エアロネクストが「空飛ぶゴンドラ」を発表--試作モデルを披露、2023年の実用化目指す

 次世代ドローン技術を開発するエアロネクストは10月15日、千葉・幕張で開催されているCEATEC 2019会場内において記者説明会を開催し、空を飛ぶクルマ「エアモビリティ」を実現するためのコンセプトとして「空飛ぶゴンドラ」を発表、あわせて試作モデルの「Next MOBILITY」を公開した。

Next MOBILITYの試作1号機とエアロネクスト
代表取締役CEOの田路圭輔氏
Next MOBILITYの試作1号機とエアロネクスト 代表取締役CEOの田路圭輔氏

 世界中でエアモビリティの開発競争が進む中、従来のドローンやエアカーとは一線を画したゴンドラ方式で安全性と快適性を実現するという新しいコンセプトを提示、開発パートナー企業を募って2023年の実用化を目指すとしている。

 同社はドローン機体のハードウェア技術を開発するスタートアップで、独自開発の重心制御技術である「4D GRAVITY」を軸にテクノロジーライセンスビジネスを展開する。2018年、同技術を搭載した360°VR撮影用ドローン「Next VR」がCEATEC AWARD 2018 経済産業大臣賞を受賞して注目を集めた。

 今回発表したNext MOBILITYは、その4D GRAVITY技術と、新たに開発した垂直離着陸機(VTOL)の重心制御技術である「ティルトボディ」を搭載することで、ゴンドラのような飛行体験を実現するエアモビリティとなる。

空飛ぶゴンドラのコンセプト
空飛ぶゴンドラのコンセプト

 Next MOBILITYではこれらの技術を使い、人が乗っているキャビンと、ボディへの推進力を与えるローター(プロペラ)部分を分離させた構造にすることで、垂直離陸時、離陸から水平飛行への移行時、飛行中、垂直着陸時のすべてにスムーズな移動を可能とし、搭乗中乗客は、地上を移動するように座った状態で地面と水平で安定した姿勢を保てる。

 その際に、前後左右がガラス張りの構造であるため、乗客は空から景色を楽しむことができる。試作機は1人乗りだが、複数人が搭乗可能なモデルも想定しており、観覧車のように同乗者とコミュニケーションを取りながら空を移動することができるという。

1号機は1人乗りの機体で実際の3分の1サイズのモデルとなる
1号機は1人乗りの機体で実際の3分の1サイズのモデルとなる
前に倒しても座席が地面に対して水平に保てるので快適な乗り心地を実現する
前に倒しても座席が地面に対して水平に保てるので快適な乗り心地を実現する

第3世代ドローン実現への道筋

 エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏は、エアモビリティは第3世代のドローンであると表現する。

 「現在普及している空撮用のドローンが第1世代だが、これは『フライングカメラ』にすぎない。自律的にロボットを空に飛ばし、自由に仕事をさせるのがドローンの本質で、それが第2世代の『フライングロボット』。我々は4D GRAVITY技術によってそれを実現し、宅配ドローンや橋梁点検などの産業用ドローンを開発しているが、その先に第3世代の『フライングカー』がある」(田路氏)。

ドローンの世代とエアロネクストが提供するドローン製品群
ドローンの世代とエアロネクストが提供するドローン製品群

 第3世代でまだこれからの技術ではあるが、そもそものドローンの普及をはじめとしてエアモビリティの実現に向けたハードルは高い。安全技術を筆頭に、バッテリー、航空法、規制といった問題に加え、「一般人が車が空を飛ぶという概念を受け入れることができるか」(田路氏)という多くの解決すべき課題がある。さらに、世界各国でエアモビリティの試作機が発表される中、日本はこの領域で後れを取っている。

 そのような状況の中でエアロネクストは、「日本政府が閣議決定したエアモビリティを社会実装する年度である2023年の実用化を目指す」(田路氏)としているが、空飛ぶゴンドラという同社のアプローチは政府の掲げるシナリオとは若干異なる。

 「エアモビリティ実現の目標として、日本政府、全世界的に都市の交通渋滞の緩和や空港から大都市圏への移送といった大きなビジョンが語られているが、2023年段階ではエンターテインメントや観光の領域で実現するのが現実解ではないか。遊園地の観覧車のように、エアモビリティに人を乗せて一定空間の中で飛行体験させる。そういった未来体験がまずあって、多くの人が空を飛ぶ体験を果たすことでエアモビリティによる移動革命が実現する。利便とか産業課題からマーケットができるのではない」(田路氏)。

 また田路氏によると、今回発表したNext MOBILITYのほかにも、新しいエアモビリティ開発の構想があるという。同社のビジネスモデルは、ドローンマニュファクチャーにIPをライセンスするモデルであることから複数の企業から声がかかっていて、Next MOBILITYの開発を進めつつ、最終的にはエアロネクストのテクノロジーを採用したエアモビリティが複数誕生する可能性があるとしている。

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