ヤフー川邊社長とLINE出澤社長が“固い”握手--個々だけでは「もう間に合わない」

 11月18日の朝8時半、ヤフー親会社のZホールディングスとLINEの経営統合が正式に発表された。同日の17時には都内で記者会見が開かれ、Zホールディングス代表取締役社長の川邊健太郎氏、LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏が登壇。「最強のOne Teamを目指していきたい」と、経営統合にいたった経緯や、両社が期待するシナジーなどについて語った。

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(左から)現ホールディングス代表取締役社長であり、新生Zホールディングス代表取締役社長 Co-CEOに就任する川邊健太郎氏、現LINE代表取締役社長CEOで、Zホールディングス代表取締役 Co-CEOとなる出澤剛氏。川邊氏は、LINEのコーポレートカラーである緑色、出澤氏はヤフーのカラーである赤色のネクタイを着用していた

 両社は、同日に開催されたそれぞれの取締役会において、経営統合に関する基本合意書を締結することを決議。2019年12月をめどに、最終資本提携契約を締結することを目指して協議・検討を進め、審査などを経て、2020年10月の経営統合完了を目指す。統合後のストラクチャーとしては、ZHDの親会社であるソフトバンクと、LINEの親会社である韓国NAVER Corporationが共同で、上場しているLINEの非公開化を目的とした株式公開買い付け(TOB)を実施。すべての対象株式を取得するとしている。

 ソフトバンクとNAVERは、50%ずつ出資するジョイントベンチャーを設立予定。新会社の傘下にZHD、その下に100%子会社としてヤフーとLINEがぶら下がる予定だ。なお、川邊氏は新生Zホールディングス代表取締役社長 Co-CEOに、出澤氏は同社代表取締役 Co-CEOに就任するという共同代表制を採用。ヤフーから取締役3名、LINEから取締役3名、社外取締役を4名選定し、コーポレートガバナンスに配慮するとしている。

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統合後のストラクチャー

川邊社長「僕はLINEのヘビーユーザー」

 川邊氏は会見で、「僕はLINEというサービスが大好きでヘビーユーザー。こんな良いサービスを是非一緒にやりたいと前から思っていた」と思いを明かす。

 数年前から両社は年に一度、新年会として情報交換の場を設けており、川邊氏は「大きいことを一緒にしましょう」と出澤氏に申し出ていたが、「ほぼ相手にされなかった」という。しかし、2019年になって反応が違ったと振り返る。「一度、お酒を入れない場で話し合いましょう」と話が進み、メンバーで初期的な感触を確認した上で、6月に親会社を含めた4社で相談。議論を重ねながら今回の統合に至ったという。

 出澤氏は、「この業界は1年で大きく変わる。我々も次の手をやっていこうとオプションを含め考えているが、いい形でパートナーシップを組めることもあり、(経営統合をするのに)非常にいいタイミングだったのが今回の経緯」とし、「最初のフランクな会話からここまでいたって非常に感慨深い。これからがスタートライン」と語った。

 なお、直近の決算の赤字要因となっていた、LINE Payへの大規模な投資が経営統合の要因ではとする記者からの質問に対し、出澤氏は、直接的なトリガーになったわけではないと否定。「あくまでも(経営統合への)パーツの一つ。より大きな手を打つための判断」とした。

統合理由は「志」と「グローバルテックジャイアント」

 統合に至る背景として、両氏は「共通して持つ大きな志」と「グローバルテックジャイアントの存在」の2つを挙げる。川邊氏は、会見中に何度も「アジアを代表するAIテックカンパニーになる」とビジョンを語り、世界を席巻するGAFAや中国のBATHに続く「世界第三極にどうにかしてなっていきたい」「個社でやっていてはもう間に合わない。だから一緒にやっていく」と語気を強めた。

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会見中、「アジアを代表するAIテックカンパニーになる」と何度も語った

 GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)やBATH(Baido、Alibaba、Tencent、Huawei)と比較して「単純な合算だと、(売上や投資、研究開発費の規模など)一緒になったとしてもすべてで桁違いの差がある。中国以外のアジアはネット産業の中では小さく、差が広がっていく。すると、あらゆる産業でデジタル化が進む際に、国力や文化の多様性まで影響を及ぼす非常に大きな課題と考えている。それが強い危機感」と語った。また出澤氏も、「インターネットは人が大事な産業だが、国をまたいで働くことができるので、お金やデータが強いところにすべて集約してしまう。“ウィナー・テイクス・オール”という勝者が総取りできる構造」と危機感をあらわにした。

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売上や投資など全体的にGAFAや中国勢と規模で差をつけられている

 また、サービスのシナジーについて川邊氏は、「非常に補完的。ヤフージャパンはメッセージングのサービスを提供できていない。一方で、LINEはEコマースにそれほど力を入れていないが、ヤフーは近年頑張っている。それぞれの弱い点を補い合える」と語る。このため、独占禁止法についても、「審査される立場」としつつも、両社で異なる分野でビジネスしていることから抵触する可能性は低いとの認識を示した。

 なお、審査完了までは具体的なアクションが取れないとし、統合後の詳細な事業プランについては言及を避けたが、国内通信のソフトバンクが5Gを開始するほか、MONET、DiDiといったMaaSに注力している。その分野でのシナジーがあり、ソフトバンクやワイモバイルユーザーに提供しているEコマースでのポイント10倍といった特典も、「ゆくゆくはLINEユーザーに提供できるかも」と川邊氏は含みをもたせた。

 こうした状況のため、PayPayやLINE Payなど直接競合する事業含め、経営統合までの1年間は別会社として切磋琢磨する関係となる。川邊氏は、「ヤフーの社員には、この1年間、LINEと思いっきり勝負しろと言った」という。出澤氏も、同様の言葉を社員に伝えたようだ。

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孫正義氏の関与は?

 今回の経営統合について、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏はどの程度関与したのだろうか。この点について川邊氏は、「この件に関しては、あまり関与してこなかったのが真実」という。「毎年の新年会から端を発して、両当事者で議論。ソフトバンクの宮内社長、ネイバーの幹部と4社で進めてきた」という。

 その後、川邊氏から今回の統合についてプレゼンしたところ「100%賛成だ。日本のため、アジアのためにやるべきだ」と賛同を得たものの、「統合前よりも便利になったり、使いやすくなったりしない限り誰からも支持されない。一緒になるからには、(個社では)いままでできなかったような課題解決につながらなければやる意味はないと言われた」と、アドバイスを受けたことを明かした。

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