「REALITYは世界で大きく成長する可能性がある」--グリーが狙うメタバース事業の勝算 - (page 2)

REALITY流メタバースの3つの要素

――改めて、REALITYが目指すメタバースとはどういうものかをお話ください。

 世の中がメタバースをどう定義するかは関係なく、我々はREALITYをメタバースとしてこう捉えているという意味で説明しますが、大きく3つの要素で構成されます。まずは、「アバターを通じて他の人とリアルタイムボイスコミュニケーションをすること」です。テキストではなく、アバターを通じてリアルタイムにおしゃべりができることが1つめの定義になります。

 また、Zoomなどの既存のコミュニケーションサービスが2Dで平面に閉じているのに対し、メタバースには空間的な広がりがあります。オープンワールドのゲームもそうですが、そういった「さまざまな場所や空間があることに加えて、そこに自分で手を加えられる」というのが、2つめの凄く大事な要素だと思っています。

 マインクラフトやフォートナイトは、自分で空間やゲームを作ってそれを友達に遊んでもらうことができるじゃないですか。運営に用意された場所で遊ぶだけでは、MMOと変わらない訳です。そういう意味では、ユーザーの手によって世界自体が拡張されていくというUGC(ユーザー生成コンテンツ)の要素が入っているところが今までのMMOとは違う所かなと思っています。

 最後は、「ユーザーがお金を稼ぐことができること」。つまりゲームの中、あるいはメタバースと呼ばれている仮想空間の中での行動や頑張りが、ちゃんと実経済にフィードバックしてきて、その中の活動だけで稼いで生きていくこともできる“クリエイターエコノミー”と言われるような要素ですね。

 アバターによるリアルタイムコミュニケーションで、無限に広がる3D空間とそこに自分で手を加えられるUGC要素と、クリエイターエコノミーの要件を兼ね備えたものが、REALITY的解釈としてのメタバースとなります。

――仮想空間というと、「セカンドライフ」と、それがうまくいかなかったという話がセットでよく出てきますが、そもそも当時うたわれていた仮想空間と、今言われているメタバースは何が違うのでしょうか。

 違わないと思います。結局、当時のハードウェアとかネットワークの回線環境とか、そこにアクセスできる人数、そういうカルチャーに対する慣れのようなものが違えば、10年前に流行らなかったものでも、今は流行るものはたくさんあると思います。

 ただ、セカンドライフはサンドボックス過ぎるといいますか、そこに滞在して遊んだり何かをしたりという目的が無さ過ぎて、全部ユーザーに丸投げしていたのでうまくいかなかったという部分はあるのではないかと思います。それは今でも同じで、成功しているメタバースと呼ばれ始めているコンテンツ群には、今は主にゲームですが、そこに集って時間を費やし、何か人間関係を育むための目的やネタがあります。

日本発のコンテンツ的要素が強みに

――REALITYが目指すメタバースは、Facebookをはじめとする他社とは何が違うのか、特徴や考え方があったら教えてください。

 メタバースと呼ばれるものには単なるハコがあればいいのではなくて、先ほど話したようにまず目的がなければいけません。楽しみが必要だという意味では、ツール的な要素よりも、コンテンツに近いと思っています。

 ツール、つまり機能性で勝負するものであればあるほど1社が独占しやすくなります。例えばグーグルの検索エンジンは、検索する目的のものに辿り着けばいいという極めて機能性の高いプロダクトなので、世界中に10も20も必要ないわけです。

 ただこれが空間となった場合、自分にとって居心地のいい場所や仲間といった要素が求められるので、だんだんコンテンツ的要素が強まってきます。すると、「ここは自分に向いているな」とか、「ここは会わない」といった人々の動きが、今の多様化しているSNS以上に強まっていくと思われます。そこでまず、「色々なメタバースが併存しうる」「それぞれに特色を持ったコミュニティが存在する」ということが、考え方の大前提としてあります。

 その上で僕たちが目指すところとしては、自分たちの出自であり得意なことを活かしていく、つまりこういう日本発の日本らしいコンテンツをちゃんと強みにしていくということだと思います。ほかにも、ゲームを作れることもアドバンテージなので、単に「場を用意したので後はどうぞ」ではなくて、ちゃんと魅力的なコンテンツや遊ぶネタを用意するというところまでを兼ね備えていくことができます。つまり我々の強みとなるのは、「アジア発、日本発という色合いの部分」と、「プラットフォームとコンテンツを両方作れる」という2つですね。

――RIOさんは「VRChat」などをはじめとした、VRデバイスを主体にしたVR仮想空間サービスをどのように見ていますか。また、REALITYはVRサービスと連携をとって事業を進めていくことも考えられているのでしょうか。

 実はREALITY自体が、VRChatに多大なる影響を受けています。僕自身は、VRChatはいろいろとハードルが高く、限られた人しか楽しめないものの、その人たちにとっては理想的なメタバースの将来像が実現されているという先端的な環境だと思っています。そういう意味で自分のミッションは、VRChatの中で展開されている超未来的かつ魅力的な体験を、どうやったら多くの人にアクセスしやすく楽しんでもらいやすくできるのか、どうやったらビジネスとしてサスティナブルな状況に持ち込んで継続的に発展させられていくか、ということです。

 僕自身コアユーザーとしてはVRChatのようなことをやりたいのですが、仕事上のミッションとして、VRChatのような3Dメタバースのカジュアル版で、その代わりに100倍も1千倍も人が集まっているというサービスをスマートフォン向けに作ることに挑戦しています。

――ネットサービスは黎明期に熱量がある人がコアにいると盛り上がるものですが、人が増えるとそれが薄まるという懸念はありませんか。

 それは何を熱量の源にしているかであって、確かに今のVRChatがカジュアル化して大量に人が増えたら、良さは薄まってしまうと思います。クローズドサークルでクリエーター比率が異様に高いからこそ実現されている魅力な訳ですから。

 それに対して我々は元々スマートフォン向けにカジュアルでやっているので、むしろ多くの人が参加することで熱狂度が高まっていくような形になっていて、スーパークリエイターがいなくても熱量は生み出され、拡散されていくという設計で作っているので、そこは心配していません。

――REALITYが、メタバース事業で勝負できる理由はそういった所にあるのですね。

 僕としてはこの領域でこのビジネスをやっていくためには、ソーシャルネットワークのような極めてプラットフォーム指向が強いものをちゃんと設計し、運営するという能力は必要だと思っていますし、グローバルに拡大していく最中で開発のオペレーションにスケーラビリティが求められるのですが、このスケールに追いついていくための企業としての基礎力や財務基盤も当然必要だと思っています。

 それらに加えて、どんなに仕組みが優れていて企業体力があっても、アバターが可愛く、格好よくなかったらその時点で終わりなんです。なのでもう1つ、コンテンツとして魅力的なものを創り出す能力と、これらが全て必要だと思っています。そういう意味でいうと、REALITYは優秀な開発者やクリエイター、ビジネス人材が集まってきており、相当いい線をいっていると思います。足りないものも多くありますが、本当に必要かつ獲得が容易ではない資質というものは持っていて、少なくとも挑戦する資格はあると。

グローバルにスケールするために人材が必要

――そこを踏まえつつ、勝負するために必要なものや補強したい部分などがあれば教えてください。

 人ですね。純粋に開発者です。人材以外はそれなりに手に入りやすい環境になっていますが、サービス開発や運用していくための人材は非常に希少ですし、一朝一夕に増やせるものではないので、人材を集めていくというのが重要かつ最もクリティカルな課題です。

――2~3年で100億規模の投資をすると表明されていますが、お話を聞くと、投資は主に人材にあてる形でしょうか。またこの先のロードマップみたいなものがあれば教えてください。

 資金の使途は事業投資で、多くを人材に割り当てます。ロードマップとしては、まずは海外対応の充実を最優先に考えています。今は英語版と日本語版しかなく、アプリ内のイベントは日本向けにしかできていません。そこを、世界に対しても日本水準にできるようにしていくと。当然ここから3D空間を活用したコンテンツをもっと増やしたいと考えています。

――最後に、REALITYが思い描いたように発展したとしたならば、REALITYはどういう存在になって、社会にどういう影響を与えているかという理想像を教えてください。

 グローバルに数億人アクティブユーザーがいると、フォートナイトなどがやっているように、世界的ビッグネームアーティストのライブをREALITYの中でもできるようになるでしょう。あとはREALITYを通じて出会って結婚したり、人生が開けたりということは今もありますが、それがもっと増えていって、世界中の人の人生に大きな影響を与えていくと思いますし、メタバースの仮想空間上で仕事も遊びも友達とのやり取りも全部できて、お金も稼げてそれで生計を立てていくことができるようになると。そういう世界にしていきたいですね。

 今メタバースという言葉がバズワード化してきていますが、実際に世界規模のメタバースを作ろうとすると、多くのエンジニアや3Dアーティスト、プロダクトマネージャといった人材が必要で、コンテンツをたくさん用意し、グローバルオペレーションも必要といった具合に、結構ハードルは高いと思います。そして、ここに本気で投資してチャレンジする日本企業は多くはないと思います。メタバース構築に本気でチャレンジしたい人にとっては、REALITYは魅力的な機会だと思いますし、そう思っている方と一緒に開発、事業を展開していきたいです。

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