レストランは「答え合わせ」の場所に--格之進が開拓する今後の外食産業のあり方

 観光と外出の自粛、休業や営業時間短縮の要請などで、外食産業はかつてない危機にさらされている。テイクアウトや宅配に対応する選択肢はあるものの、それで急場をしのいだところで、先を見通しにくい今の社会情勢では経営し続けること自体がリスクにもなりかねない状況だ。

 しかしそうした逆境のなか、都内を中心に複数店舗を展開する岩手のブランド牛肉専門店、格之進の取り組みが、これからの飲食店のあり方を体現する一つの成功例となっている。

 厳選素材の牛肉・ハンバーグを取り扱う高級焼肉店、格之進の運営元である門崎は、来店客の減少や休業要請などの影響で店舗の営業が困難になったのを機に、自社ウェブサイトを通じた肉のオンライン販売へと本格的に乗り出した。

 さらに、肉の焼き方などをビデオ会議で教える商品購入者限定の「格之進オンライン肉会」を開催。“プロの技”を自宅にいながら得られる場として好評を博している。リアル店舗運営からオンラインへ軸足を移した同社が見据える、これからのあるべき外食産業の姿とはどういうものなのか、門崎の代表取締役 千葉祐士氏に話を聞いた。

門崎 代表取締役 千葉祐士氏
門崎 代表取締役 千葉祐士氏

オンラインの方がより人間的なコミュニケーションに進化できる

――格之進は、本社がある岩手県内のほか、東京・六本木やお台場など関東圏を合わせて13店舗を展開されています。昨今の情勢による店舗への影響はどうでしょうか。

 もちろん、ものの見事に当社も新型コロナウイルスの影響を受けました。特に売上構成比が大きく変化しています。これまでメインだった実店舗の売上が下がった代わりに、通信販売の比率が大きくなり、店舗と通信販売の比率が逆転しました。ただ、自然と通信販売の方で収益が上がるようになったわけではありません。通信販売が好調なのは、当社が以前からホームページを「隠れた情報資産」として大切に育ててきたからだと思っています。

 格之進は、O2O(Online to Offline)をベースにしながらCSA(Community Supported Agriculture)という戦略を組んでいます。私はRestaurant CommunityでRCSAと呼んでいるのですが。店舗ではお客様が食事をして喜んだり楽しんだりしていただき、イベントも取り入れながら事実・ブランディングを作る。それをオンラインで拡散、共感してもらって、店舗に来ずとも参加してもらえるような体制をつくり、オンラインで商品を買ってもらう、という流れです。

 その意味で、自社のホームページはすごく重要な情報資産で、いわば企業の評価に含まれないその「簿外資産」をずっと大切にしてきたからこそ、今回の難局を乗り切れたんじゃないかと思うんです。

――具体的に、ホームページやその周辺でどんな施策を行ってきたのでしょうか。

 ホームページでお肉にまつわる情報発信をずっとしてきたのが1つ。それと、ホームページへの流入数をどう上げていくかを考えてきました。流入数に対するECでのコンバージョン率(ユーザーの購入率)は一定のパーセンテージでだいたい決まっていますから、ホームページにさえ来てもらえれば売上はそれに応じて上がります。だから流入数をとにかく上げたい。

 コロナ禍で、世の中の動画への注目度がますます高まってきていることもあって、当社でも動画経由での流入比率が上がってきました。以前から動画コンテンツは配信していましたが、お肉の解体や焼き方などを紹介する動画を増やして、6月からはスタッフ5~6人体制に強化しています。そうやってホームページへの流入数を増やす施策を打ってきたのもありますし、「おうちで格之進」というコンセプトで、自宅で気軽に楽しめるリーズナブルなお肉セットを販売したことについても大きな反響がありました。

「お肉の気持ちになって」――トングの持ち方から解説するオンライン肉会の千葉氏の様子
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