でアバターが別のキャラクターをレイプしたという訴えをベルギー警察が捜索したことがあるという。Second Lifeは、Linden Labが開発した仮想世界、メタバースだ。
2022年にFacebookの最高技術責任者(CTO)に就任する予定のAndrew "Boz" Bosworth氏が、カンファレンス前にビデオチャットで説明してくれた。ハラスメントに遭遇した場合は、他のユーザーをミュートすれば、VRで自分の環境を制御しやすくなるだろうという。また、他のユーザーとの間で交わすVR上のやり取りのうち、最新の10~15秒分を当局と共有できるようにするというアイデアも模索しているようだ。だが、プライバシーとユーザーの安全性という相反する要素のバランスをとる必要がある。これは、以前メッセージアプリで終始チャットを暗号化した際に経験したジレンマだ。
もうひとつ予想されるのは、アバターを使って他のユーザーになりすますという問題だろう。アバターを認証済みのアカウントに対応させる、あるいは何らかの方法で身元を確認するといった解決方法が考えられる。
それでも、社名変更によってFacebookが以前からの問題を回避できることはないだろう。政治家や著名人、批判する層は、今回の重大発表以降、同社を厳しく非難している。
代表的な批判者グループであるReal Facebook Oversight Board(真のFacebook監督委員会)は、次のように述べている。「社名を変えても現実は変わらない。Facebookはわれわれの民主主義を破壊しており、誤情報とヘイトを世界的にまき散らしている。無意味な社名変更によって、Facebookに責任を問うための調査、規制、真に独立した監視がゆるむことは、あってはならない」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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