ahamoなどに注目が集まりがちだが、3社は他の料金プランに関しても見直しを図っている。その1つがメインブランドで提供する大容量プランなのだが、ポイントとなるのは各社ともに、料金引き下げだけでなく5Gでのデータ通信無制限を実現した点だ。
実際、NTTドコモが5Gの通信量が使い放題になる「5Gギガホ プレミア」を打ち出したほか、ソフトバンクも「メリハリ無制限」でデータ通信無制限を実現。既にデータ通信無制限プランを提供しているKDDIも、割引をシンプルにしながら料金を引き下げた「使い放題MAX 5G」を打ち出しており、テザリングの扱いなどに違いはあるとはいえ、5Gの大容量プランが無制限になったという点では差がなくなったといえる。
そしてもう1つは従来サブブランドを中心に提供されてきた小容量プランの見直しで、中でも大きなインパクトを与えたのがKDDIだ。KDDIは「UQ mobile」ブランドの新料金プラン「くりこしプラン」を発表しており、最も安い「くりこしプランS」はデータ通信量が3GBと小量ながら、割引適用の必要なく月額1480円という価格を実現している。
ソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドの新料金プラン「プランS」(月額1980円で通信量3GB)も、固定回線や家族に係る割引を適用すれば同じ価格になる。ただくりこしプランSは割引の適用が不要で1500円前後と、MVNOの料金プランの水準を実現していることに大きな驚きがあった。
UQ mobileは既にMVNOではなく、KDDIのネットワークをそのまま活用できることから混雑時の通信速度低下がしづらい上、数が少ないとはいえショップでのサポートも受けられるなど、独立系のMVNOと比べ圧倒的な優位性を持つ。そうしたことからくりこしプランSは“MVNOキラー”と言っても過言ではなく、携帯大手の値下げや楽天モバイルの登場などで疲弊している独立系のMVNOに引導を渡すことにもなりかねない。
一方で、NTTドコモは低価格のサブブランドを持たないこともあり、低価格帯の対抗策はまだ明確に打ち出していない。若い世代はahamoで獲得できるかもしれないが、ワイモバイルやUQ mobileは最近シニア層の獲得に力を入れるなど、狙うターゲットの幅が広いだけに対抗策が急がれる所だ。
同社としては低価格帯の強化策として、自社で手掛けるのではなくMVNOと協力しながら進めていく方針を示している。ただMVNOは携帯電話会社から回線を借りてサービスを提供する立場上、ネットワークの幅が細く混雑時の通信速度が低下しやすいという構造的な問題を抱えており、かといってその解消のためにNTTドコモが資金などの面で特定のMVNOを支援・優遇するようなことがあれば、独立系MVNOとの公正競争上大きな問題となってしまうだろう。
NTTドコモは年配の契約者が多く、その多くが小容量のプランを契約している。それだけにもし、他社のサブブランドに類する料金プランをNTTドコモ自身が提供してしまえば、そちらに顧客が大量に流れ大幅な業績の悪化を招きかねない。利用者が多い小容量の「ギガライト」だけは見直しをしていないのもそれが理由だろう。
しかしだからといって何もしなければ、UQ mobileなどに顧客を奪われてしまう。この領域でNTTドコモが打てる手は非常に限られてくるだけに、小容量プランの処遇は今後、NTTドコモを同社を大きく悩ませることになるかもしれない。
そしてもう1つ、今後を見据える上で注目されるのは、ahamo等の登場で価格面での優位性が大きく失われた楽天モバイルだ。楽天モバイルは現在、月額2980円で自社エリア内でのデータ通信が使い放題となる「Rakuten UN-LIMIT V」の1プランにこだわっているが、大手3社と比べエリア面で圧倒的不利な状況にある中、既存プランだけでは競争力を落としかねないだけに、次の一手が大きく問われることとなりそうだ。
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