「REALITYは世界で大きく成長する可能性がある」--グリーが狙うメタバース事業の勝算

佐藤和也 (編集部) 石田仁志2021年08月24日 12時00分
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 テキスト、動画、ゲーム、音声といったさまざまなSNSが隆盛を極める傍らで、「メタバース」と呼ばれる、新たなネット上の仮想世界を構築する動きが広がりつつある。Facebookが独自のメタバース環境を構築するための新組織立ち上げを発表して注目を集めるなかで、国内ではグリーもメタバース事業に参入することを発表した。

REALITYにおけるメタバースの世界観イメージ
REALITYにおけるメタバースの世界観イメージ

 グリーは子会社のREALITYが展開してきた、スマートフォン向けバーチャルライブ配信アプリ「REALITY」のサービスを中心としたメタバース事業を軸に、グローバルでの事業成長を目指すという。ネットの新領域で、世界の巨人たちを相手にどう戦っていくのか。REALITYの仮想空間にアバターとして登場している、REALITY代表のDJ RIO氏(※現実世界ではグリー取締役 上級執行役員兼REALITY 代表取締役の荒木英士氏)に、同社が描くメタバースの世界と今後の事業展開について聞いた。

REALITY代表のDJ RIO氏
REALITY代表のDJ RIO氏

メタバースと名乗ることで発展的な議論が生まれる

――メタバースという言葉がにわかに注目を集めていますけども、なぜグリーとしてこのタイミングでメタバース事業への参入を発表し、REALITYが展開してきたライブエンターテインメント事業をメタバース事業と定義しなおしたのでしょうか。

 REALITYは、3年前からアバターを使ったバーチャルライブ配信アプリサービスを提供しています。最近になってメタバースという言葉や、それが意味するものが認知され、発信側での定義も定まってきたところで、それらがまさに我々が当初から「こういうものを作ろう」と思っていたものと重複度が高かったのです。そこで、改めて自分たちが目指す方向性を定義し、社内外に宣言することが大事との思いがあって、このタイミングでの発表となりました。

 やはり、“ライブ配信”だと名乗っていたら、ライブ配信としての進化しかしないと思います。自分たちが“メタバース”だと定義することで、「メタバースだったらこういうものが必要」とか、「こういう発展をしていかなければ」というような社内の議論も起きますので。

人類総アバター化時代を予見する根拠

――RIOさんはもともと、REALITYを始める段階から人類総アバター時代がくることを見据えていたと話されたこともあったようなのですが、なぜそう思われたのでしょうか。

 人々の生活の中で、オンラインを使う比重がどんどん増えています。仕事でもSlackなどを使いますし、友達との連絡にはLINEを使い、夜になったらオンラインで繋がった人たちと多人数でゲームで遊ぶといったように、生活のかなりの部分がデジタル、そしてネットワークを介しておこなわれるようになっています。人によって比率は違うものの、軽視できないレベルに来ているのが社会の実情です。

 今はスマートフォンの時代なので、僕らは小さい画面をのぞき込んで文字を打ったりスワイプしたりしている訳ですが、VR(仮想現実)やAR(複合現実)が普及してきて、皆がそういうデバイスを日常的に使うようになると、スマートフォンの画面を通してデジタル空間にアクセスするのではなくて、自分が情報空間の中にいる状態になります。例えば、目の前に見えているものに情報がオーバーレイして表示されるとか、VRであれば視覚が完全にオーバーライドされて3D空間の中に自分がいる状態になる訳です。

 それがどの領域から起きてくるかというと、まずゲームが入り口となり、徐々に友達との交流や、YouTubeなどで動画を見るという体験が置き換わっていくと思います。仕事をする上でも、3Dの方が都合が良いケースでは3Dベースになっていくでしょう。Zoomにしてもウェブカメラで映した平面の画像をタイル状に置いていくよりも、目の前に見えていた方がいいわけですから。つまりみんなが触れるコンピューティング環境が2Dベースから3Dベースになり、それを一人称視点で操作するようになるのです。

――そこで自分をしっかりと表現する存在が必要になると。

 そうですね。その3D空間内で自分が見えている視界と同じ空間が広がっているのに、その中に丸いアイコンと名前だけがぷかぷかと浮かんでいて、それに向かって話しかけるのではリアリティがありません。成立はするだろうけどそれでは物足りないですし、情報量が大事なので、表情や動き、身振り手振りを見せようとしたら体が必要になります。

 そうなると、デジタル空間上にアイコンとニックネームの代わりに体をもって社会参加したり、仕事をしたり遊んだりすることが一般的になっていきます。今、ソーシャルメディアのアカウントを持っている人は世界で数十億人いますが、ゆくゆくはそのレベルでアバターを使って日々発言や発信をしていくことは、全く違和感なく想像できると僕は思っていて、それを人類総アバター化と呼んでいる理由です。

世界に広がりつつあるアバター文化

――グリーはかつて、2007年にモバイルSNSのGREEで「仮想空間サービス」という名前を打ち出してアバター機能を提供していました。確かに日本人であれば、以前からもアバター文化になじみがあるように思います。

 MobageやGREEなどで、昔からアバターに親しんできたと言えます。ただ今では、「マインクラフト」や「フォートナイト」、「Apex Legends」などの多くのゲームがアバターで動くようになっていて、全世界で何億人もの人々がアバターやスキンを買い、それを自分のキャラクターとして使うという行為をみんなやっているので、今ではアバター文化は世界に広がっていると思います。

――仮想空間サービスと打ち出した当時からも、今のメタバースと呼ばれる未来をイメージしていたのでしょうか。

 当時CNETに掲載していただいた記事(※2007年7月10日掲載「GREE、モバイルSNSで仮想世界サービスを開始」)に載っているイメージ図を描いたのは僕なのです。なのでよく覚えていますが、コンセプトは同じですね。当時のコンセプトは、アバターを中心としてペットもいて釣りもできて庭も作れるという仮想空間が広がっていて、その中で暮らすというもので、あの頃の技術や普及しているデバイスのなかで表現したのが当時のガラケーサービスとしてのGREEです。

2007年7月10日掲載「GREE、モバイルSNSで仮想世界サービスを開始」より、当時掲載されたGREE仮想世界サービスの利用イメージ
2007年7月10日掲載「GREE、モバイルSNSで仮想世界サービスを開始」より、当時掲載されたGREE仮想世界サービスの利用イメージ

 ただし、今ではできるものが全く違ってます。根本的な思想は変わっていませんが、今なら技術的にもデバイス的にもできることは増えているし、何より人間側がそれに慣れています。今なら、より理想形に近いものができると思います。

ユーザーの8割が海外、4割が自ら配信

――REALITYを運営してきたなかで、これまでの振り返りや手ごたえなどをお話しください。

 足元では、非常に手ごたえを感じています。特に2020年の春頃からコロナ禍で人々が家にいる時間が増え、人と会うことが難しくなった時期から、オンライン上で誰かと一緒に過ごせるサービスが増えていて、REALITYもその恩恵にあずかって順調に伸びてきました。

 2021年に入ってからは、海外展開を本格的に開始して、今はアクティブユーザーの8割以上が海外のユーザーになり、約4割が自ら配信を行っています。日本以外でも日本のアニメ調のアバターでライブ配信をするという行為が、こんなにすんなり受け入れられてユーザーが増えているのはポジティブなサプライズでした。

――8割以上が海外ユーザーということですが、Facebookがメタバースとうたっている時のアバターの姿と、日本のアニメ調なアバターの姿で違いがあると思うのですが、海外の人が日本的なアニメルックなアバターを好むという傾向はあるのでしょうか?

 日本の方、海外の方という見方をすると雑な議論になってしまうので気を付けなければいけないのですけど、まず言えることは、僕たちが使っているような日本のアニメテイストの絵柄が好きな人は、マジョリティではないにせよ、世界中にたくさん存在するということです。しかも日本の先人たちであるアニメやゲームを作ってくれている方々の活動の成果として、ファン層は凄く広がっています。

 今まではファンがたくさんいたのに、限られたチャネルや海賊版でしかコンテンツを入手できませんでしたが、ネットフリックスやAmazon Primeでたくさんのコンテンツを提供できるようになったことで、ここ5年くらいにおける世界での日本のアニメカルチャーの伸びは非常に大きくものすごく、我々もその恩恵を受けています。

 ただ、我々のサービスが世界中のいろんな文化圏のあらゆる人々に受け入れられているということではなくて、世界中にいる日本のアニメファンとか、VTuberが好きな人たちから広がっているということです。その人たちはマイノリティかもしれないが、世界中合算すると大勢いたということだと思います。

アバターが配信に対する敷居を下げる

――アプリユーザーの4割が配信者という数字は、すごく高く思えます。

 特に同業者にはわかってもらえると思いますが、これは相当な数値だと感じてます。YouTubeを見る人が世界中に10億・20億といますが、動画を投稿している人がどれくらいいるかというと1%に満たないでしょう。Instagramでも写真を投稿せずに見るだけの人が多いですし、それに比べると参加率は高いと思っています。

――それは顔出しでなく、アバターだからということでしょうか?

 いくつか要因があると思っています。海外ユーザーから取ったアンケートの回答にあったのですが、Twitchなどで配信をしていたけど、顔出しはしたくないので声だけで配信をしていました。でもそれでは人気が出ないのだそうです。その点、REALITYを使うと、キャラクターを使用してバーチャルな顔で顔出し配信が出来るのが、いいといいます。ですので、顔出ししないことによる抵抗感が低いという部分での広がりは確かにあると思います。

 もう1つは、サービスの設計です。配信に対するハードルを下げる活動や、みんなが配信をしたくなるような仕掛けや仕組みづくりを細かくやっているので、それが効いているのだと思います。

――配信するという行為そのものにも、一般の人にとって敷居が下がっているように感じられます。

 それはあります。世代の差は結構大きいですが、例えば今の60歳以上の方はネット上で何かを書いて発信する事には抵抗があった人が多いと思うし、今でこそFacebookを使っている人も多いですが、ネット上に名前と顔を出して何かを表明するということに対する抵抗感は凄く強かったと思うんです。

 今の30~40代位までであれば、SNSに食べたものや犬の写真、旅先の写真を上げることは普通ですよね。それと同じように、今の20代以下にとってライブ配信という行為は別に大した話ではないんです。そういう基準値の違いみたいなものは世代と共にどんどん下がっていますし、逆にかつてSNSは若者しか使っていなかったのに今では中高年も使っているように、きっとライブ配信という行為も徐々に上の世代にも浸透していくと思います。

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