では、飲食店がこれから生き残っていくために何をすべきなのか。小田島氏は、新型コロナウイルスの感染拡大の第2波が発生することも考慮したうえで、まずは事業の継続性に直結する「収益性向上」の大切さを訴えた。
同社においては、データに基づいた適切な施策や業務の効率化で収益性を高めてきたことで、数カ月間の休業にも耐えられるキャッシュフローをもち、スムーズな資金の借入も可能になっていると説明。今後の投資においてもチャレンジが無駄にならないよう、「出血を抑えるデータ経営」が必須になるとした。
こうした事態下で政府・自治体が企業向けに推進する補助金・給付金制度を迅速に活用するためには、社長など限られた人が多大な手間をかけて対応しなくても済むよう、バックオフィスの整備は不可欠と小田島氏。資金が不足したり、第2波がいつ襲ってきたりしても対策できるように、銀行の融資相談には早めに動くべきだと語った。
また、「本当に今の自分たちのビジネスだけでいいのか」を見つめ直し、飲食業以外からも売り上げることができるように事業ポートフォリオを見直すことも重要だとした。たとえばデリバリーやテイクアウトはもちろんのこと、ECサイト運営やシステム開発・販売など、カバーする事業セグメントを複数に分散させておけば、1つの事業が停滞しても会社として致命的な損害に至らずに済む可能性がある。
さらには消費者へ安心感を提供することも飲食店にとってこれからは1つの付加価値になるとし、実際にゑびやでは店内の混雑状況を入店前に確認できるシステムを構築したほか、ウェブ会議システムを用いたリモート接客による遠隔販売にも取り組んでいる。このように、既存事業の脇にある新しい事業を見つけることで「サービス業全体に新しい価値が生まれてくるのではないか」と小田島氏は付け加えた。
LINEの藤井氏も、多くの飲食店と対話していくなかで、各店舗でイートインとデリバリー・テイクアウトの比率を同程度にするような、事業ポートフォリオの構築が急務であることを再確認している。テクノロジーを活用する打開策としては、GPSやビーコン、Wi-Fiなどを使った顧客の位置情報を応用したマーケティングの最適化、飲食店の主業務を中断させないためのAIによる自動電話応答、ARを活用したメニューの多言語化などが考えられるとした。
その他、昨今のテレワークのトレンドにあわせて、使っていない時間帯もある店内を企業の業務スペースや商談スペースとして有効活用する案、飲食店の従業員がピーク時間の異なるデリバリーの配送員として活動する「雇用シェア」の取り組み、在宅勤務の社員に対して企業がランチ・デリバリー料金を負担する福利厚生が増えてくるであろうことを見越した企業とのタイアップなど、いくつかのアイデアも披露した。
ただ、既存の飲食店がデリバリーやテイクアウトを始めるにあたっては、「デリバリーに向いているメニュー、向いていないメニューがある。(イートイン用の)メニューをそのまま展開するのではなく、時間が経過してもおいしい、独自のメニュー作りが大切。価格も含めて変える必要がある」とも強調する。
ウェブ上の飲食店に対するレビューも、公平性という観点では「店舗ではなく、メニューに対して評価するようになると面白いのでは」と語り、すでにメニューごとにアンケートを取っているという、ゑびやの小田島氏も同意していた。
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