経営者と併走する“外部CFO”に--マネーフォワードの新会社はスタートアップを救うか

 マネーフォワードは9月19日、中小企業やスタートアップ向けにフィナンシャル・アドバイザリー事業や経営支援事業を手がける新会社「マネーフォワードシンカ」を設立したと発表した。代表取締役には、マネーフォワードでCFOを務めた金坂直哉氏が就任する。

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マネーフォワードシンカ代表取締役の金坂直哉氏

 新会社では、フィナンシャル・アドバイザリーサービスと、成長企業経営支援サービスの2つを手がける。前者は、企業価値の最⼤化を実現するため、資⾦調達、M&Aをはじめ、戦略策定からプロジェクト推進までをサポート。マネーフォワードグループが持つ⾦融機関、投資家、会計事務所とのネットワークと、経営や資本政策分野での知⾒を提供するという。後者は、スタートアップや中小など成⻑企業の経営陣が抱える課題に対し、相談できるパートナーとして寄り添い、経営・財務・バックオフィス領域のハンズオン⽀援およびアドバイスを実施。事業の成⻑に必要なネットワーキング⽀援や、CFO・CFO候補・バックオフィス⼈材の採⽤・オンボーディングも支援する。

 グループのシナジーを生かし、スタートアップが必要なソリューションやノウハウを提供。IPO準備企業に対しては、IPOに関する意思決定のアドバイスに加え、ナレッジラボ(マネーフォワードが2018年に買収)が提供するクラウド型経営管理システム「Manageboard」を活用。製品の導入だけでなく、きちんとクラウドを活用できるようコンサルティングも提供することで、クラウド化や経営管理構築をサポートする。なお、IPO向けソリューションとして同社では、「マネーフォワード クラウド会計 for IPO」を2020年2月にローンチ予定という。

 また、スタートアップの資金調達においても、マネーフォワード傘下のMF KESSAIが提供するファクタリングサービス「MF KESSAI アーリーペイメント」や、マネーフォワードファインのオンライン融資サービス「Money Forward BizAccel」など、資金調達ソリューションを企業に合わせて案内するという。金坂氏は、「日本には銀行やVCがたくさんあるが、われわれは隙間の部分を狙う。企業にとって、最適なソリューションがあれば組み合わせて提供するが、一番大事なのは、経営者にとって最適な資金調達戦略の立案・実行をサポートすること」と語る。

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マネーフォワードグループのソリューションを集結する

資金面で悩みを抱えるスタートアップ経営者は多い

 金坂氏は、もともとゴールドマン・サックスで、テクノロジー・金融業界を中心にクロスボーダーM&Aや、資金調達のアドバイザリー業務に従事していた経歴を持つ。「金融機関は収益を上げることが必要で、時価総額5000億円~1兆円クラスの大企業が基本的にはお客様」としており、収益性の観点から、スタートアップや中小企業向けのアドバイザリーサービスを扱う金融機関は皆無だったという。また、一般的にクライアント1社あたり5~10社の証券会社が携わるものの、選ばれるのは1社のみ。そのため、結局無駄になってしまった仕事も無数にあり、金坂氏は「すごい損失」と語る。

 こうした無駄になってしまう優秀なリソースをスタートアップや中小企業に呼び込み、金融の力をうまく活用することで企業の成長を加速させようとするのがマネーフォワードシンカが提供する、ファイナンシャル・アドバイザリーの狙いだ。金坂氏は、「マネーフォワードに入社したのも、ファイナンスをうまく活用することで、成長を加速させるため。資金調達や上場、積極的な銀行借り入れなど、調達力を活用しながら事業をグロースさせてきた」と、効果的なファイナンス施策がマネーフォワードの躍進をもたらしたとする。

 「周囲を見渡すと、スタートアップ経営者の多くは悩みや課題を抱えている」「実現したいミッションや事業を作りたい経営者は多いが、そのための資金がないとまったく作れない。どうやって事業で資金を作るか、どうやって調達するか、金融リテラシーが求められる」と語る。給与水準の高く安定している金融人材はスタートアップ業界に流れにくい傾向もあり、CFOが不足しがちな一因になっているという。

 金坂氏は、「幸い、金融サービスは外部からサポートすることが可能」とし、単発ではなく中長期的にスタートアップと併走することで、CEOへのファイナンシャルに関するアドバイスや、CFO人材の育成を図るという。アドバイザリー事業は、企業ごとにケースバイケースで対応。”外部CFO”として立ち振る舞うケースや、CFOがすでに在籍している企業はサポートに徹する。また、直接的なCFO人材の斡旋は行わないものの、採用に関するアドバイスに至るまで、経営課題の解決に務める。

 また、マネーフォワードシンカのような外部のファイナンシャル・アドバイザリー事業に特化した組織を立ち上げることで、スタートアップへの入社に不安を覚えたり、複数の業界にまたがって働きたいという金融人材でも、スタートアップと接点を持たせることができる。新会社では、証券会社、投資銀行、監査法人、銀行、CFO経験者などさまざまな人材を採用していくとしている。

 もちろん、ビジネスとして一定のコンサルティングフィーが発生するものの、企業に密着したアドバイスによりそれ以上の付加価値を提供したいという。金坂氏は、「サポートする企業とは成長するステージを一緒に走っていきたい。上場もそうだし、上場してからも一緒に走りたい」としており、すでにいくつかの企業と“併走”を始めている。抱えられるクライアント数には限りがあるものの、事業としてのポテンシャルや企業のニーズは高いのではないかと語った。

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