クラウドゲーミングの最大の問題は、選んだゲームサービスと自分のゲームライブラリーが断絶されていることだ。LunaでもStadiaでも、ユーザーはそれぞれのプラットフォームで動作するように特別に設計されたゲームを購入する必要がある。つまり、ユーザーが手にするのは、1つのサービスでしか動作しないストリーミング専用のバージョンということだ。
筆者は普段、それに不満を感じることはないが、既存のライブラリーを同期する機能や、ローカルPCとストリーミングサービスの間でクロスプレイする機能もない。クラウドゲーミングのパイオニアであるOnLiveが2015年にサービスを終了したとき、ユーザーが購入したゲームもそれとともに消滅した(「Steam」版も含まれていた少数のゲームは除く)。
少なくとも、GeForce NOWでは、SteamやEpic、Ubisoftのかなり多くの既存ゲームのタイトルをプレイできるが、時間の経過とともに、多くの人気ゲームがこのカタログから姿を消している。完璧ではないが、筆者はSteamのような老舗のストア経由でゲームを購入した後、ボーナスとしてクラウドサポートを受けるというアイデアが気に入っている。
「Hades」や「Fall Guys」など、興味深い新作ゲームの多くがクラウドサービスでは利用できない。これら2つのゲームは、タブレットや「MacBook」でクラウドサービスに接続して短時間楽しむのに最適であるにもかかわらずだ。
限定的にしか提供されていないタイトルもある。「Baldur's Gate3」は、Stadiaでしかストリーミングされない(ゲーミングPC用にSteamやgog.comからダウンロードすることは可能)。GeForce NOWは、「Star Wars: Knights of the Old Republic」のストリーミング版を提供しているが、それよりも素晴らしい「Star Wars Knights of the Old Republic II: The Sith Lords」(KOTOR II)は提供していない。さらには、クラウド経由でプレイするためだけに購入したゲームが消滅するということもある。例えば、「Call of Duty」や「Fallout」「Elder Scrolls」などのシリーズは突然、GeForce NOWから姿を消した。
クラウドゲーミングの現状は、コンシューマー向け仮想現実(VR)の初期の頃(「HTC Vive」と「Oculus Rift」が発売された2016年頃)をまざまざと思い出させる。つまり、うまく機能することもあれば、機能しないこともあり、起動するまでは、どちらに転ぶか分からない。
多くのクラウドゲーミングで、最初のいくつかの段階では快適にプレイできるように感じるが、その後、徐々にラグが発生する。「Control」から「Borderlands 3」まで、すべてのファーストパーソンおよびサードパーソンシューティングゲームで、そのように感じることがある。Stadiaの「Destiny 2」のように、特にうまく最適化されていると感じられるゲームもいくつかあるが、こうしたサービスが最も快適に動作するのは、「Gears Tactics」や「Disco Elysium」、「Divinity: Original Sin 2」など、もっと動きの遅いゲームやターン制のゲームをプレイしているときだと感じた。ゲームを台無しにするようなラグが発生していないときでも、ネットワークに問題が発生しているというメッセージがサービスに表示され、体験の没入感を奪われてしまうこともある。
クラウドゲーミングサービスを10年間にわたって追い続け、試してきた経験から言わせてもらうと、クラウドゲーミングのパフォーマンスは時間の経過とともに確実に向上したと言えるだろう。だが、2009年に初めてOnLiveを試したときから、12年という期間にふさわしい進化を遂げているだろうか。NVIDIAが2014年に発表した初期のクラウドゲーミングサービス「GRID」と比べて、7年という期間にふさわしい進歩を遂げているように感じられるだろうか。
筆者はクラウドゲーミングに対して長期的に大きな信頼を置いている。2013年にはソニーとMicrosoftに対し、次のコンソールでクラウドゲーミングに注力するよう呼び掛けた(これは少々早すぎたのかもしれない)。しかし、筆者だけではなかった。伝説的なゲームデザイナー、John Carmack氏は2011年の「E3」で筆者にこう語っている。
「私は現在の(クラウドゲーミング分野の)プレイヤーがいずれ大成功を収めるとは必ずしも考えていないが、これが5~10年後に巨大な市場となっていることはほぼ間違いないだろう。純粋に技術的な観点から見て、極めて多くのプラス要素が存在している」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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