アマゾン、偽レビューとは「戦い続ける」--米シニアVPインタビュー

 グローバル(北米を除く)におけるAmazonのECビジネス全般をリードする、Amazon, Senior Vice President, International ConsumerのRuss Grandinetti(ラッセル・グランディネッティ)氏がこのほど来日した。

Amazon, Senior Vice President, International ConsumerのRuss Grandinetti氏
Amazon, Senior Vice President, International ConsumerのRuss Grandinetti氏

 Amazonに20年以上勤めるGrandinetti氏は、2000年にオープンした「Amazon.co.jp」について、「非常に明確に覚えている。日本は大きなオポチュニティを持つ市場であり、我々にもチャンスだった。19年間で達成した進歩に満足している」と語る。日本市場での取り組みや投資の考えを同氏に聞いた。

——Amazonでは日本というマーケットをどう評価していますか。また、特にどのような領域に対して投資をしてきたのでしょう。

 Amazonのビジネスは急速に成長を続けてきました。現在、日本には6000人の従業員がおり、2020年はさらに1000人の従業員を雇用する予定です。同時に顧客が好む企業としてAmazonがランクインするようになりました。我々にとっては嬉しい結果です。

 グローバルでAmazonに出品している中小規模を含む企業が、商品を販売した流通総額の割合は、1999年から20年間で3%から58%に成長しています。また、現在は日本の15万前後の中堅・中小企業が(Amazonで)商品を販売しています。金額にしても、2018年の流通総額は9000億円を超えました。これらの数字が示しているように、我々は各国の経済活動に大きく寄与してきました。

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 引き続き日本においても成長を続け、Amazonのサポーターが増えることを期待しています。日本市場は優先順位が高く、新しいプログラムもいち早く提供してきました。AWS(Amazon Web Services)やAmazonプライムもそうですし、Alexaが日本語に対応したのも、英語から数えて3番目です。Kindleも同様ですが、日本語は本当に難しく、ふりがな1つとっても非常に苦労しました。日本の品質に対するこだわりに関われることは楽しい体験です。

——人手不足が続く日本の物流については、今後どのような投資をしていく予定ですか。また、日本でも「置き配」を始めました。米国と違って日本は土地が狭いといった懸念点もありますが、この届け方は普及すると思いますか。

 我々は構築したサービスのスピードを誇りに思っていますが、 これをまだまだ速める必要があります。そのため、多くの方を雇用するための投資をしている最中です。2020年には東京と九州でさらに配送のスピードを上げることができるでしょう。

 置き配は、まだ始めたばかりなので結果が出てくるのはこれからです。ですが、大事なのは顧客がどのような方法を希望するかです。Amazonの顧客は世界中でさまざまな種類の建物に住んでいます。自宅で仕事をされている方もいれば、オフィスで働く方もいるでしょう。そのため、我々は人口密度がさほど多くない場所や、出勤時にアクセスできる場所で機能する配送方法を開発してきました。

 たとえば、地下鉄のロッカーに荷物を置かせていただいたり、日本ではコンビニエンスストアに預かってもらうなど、すでに世界の様々な場所でテスト済みのソリューションがいくつかあります。また、顧客の許可が得られれば、屋内や車のトランクに置かせてもらう方法もあるでしょう。米国で実験したところ、トランクへの配送は高評価でした。大事なのは顧客が(配送方法を)選べるということです。

——Amazonがいま注力して取り組んでいるイノベーションについて教えてください。

 我々は米国で店舗を含めた食料品配達環境の構築を目指してきました。Whole Foods(ホールフーズ)の買収もその一環です。Amazonプライム会員はオンラインで食料品を注文し、自宅で受け取れます。日本では「Amazonフレッシュ」を提供していますが、小規模ながらも顧客の反応はよく、改善を重ねながら展開したいと考えています。

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 また、日本では犬種・猫種や誕生日など、入力したペットの情報をもとにコンテンツを紹介する「Amazonプライムペット」なども提供しています。我々は常々、「顧客が欲しいものを何でも買える場所になりたい」と標榜してきましたが、最近は「顧客に販売しない製品をリスト化する方が簡単かもしれない」と冗談を言うようになりました(笑)。

 日本では未展開ですが、顧客にサービスを提供する方法を模索する一環として、(レジなしのキャッシュレス店舗である)「Amazon Go」のテストも米国で開始しています。顧客は私と同じくらいオンラインショッピングが大好きですが、我々はフォーマットに制限される企業ではありません。顧客を幸せにし、皆さんが望むサービスを提供することを考えていきます。

——日本での「Amazon Go」の展開の有無については答えられないかもしれませんが、日本人や日本の文化とAmazon Goの相性は良いと考えますか。

 私は日本人ではありませんが、日本人も(会計で)並ぶのは嫌でしょう?(笑)。世界中の顧客に共通する問題を解決していきたいですね。

——日本のAmazonでは最近、注文履歴の漏えいのほか、特に偽レビューなどが問題になっており、ユーザーの信頼感が低下しています。この状況をどう認識していますか。

 Amazonを利用する顧客や商品を出品する企業のためにレビュー機能を提供してきましたが、やはりAmazonのように大規模になると、ルール違反をする人々が現れます。我々の責務として、ルールが悪用されないような方法を考案し、対策を講じなければなりません。

 現在、世界中で何億ドルも投資し、偽レビューをストアから取り除くための方法に取り組んでいるチームを設けています。しかし、メールとスパムの関係に例えるなら、いくらスパムに対抗しても、さらなるスパムが新たに登場するのが現状です。我々はできる限り戦い続け、顧客とECサービスの維持を目指します。

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 このほか10月からは、(自動排除やツールによって)偽造品の撲滅を目指すプロジェクト「Project Zero」を日本でも開始しています。やはり大規模なビジネスになると偽造品も発生するようになります。Project Zeroはパートナー企業から商品やブランドの情報を得て、偽造品を撲滅・排除する取り組みですが、商品の生産プロセスをわずかに変更することで、その出品が本物であるかを把握できます(2019年の初めから展開している欧米では、6000ブランドを超える9000万点以上の疑いのある商品を、ユーザーが目にする前に排除した実績があるという)。

——少し話題が変わりますが、日本の社会課題や地方経済に対しては、どのような支援をしていますか。直近では大型の台風19号によって日本は大きな被害を受けました。

 日本で議論されている話題の1つは高齢化社会問題ですが、EC全般そしてAmazonはこの種の社会的課題に役立つと考えています。なぜなら、外出が難しい顧客に対して必要なものを迅速に届けられるからです。我々のサービスは高齢の顧客からも、「欲しいものが手に入った」「(スマートフォンのフォントサイズを大きくすることで)見やすくなった」と高い評価をいただきました。

 また、Amazonに関わる中堅・中小企業の支援もできると考えており、ひいては日本社会への貢献につながると思っています。現在は、グローバル企業であるAmazonを通じて、日本企業が国外の顧客にもリーチできるように支援しています。

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 (災害支援については)被害を受けた地方自治体に「ほしいものリスト」を作ってもらうことで、(需要と供給の)ミスマッチを起こすことなく被災地に災害救援ができる仕組みを用意してきました。

 Alexaも日本赤十字社へ寄付ができるよう対応しましたし、東日本大震災後には仙台の雇用復興支援のため、大規模なサービスセンターを構築しました。このような活動を通じて被災した地方自治体へ貢献できると思います。

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