パナソニック、当たり前を変える取り組み--コロナ禍で響く「困難こそ発展の好機」 - (page 2)

パナソニックはSociety 5.0で貢献をしていく会社になる

 パナソニックでは、「モビリティ」、「ホーム」、「ビジネス」の3つの市場において事業を行っている。研究開発においても、その領域をターゲットとしている。

 モビリティでは、障害物検知、⼈状態認識などの「自動運転」、次世代パワーデバイス、リチウムイオンバッテリーシステム、⾮接触給電システムなどの「エネルギー最適化」に取り組み、ホームでは、顔認証⼊場や顔決済セルフレジ、会員制施設の本⼈確認、不審者検知といった「日々気づきがあるくらし」への取り組みと、くらしデータ分析、感情推定、可変住宅といった「くらしの起点」から研究開発を進めているという。

 また、ビジネスでは、無⼈サービスポット(⾃動決済)、無⼈配送ロボティクス、⾃動棚卸/補充、⾏動予測などを活用した「次世代店舗/施設」、労働能⼒向上や⾃⽴移動ロボット、物流/搬送ロボティクスといった「工場/物流効率化」に取り組んでいるという。

 「キーデバイスや製造、エネルギーといったものをベースに、AIやIoT、ビッグデータ、センシングテクノロジー、ロボティクスといった技術を組み合わせて、これをデジタライゼーションやネットワークでつなぐことで、モビリティ、ホーム、ビジネスという事業領域において、くらしと世界をアップデートしていくことになる」とした。

 また、「パナソニックは、Society 3.0と言われる⼯業社会の時代に大きな成長を遂げてきた会社である。超スマート社会と言われるSociety 5.0は、サイバーとフィジカルが融合した時代であり、Society 4.0の情報社会と、Society 3.0の工業社会が融合する世界ともいえる。これからのパナソニックは、Society 5.0で貢献をしていく会社になる」と語った。

 さらに、同社が打ち出している「パナソニック環境ビジョン2050」についても触れ、「より良い暮らしと持続可能な地球環境の両立を目指している。パナソニックが事業活動で使用するエネルギーの削減と、パナソニックが製造した機器を利用する際のエネルギーの削減を進める一方で、それを超えるエネルギーの創出、活用を進めている。パナソニックは、いま一度、環境との両立を強めたいと考えている。これは、SDGsにおける重要な課題でもある。パナソニックは、世の中と共存経営を目指し、役立つ会社を目指している。パナソニックは、SDGsの考え方が根づいている会社である」とも述べた。

 ここでは、省エネ性の高い照明などの商品づくりと、クリーンエネルギーの活用に取り組むことに触れながら、「省エネを追求したデバイスの開発と、制御するアルゴリズムの開発が鍵になる。また、クリーンエネルギーは、天候などにも左右されるため、蓄電池の技術が重要になると考えている。自動車向けの蓄電池は、ガソリンで走行しているクルマのCO2をゼロにしており、その点でも環境に貢献できる。また、太陽光電池は売却したが、次世代太陽光発電は先進技術開発として進めている」と述べた。

 一方、2020年度の新たな研究開発体制についても説明した。2020年度から新設したテクノロジー本部は、従来のAIやデジタル系の研究開発と、材料やデバイスの研究開発に分かれていた組織を一本化したものだ。また、生産技術を行うマニュファクチャリングイノベーション本部も、技術とモノづくりの一体化を目指した組織として設置。2019年から本部に格上げしたデザイン本部も、研究開発体制のなかで技術とデザインを一体化。各カンパニーと連携しながら、全社デザインを推進する司令塔としての役割も担う。

 また、イノベーション戦略室は、全体の研究開発戦略を司る役割を担い、エネルギー基盤技術開発室は、全社規模での環境戦略に取り組むことになる。さらに、各カンパニーの技術本部や開発本部、イノベーションセンターと連携し、戦略を共有しながら研究開発を推進することになる。

研究開発体制
研究開発体制

注目組織「くらし基盤技術センター」はソフト中心にくらしをアップデート

 注目される組織が、くらし基盤技術センターである。2019年度まではビジネスイノベーション本部の名称で、「Home X」などに取り組み、サービスとプラットフォームの両方を担当していたが、このうち、サービス部門は本社直轄部門として、2019年10月に、パナソニック入りした松岡陽子氏が統括する形で、くらし事業戦略本部として独立。シリコンバレーのIT企業出身者ならではのノウハウを活用する一方で、ソフトウェアを中心に、くらしをアップデートするための基盤技術を、くらし基盤技術センターが担うことになるという。

 「サービス事業はモノの売買でリターンを得ることではない。パナソニックは、これまでに何度もサービスに取り組んできたが、ハードウェア事業と同じ経営管理指標でやってきたためにうまくいかなかった。本社直轄とすることで、経営管理のところにまで踏み込んでやっていくことになる。松岡氏のサポートには経理部門出身者を置いているのもそのためだ。一方で、家電製品がネットサービスに対応するためには、ソフトウェア基軸で、ハードウェアの設計をしなくてはならない。そのためにはソフトウェアもハードウェアも構造を変えていく必要がある。商品が購入後に、サービスとともに進化していくことになる」とし、「それらの機器が接続するクラウドでは、データを預かり、分析し、処理をAPI化してつなげる必要がある。パナソニックが販売したハードウェアの価値を、継続的に高めるには、クラウドを通じたアプリケーションが必要であり、自らクラウドを運用する必要があると考えている。メガクラウドプロバイダーのリソースも活用しながら、API接続して、価値を提供することになる」と述べた。

 なお、くらし事業戦略本部の具体的な取り組みについては言及しなかったが、今後、松岡氏から説明が行われる可能性を示唆した。

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