テックを武器に金融、不動産業界を切り開く--アルヒが次に目指す新ビジネスとは

 国内最大手の住宅ローン専門金融機関であるアルヒが、新たな局面を迎えている。2019年12月には、住宅ローン不正利用検知システム「ARUHIホークアイ 1.0」が本格稼働、2019年度内には、不動産テック会社と不動産人材紹介会社の2つを子会社として設立することを発表し、住宅ローン専門金融機関から不動産、金融の両方を手掛けるテック企業へと変わろうとしている。

 住宅ローンの取り扱い額は現在国内第5位。「あと数年で日本最大になる」と意気込むアルヒ 代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏と執行役員CTOの宮脇訓晴氏に、本業である住宅ローン事業を強化しながら、新たなビジネスを手掛けるその理由について聞いた。

左から、アルヒ 企画本部シニアアソシエイトの大場麻未氏、代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏と執行役員CTOの宮脇訓晴氏
左から、アルヒ 企画本部シニアアソシエイトの大場麻未氏、代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏と執行役員CTOの宮脇訓晴氏

もっと楽に、簡単に住宅ローンが組める世界を実現する

――2015年の社長就任から約4年、会社のイメージや方向性を大きく変えられてきました。

浜田氏:元々はSBIグループの住宅ローン専門会社でしたが、住宅ローンにとどまらないチャレンジがしたいなと。会社自体も今後の方向性を模索していた時期でもあったので、テック系の会社に変えようと思いました。

 私自身、金融や不動産業界は未知の領域でしたが、個人的に不動産投資をしていた経験などから、紙の資料が多いこと、マーケティングなどが活用されていない現状について疑問を持っていました。では、その部分から変えていこうと。

――デル・コンピュータの代表取締役社長、HOYAの取締役兼代表執行役最高執行責任者などを務めた今までのキャリアからは、全く違う業界ですよね。

浜田氏:始めた当初は、住宅ローンの名前すらピンと来ない感じだったのですが、住宅ローンをなぜ借りるのかといったら、それは、気持ちの良い、住心地のいい「いい家」に住みたいからですよね。私たちはそんないい家に住むためのお手伝いをしているわけですが、アナログのやり方では、面倒だし、時間もかかる。もっと楽に、簡単に住宅ローンが組める世界を実現するのに、テックの力が欠かせないと思いました。

――当時の金融、不動産業界の印象はいかがでしたか。

浜田氏:前近代的であるということと、もう一つはマーケティングやブランディングといった考えが浸透していないと感じました。例えば、ある銀行が新商品を出すと、そのほかの銀行も似たような商品を出す。それでは市場に競争力も生まれません。そうした関係性を断ち切って、私たちはテクノロジーで武装した新しい住宅ローン専門会社を目指そうと思いました。

 社名の「アルヒ」は、人生は「ある日」の積み重ね、住宅を持つ日は、お客さまにとってかけがえのない「ある日」であるという意味を込めています。英文字のARUHIのUは「YOU=あなた」にかけていて、あなたのある日が光で満ちますようにという願いです。そんな大切なある日を応援するテック系のサービス会社になろうと思いました。

――実際にどんなテクノロジーを導入されていますか。

宮脇氏:RPA、AI、ウェブ、アプリを中心に導入を進めています。2018年までは金融機関としてIT投資を続けてきましたが、2019年度は、不動産取引へのIT投資を始めたほか、不動産テックベンチャー企業と組んで活動もはじめました。

浜田氏:住宅ローン関連では、「ARUHIマガジン」というオウンドメディアを運営して、家を探す段階から寄り添えるような仕組みづくりを進めています。また、RPAを積極的に導入することで、大量にあった紙の書類の削減に取り組んでいます。

宮脇氏:住宅ローンは、家を探して、見つけて、決定した後、最下流で待ち受けているものでしたが、そのプロセスを変えたい。住宅ローンがいくら借りられるのかがわかれば、住宅の買い方自体も変わっていきます。このあたりは、住宅ローンテック会社のiYell、不動産事業者に特化した営業支援ツールを提供するCocolive、住宅の購入・売却時に不動産エージェントを検索し、仲介を依頼できるサービス「EGENT」を運営するEQONなどの不動産テック会社とともに取り組んでいます。

――住宅ローンの審査が通らず契約が結べなかった時のショックは大きいですから、不動産会社にとってもありがたいサービスですね。

浜田氏:お客様はもちろんですが、不動産会社、さらには売り手の方にも影響が大きい部分ですので、早急になんとかしたいと思い、「家探し前クイック事前審査」を提供しています。

宮脇氏:家探し前クイック事前審査は、運転免許証をスマートフォンからアップロードするだけで、借り入れできる金額がわかるサービスです。最短1分で回答できるスピードが売りで、不動産会社の店頭で接客ツールとして使っていただいたりもしています。物件案内前にいくらまで借りられるのかを、お客様と不動産会社の担当者が共有して認識することで、家探しが変わってきますから。

――最短1分というスピードもすごいですね。

浜田氏:テクノロジーの力で、面倒くさい不動産取引や住宅ローンを、簡単で、早く、安くしようというのがアルヒのコンセプトです。実際、変動、固定ローンともに国内最低水準の低金利を実現しています。そこに簡単便利と、スピードを加えたら大勝できる。それを実践しています。

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