アカツキが「対人戦カジュアルゲーム」を開発する狙い--ソシャゲや若手育成の課題解決に

 アカツキは、PvP(Player versus Playerの略。対人戦のゲーム)特化型カジュアルゲームスタジオ「Buddy」を10月に設立した。その背景には、成熟市場であるソーシャルゲームにおける課題や、若手育成の目的もあるという。その経緯や狙いを同社の担当者に聞いた。

 Buddyは、コミュニケーションの創出にこそ、ゲームの本質的な価値があるという信念のもとに設立。開発するゲームのポリシーとして「Simple × Deep」(3秒で理解。だけど奥深い)、「Excitement First」(驚きを与えるような体験を)、「Communication」(「会話」から生まれる友情を)の3つを掲げ、世界に向けたPvPゲームを生み出していくことを目的としている。

プロダクトポリシー
プロダクトポリシー

 第1弾タイトルである「TRiPAL」は、Facebookインスタントゲームとして配信。3枚の数字カードを出し合い、向かい合わせの数が大きい方が勝利というというシンプルなルールながら、読み合いや戦略的思考戦が楽しめるカードゲームとなっている。

 第2弾タイトルである「WORDWARS」も、Facebookインスタントゲームとしてリリース。英語版しりとり対戦ゲームとなっており、対戦相手の最後の文字から単語を作る内容。繰り出す文字数が多い方が、より大きなダメージを与えることができるルールとなっている。

 このほか、現在までに「Bomber.io」、「Treasure Hunt Of Pirates」「Robot Royale.io」といったタイトルもリリースしている。

絞りだした究極のスープの一滴を作るカジュアルゲームの世界

 Buddy設立の発起人である、アカツキ モバイルゲーム事業部プロデューサーの佐藤恵斗氏は、設立の背景として、自身が対戦型のモバイルゲームを熱心にプレイしていた時期があり、友人と協力プレイなどで関係が深まったという体験から、これこそがゲームの本質的な価値と思い、こうしたゲームを日本から世界へと発信していくことを考えていたという。

 あわせて、佐藤氏はこれまでソーシャルゲームの開発や運営に従事してきたなかで感じていた課題も、設立の背景として挙げた。現状のソーシャルゲーム市場は成熟期にあり、長い年月と高いコストをかけ、高いクオリティとコンテンツボリュームを出していく風潮があるとしたうえで「莫大なコストをかけ続ける状況に、懐疑的なところがある」と指摘する。

 そして高コストのプロジェクトが主体となると、若手に任せるということが難しくなり、ゲームを作って発信する場がなく、若手が育たないという状況にあると語る。

 こうしたことから、Buddyでは短い時間で作り切ることを主眼に置き、開発コストも抑えたものとすることで、若手に企画から開発運用まで任せる環境を作り、ゲーム開発の一連のプロセスを実践的に学ばせることで、若手の育成にも繋がるとしている。

Buddyのメンバーである、アカツキ モバイルゲーム事業部プロデューサーの佐藤恵斗氏(中央)、同モバイルゲーム事業部ディレクターの直井啓訓氏(左)、同モバイルゲーム事業部の折茂賢成氏(右)
Buddyのメンバーである、アカツキ モバイルゲーム事業部プロデューサーの佐藤恵斗氏(中央)、同モバイルゲーム事業部ディレクターの直井啓訓氏(左)、同モバイルゲーム事業部の折茂賢成氏(右)

 TRiPALの開発者である、モバイルゲーム事業部ディレクターの直井啓訓氏は、長年さまざまなゲームタイトルに携わり、なかでも“ミニゲーム”の開発を得意としていたという。TRiPALも以前から温めていたアイデアを形にしたものだ。

 「TRiPALは先陣をきる役割を担った。世界中のいろんな国に届けることができるという実感が得られたと同時に、Facebookインスタントゲームの市場を肌で知ることができたりと、学びも多かった」と直井氏は語る。ちなみに要因はまだつかめてないとしつつ、ゲームユーザーは東南アジア、特にベトナムで多く遊ばれていると説明する。今後はゲームデザインのシンプル性を生かし、アナログカードゲームなどほかの展開も検討しているという。

 若手育成の実例となっているのが、WORDWARS開発者であるモバイルゲーム事業部の折茂賢成氏。実は現役の大学生であり、インターンシップでアカツキに来ているという。ゼロから立ち上げて作ったタイトルであり、WORDWARSは主に米国地域で遊ばれているタイトルとのことだが、熱心にプレイしているユーザーも多いことに、高揚感が得られたと振り返る。またリリース以降も日々改修を重ねており、それを短いスパンで試せること、その成果が目に見える形で出てくるのも楽しいと語った。

 そんな折茂氏が企画を検討するなかで、特にソーシャルゲームの企画開発者が陥りやすい考え方があったと、佐藤氏と直井氏は指摘。それは“足し算をしすぎること”という。

 佐藤氏は「ソーシャルゲームがリッチ化かつ運用の長期化によって、あれもこれも入れるという考え方になってしまっているのは、課題のひとつ。カジュアルゲームは、むしろ引き算をしながら面白さを保つような、絞りだした究極のスープの一滴を作るようなもの。ソーシャルゲームの開発・運営している人ほど、いままでゲームに対して引き算しなかったか、厳選してこなかったか、という考えが抜けていた。自分自身でも大きな気づきになったところはあり、学びにもなった」、直井氏も「引き算をされているものでも、面白いと思えるものはちゃんとある。シンプルな内容と少ない予算でも、いいものができるということはメッセージとして発信していきたい」と語った。

 今後は月に1~3タイトルのペースでゲームをリリースしていく予定で、プラットフォームもFacebookインスタントゲームにこだわらず展開していくという。外部との協業も歓迎する方針で、直井氏は「アイデアはあるけど開発や発信できる場がない方にも、取り組める道を作りたい」。佐藤氏は「ユニークなことをやり続ける集団でありたい」と意欲を示した。

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